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乳腺外科医が乳がんの最新情報をブログで紹介しています
by aiharatomohiko
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タグ:遺伝子発現プロファイル ( 3 ) タグの人気記事

琉球乳腺倶楽部での遺伝子発現プロファイルの話 その2


もう一つの話題は、マンマプリントやオンコタイプDXに代表される

予後予測因子としての遺伝子発現プロファイルです。

これに関して私は当初懐疑的な見方をしていました。その理由の

一つは、検査の再現性に疑問があったからです。特にオンコタイプは

パラフィン切片からRT-PCRを行うので、基礎の先生の評判が悪いこと

もあって、この結果って大丈夫かいなという気持ちがぬぐい難かったの

です。しかしながら、いろいろと論文も出てきた中で、相当昔の症例

でもアッセイが高い確率で成功していることが報告されてきたので、

この考え方は改めました。

オンコタイプについていえば、開発の過程でHER2陽性の症例が含まれ

ているのがやや残念なところです。ER陽性HER2陰性だけを対象として

系を開発すれば、うまくいけばオンコタイプよりも正確に予後予測や

化学療法の予測ができるかもしれません。


さて講演では、病理学的因子により遺伝子発現プロファイルの有用性

が左右されること、すなわち、NG3では低リスクと判定されても

再発リスクは高い。むしろNG1・2の高リスクの拾い上げに有用

であること。

オンコタイプでも、核異型度や腫瘍径といった病理学的因子が異なると

リカレンス・スコアが同じでも再発率が異なることをお話してきました。


オンコタイプなどでは細胞増殖因子関連遺伝子の発現が重要ではないか

と考えられていますが、Ki67との比較はどうでしょうか。

2010年のサンアントニオでは、Ki67が低い症例でオンコタイプが

高リスクになるケースはほとんどありませんでしたが、Ki67が高い症例

の約40%がオンコタイプで低リスクになることが発表されていました。

すなわち、Ki67だけではリスクを高く見積もる事になりそうです。

その理由は、Ki67はG1-M期で広く発現を認めるが、細胞周期に入った

細胞全てが分裂するわけではないからなのでしょう。

繰り返しになりますが、Ki67が低い症例はオンコタイプでは約6割が

低リスク、約4割が中リスクになることは、化学療法の適応を考える

上で有用な情報ではないかと思います。


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by aiharatomohiko | 2011-11-24 23:02 | 日常

琉球乳腺倶楽部での遺伝子発現プロファイルの話

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第41回琉球乳腺倶楽部で遺伝子発現プロファイルによるサブタイプ分類と

予後予測について話をしてきました。


概要を紹介します。

サブタイプ分類に用いることのできる遺伝子発現プロファイルは複数

あります。以前ブログに書いたようにある特定の個人が分類される

サブタイプは用いる方法によってかなり異なる(ある方法では

ルミナルAに分類される人が別の方法ではルミナルBやHER2などに

分類される)こと、そしてこれは近々ブログにアップしますが、

特定の方法を用いたとしても検査を行う人によってある特定の個人が

ルミナルAに分類されたりルミナルBやHER2タイプに分類されたり

するということが頻繁に起こります。一番の関心事である、ある特定

の個人をルミナルAかBかにきちんと分類することは、残念ながら

出来ません。


もしサブタイプ分類が”intrinsic”(本来備わっている,固有の,

本質的な,本源的な )なら、複数あるどの遺伝子発現プロファイル

を使っても、ある特定個人のサブタイプは一致するはずですが、実際

はそうではありません。つまり、遺伝子発現プロファイルによるサブ

タイプ分類は主観的な方法であるため、分類されたサブタイプはとても

intrinsicとはいえないのです。



乳がんをサブタイプに分類するのであれば、遺伝子発現プロファイルを

使った分類よりも、現状ならばERやHER2といった治療標的を免疫染色

することによる分類の方が実用的ではないでしょうか。

ただ免疫染色による分類でも、いわゆるルミナルAとBをきれいに分ける

ことは困難です。なぜならば、例えばKi67をマーカーとしてカットオフ値

を設けることにより分類するとしても、そもそも連続したものを恣意的に

分けることになるため、検査方法が標準化すらされていない現状で誰もが

納得するカットオフポイントを設けることはできません。

ルミナルAとBで治療方針を変えるという考えは、概念的には理解できても

個別化医療に応用することは出来なさそうです。

“この患者はルミナルBっぽいですね”というような内容のうすい議論が

これからも続くことになるのはいかがなものでしょうか。

建設的に考えるのであれば、Ki67が相当程度に低い症例と高い症例に

絞って予後や抗がん剤の感受性などを検討することは有用なのかもしれ

ませんが。
by aiharatomohiko | 2011-11-19 22:00 | 日常

サンアントニオ09 遺伝子発現プロファイル


遺伝子発現プロファイル(GEP)が予後因子として有用であるデータが次々と

出てきています。また、乳癌の予後と相関する遺伝子発現プロファイルは

いくつもあるので、どのGEPが優れているのか、どの遺伝子を使うのがいい

のか、誰にでも有用なのか、という様な疑問がわいてきます。


“どの遺伝子を使うのがいいのか”という問いには、前回のエントリーを参照

頂いて分かるように、“使っている遺伝子自体にあまり意味はない”ということ

がわかりました。


“どのGEPが優れているのか”という問いの答えは、かなり昔に出ています

(N Engl J Med 355:560-9; 2006)。これは、OncotypeDx、マンマプリント、

Wound Response signatureを比較したもので、どれも予後予測力に

大差ないことが分かります。

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今回のサンアントニオでは、“誰にでも有用なのか”という問いに関する答えが

発表されていました。これが今回の私の一押しの発表です。


#103 の“Limited clinical utility of prognostic gene expression profiles

in Grade 3 node negative early stage breast cancer”という演題で、

ポスターは学会のHPで全部見ることが出来ます。

これは、5種類の遺伝子発現プロファイルの予後予測力を、ROC曲線により

組織グレード別に検討した研究です。

対象は、n0で薬物療法を行っていない症例です。

検討した遺伝子発現プロファイルは、GGI ・GENE70(マンマプリント)・

GENE76 ・ONCOTYPE Dx ・Wound Responseの五つです。


その結果、すべての遺伝子発現プロファイルにおいて、予後予測力はNG1で

極めてよく、NG2では落ちるものの有用といえるが、NG3では予後予測力が

低く使い物にならないことがわかります。


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カプランマイヤー曲線で見ると、以下のようになりますが、こちらの方が

パッと見は分かりやすいでしょうか。

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現在、遺伝子発現プロファイルは化学療法を回避するための予後予測

目的に期待されています。

しかしながら、この発表によると、NG3では予後予測力が落ちるため、

低リスクに分類されても化学療法は回避すべきではないことがわかります。

むしろ、より予後の良いNG1・2の中の予後不良症例、すなわち化学療法

適応症例の拾い上げを行うことに利用するのが妥当である事がわかります。
by aiharatomohiko | 2010-02-09 23:24 | 学会