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乳腺外科医が乳がんの最新情報をブログで紹介しています
by aiharatomohiko
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ザンクトガレン2011

長らくご無沙汰してしまいましたが、先日論文化されたSt Gallenの会議に

参加してきました。会の構成は例年と同じで、三日間今まで得られた知見が

発表された後にコンセンサス会議が行われるというもの。


一日目は、既に発表された臨床試験結果の紹介のオンパレードで、目新しい

ものは特にありませんでした。MA27のデータはサンアントニオと全く同じ

でした。会の趣旨上は仕方ないのでしょうが、やや食い足りない感じです。


二日目は、午前中に疫学的な発表がありました。糖尿病でメトフォルミンを

服用している人ががんにかかりにくいというデータから、メトフォルミン

850mgx5yを服用することで再発が抑制されるかという試験が検討されている

ようです。

しかしながら、糖尿病にかかるとがんになるリスクが高くなるというデータ

があるので、糖尿病治療により元に戻るだけではないのでしょうか。

また、850mgというと実際の治療で使うくらいの結構な量ですが、

健常人に使用して低血糖などの問題はでないのでしょうか。

その後は、ついていくのが困難な突っ込み過ぎ気味な基礎データの発表が

続きました。中では、腫瘍に浸潤している制御性T細胞がRANKLを放出し、

パラクライン的に乳がん細胞に作用して転移を引き起こす(特に肺)という

話題は興味深かったので、論文を読んでみることにします。

デノスマブで肺転移が減るといいのですが。

当日最後のDr Paikの発表はさすがでした。遺伝子発現プロファイルを

用いてER陽性の再発低リスク群を見分ける場合に増殖に関わる遺伝子群が

重みを持っていること、臨床病理学的因子やKi67に比べると低リスク群

つまり化学療法を省略できる人に分類できる人の割合が高いこと

(ただしKi67の低い人でRSが高い人はほとんどいない)、

そして検査として再現性が高いことが説明されていました。


三日目は、手術・RT・薬物療法の話題が盛りだくさんで、これは結構興味

深く聞けました。



最終日のパネルコンセンサスは、議論が停滞する場面はありましたが、

以前のようにグダグダになることもなく、今回は意外にすんなりとまとまり

ました。特に目新しい内容はありませんでしたが、サブタイプ別に治療方針

を立てていくという方向性がよりはっきりしたのではないかと感じました。


ところで、今回は参加予定者が前回の4800人から4200人程度に減少して

いるというアナウンスがありました。スイスフランが高いからじゃないか

とかいう話もありましたが、本会では臨床的には目新しいデータがプレゼン

されるわけではない一方で唐突な基礎研究発表風のプレゼンがされたり、

最後のコンセンサス会議がまとまらない(今回はまとまったけど)しかつ

論文の内容と必ずしも一致しないという様な点が、参加者の期待するところと

ずれてきているからではないかと思います。

というか個人的にはズレを感じた今回のザンクトガレンでした。
by aiharatomohiko | 2011-07-03 23:38 | 学会

ザンクトガレン・コンセンサス会議2007総括


細かい記事を書こうと思っているうちに時間が経ってしまったので、

自分なりに総括しました。

・リスクカテゴリーは不変

今回リスクカテゴリーは変わりそうにありません。

Gene signatureによるluminal A(HR+ HER2-)、 luminal B(HR+ HER2-)、

HER2+ER-、 Basal type(ER- PR- HER2-)といった分類やOncotypeDxが

いくつかのセッションで取り上げられはしましたが、採用されるには至らず。

臨床試験のデータが出るまでは、お預けになる模様です。

・ホルモン療法

閉経後にはアロマターゼ阻害薬が中心となるも、再発リスクや併存疾患に

よっては、タモキシフェン単剤もオプションとして完全に残りました。

実際に、タモキシフェンから使用すると答えたパネルが多数を占めました。

TAM is still aliveですね。

・化学療法
 
タキサンのポジショニングが難しい結果となりました。サンアントニオで

Canadian CEF>AC-PTXの結果発表があったことが影響しているようです。

どのレジメをどういったセッティングで使用するかについては、

まとまった意見がありませんでした。CMFについてもセッティングによっては

30%が使用するという意見あり。ヨーロッパではCMF強しといった

印象でした。

◎ハーセプチンについては、前述の通りです。

・術前化学療法

術前化学療法のメリットは温存率が増えることだけであるという

冷静な意見が目立ちました。予後因子としてpCRが得られるかどうかを調べる

ことを目的とした術前化学療法には否定的でした。

化学療法だけでなく、場合によってはホルモン治療も選択肢の一つに

挙げられていました。

・放射線治療

温存術後のPartial breast irradiationは、未だ臨床試験の対象。

乳房切除後のPMRTは、n>=4以上の症例には当然と言った印象。

n<=3の場合は、臨床試験を進めましょうということでしょうか。

乳房切除後にRTを行うと、再建手術がしにくくなるのが、困りものです。

ザンクトガレン・コンセンサス会議2007総括_f0123083_2385989.jpg

コンセンサス会議の時の写真を九州大学の久保先生に頂きました
ので掲載します。有難うございました。
by aiharatomohiko | 2007-04-08 23:44 | 医療

ザンクトガレン・コンセンサス会議:ハーセプチンの術後療法


日本では進行・再発にしか使用できないハーセプチンですが、

今日欧米では当たり前のように術後再発抑制に使用しています。

コンセンサス会議では、腫瘍径1cm以下、ホルモン陽性、

リンパ節転移陰性といった場合によってはホルモン療法さえ行わない

ような場合にも、ハーセプチンを使用するという意見が3割もあり、

少々というか、かなり驚きました。

これはやりすぎでしょうという印象をもったDRも多かったようです。

化学療法との併用については、同時併用・逐次併用があります。

術後化学療法と併用した方が、再発抑制効果が少し高いような

データがありますが、確定的ではありません。

心毒性から考えると、化学療法後にハーセプチンを開始した方が

良いのですが、悩ましいところです。

気になる日本の状況ですが、中外製薬からのインフォメーションによると、

昨年11月に厚労省に申請済み。迅速審査の対象になっているため、

遅くとも本年11月には認可される見込みとの事でした。

詳細は未確定ですが、認可はHERAタイプで、化学療法後に

3週ごとの使用となる見込みらしいです。
by aiharatomohiko | 2007-04-01 12:08 | 医療

ザンクトガレン・コンセンサス会議:卵巣機能抑制療法


Scientific programのなかで、印象に残るプレゼンテーションを紹介します。

まずは、Johns HopkinsのDr. Davidsonが行った発表のうち、

卵巣機能抑制療法についてのアップデートを挙げます。

中でも、化学療法を行った後に卵巣機能抑制療法を追加することの

意義について論じた部分は、非常に興味深いものでした。

いままでは、化学療法の後に閉経になった人は、ならなかった人よりも

予後がいいというような断片的なデータがありました。

そして、化学療法後に卵巣機能抑制療法を追加することの意義を検討した

複数の臨床試験が行われています。

しかしながら、単一の試験ではその有効性を示せたものはなく、複数の

臨床試験を統合したメタ解析でも同様でした。

閉経前乳癌12,000例を対象としてEBCTCGにより2006年に行われた

メタ解析では、卵巣機能抑制療法により、20年で4.2%の絶対値での

無再発生存率の改善が報告されましたが、化学療法を併用した場合には

無再発生存率の改善が見られませんでした。

このメタ解析の大きな欠点は、今日ではホルモン治療の対象とされない

ホルモン受容体陰性症例が相当の割合で含まれることです。

2006年のSan Antonio Breast Cancer Symposiumで

Dr.Cuzickが発表した、ER陽性症例に限ったLH-RHアゴニストの

メタ解析のデータ(n=9,000)には、この欠点はありません。

この報告では、無再発生存率が化学療法併用時にハザード比が0.88と

統計学的に有意に改善されていたことが特筆されます。

EBCTCGのメタ解析で証明されなかった、化学療法の後に

卵巣機能抑制を追加することの意義が証明されたわけです。

いままでは、単一試験ではその有効性が証明されなかったものの、

40才未満のサブグループ解析では、どの試験も同様に

卵巣機能抑制を追加することの有用性が示唆されていました。

サブグループ解析の限界はよく言われることですが、複数の試験で同じ

結果が報告されているときには、裏に何かが隠れていることが期待されます。

そのような理解の下で、ヨーロッパ中心に化学療法後の卵巣機能抑制

療法の有用性を検討する臨床試験が組まれています。

しかし、その結果を待たなくても、化学療法後に卵巣機能抑制を

行う根拠になるような発表でした。

個人的には、40歳未満の人には勧めたいように思います。

40代後半の人には、おそらくお勧めはしないでしょう。

40代前半の人は、悩ましいところ。月経の戻りをみて、ご本人と

相談することになるでしょう。

論文発表の時には、このあたりが少しでもわかるデータが含まれていれば

良いのですが。

それにしても、サンアントニオに出席してこの発表を聞いていたにも

かかわらず、四国がんのO先生に教えられるまでその重要性を認識できて

いなかったことは、とても大きな反省点です。
by aiharatomohiko | 2007-03-27 00:30 | 論文