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乳腺外科医が乳がんの最新情報をブログで紹介しています
by aiharatomohiko
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”標準治療”について-毎日新聞「ご近所のお医者さん」から-

8/2付けの毎日新聞の「ご近所のお医者さん」というコーナーに”標準治療”

について書いた文章が掲載されたので、最近の記事とかぶりますが、

ブログに転載します。


皆さんは「標準治療」という言葉をご存知でしょうか。まだ、あまり耳慣れ

ない言葉かもしれません。私は乳腺専門医として、専門看護師や薬剤師

とともに、乳がん検診から手術、抗がん剤治療、内分泌治療、緩和医療

まで幅広く乳がん診療に携わっています。

今回は、最善の乳がん治療を選択する際に重要な、「標準治療」について

お伝えしたいと思います。


「標準」治療というと「並」な治療法であり、どこか特別な病院に行くと「上」

の治療法が出てくるのではないか、と考えられがちなのではないでしょうか。

しかしながら、現実は違います。過去にあまたある治療法と戦って勝ち抜い

てきた、いわゆる現役のチャンピオンとして君臨している治療法、それが

「標準治療」なのです。つまり、「標準治療」よりも上はありません。


最近、「先端医療」という耳当たりの良い言葉が取り上げられることが多く、

何か画期的な治療法が出てきたのかと惑わされる方が多いのではないか

と危惧します。

実際には「先端医療」といわれるものの中には、「実験的な医療」と大差

ないものも多いのです。「ひよっこ」段階の治療法と言い換えても良い

でしょう。タイトルマッチを挑んだ結果、「標準治療」に敗れ去り消えていく

ものもありますので、あまり大きな期待をかけすぎるのは考え物です。


また、どこかに誰も知らないようないいお薬がないかと考えてインターネット

をさ迷い歩いた揚句に、効果がない高価な「不」健康食品に引っかかる

ことがあってはいけません。

もし、そんないいお薬があるのならば、製薬会社が厚生労働省の認可

をとった後に販売すれば、全世界で何千億円という売り上げになるでしょう。

それをしないでチマチマ売っているような物は、効果が期待できないと

考えるのが理性的です。


「標準治療」こそが王道であり、信頼のおける担当医と相談しながら治療法

を選択していく事が最善の医療につながるということを、是非知っておいて下さい。
# by aiharatomohiko | 2011-08-06 22:15 | 日常

免疫療法は効果がありますか?


免疫療法についても、健康食品と同じようなことがいえます。

それは、患者さんを免疫療法をした人たちとしていない人たちとに

ランダムに分けて、免疫療法をした人たちの再発が少なかったり

死亡がすくなかったりした、というデータが有ればその免疫療法は

有効でしょうし、データが無ければ有効だと言う根拠が無いと言う

ことです。

効いた効いたという宣伝は多いですが、そもそも効いたというのは

どういうことかと考えなければなりません。

副作用が少ないとか、体に優しいとかの訳のわからない宣伝文句に

引っかからないようにしましょう。
# by aiharatomohiko | 2011-07-30 13:20 | 日常

健康食品は摂っても良いですか?


乳がん患者さんは、健康食品を周りの人から勧められることが多いようです。

健康食品を勧める人は大きく分けて次の二通りです。患者さん本人のことを

気にかけて勧める人と商売をしようと思って勧める人です。

どちらなのかを患者さんが見分けることは難しいようです。

また、健康食品を使用したくない患者さんにとっては、どちらも迷惑

なことに変わりはないようです。


健康食品を、私はお勧めはしません。なぜならば、健康食品の中でもキノコ

の一種には劇症肝炎を起こして死亡した例が報告されているからです。

もう一つの理由として、乳がんの再発抑制や生存期間延長に効果が証明

された健康食品はないという事実もあります。

この場合の証明というのは、患者さんを二群に分けて、片方には健康食品を

使用してもらい、もう片方には健康食品を使用しないでもらう。そうした上

で健康食品を使用した方で再発が少なかったり生存期間が延長したりという

データがあるという事を指します。

そういえば、サメ軟骨や別の健康食品でデータが捏造されていたり、

事例をでっち上げて本にしていたこともありました。

もしある健康食品にがんを治す効果があるのならば、製薬会社が売り出

せば全世界で何千億円の売り上げが上がるのに、なぜそうなっていない

のでしょうか。

なぜちまちまと厚生労働省の認可をとらずに販売しているのでしょうか。


さらには、抗がん剤治療や内分泌治療をしている時に健康食品を摂った

場合、健康食品が原因で例えば肝障害を来たしても、乳がんの治療薬が

原因なのか健康食品が原因なのかが判別できないので、どちらも止め

なければなりません。

効果があるかないかがわからない健康食品のために、治療薬までやめ

なければならないかの可能性も考える必要がありそうです。

そういった不利益がある可能性を考えて、それでもなお使いたいので

あれば無理に止めることは難しいとも思いますが。

どうしても断りにくい筋から勧められている場合には、医者から止められ

ている、と言われたらどうでしょうか、とお話しています。
# by aiharatomohiko | 2011-07-25 22:39 | 日常

これは標準治療でしょうか

標準治療という言葉、一般の方はあまりご存じないかもしれません。

確立された治療法で、現時点で最高の治療法のことです。

私が自分で乳腺科を始める時に、”きちんとした治療法を行います!”

と宣言するつもりで”「標準治療」をお約束します”とHPに書きました。

一般の方ならば、専門医であれば誰でも標準治療ができるんじゃないの?

と考えるかもしれません。

が、世の中本当にそうなっているのでしょうか?

きちんとした教育が出来ない教師がいたり、まともな政治ができない

政治家がいるような状況を考えると、専門医でも標準治療が出来ない人

がいるんじゃないの?と考える方が健全なような気がします。

まあ、そういった医師と違いますよ、という意味で”「標準治療」

をお約束します”と書いた訳ですが、たまたまあるクリニックのHPを

みて愕然としました。そこは手術件数は多いものの標準とはかけ離れた

治療をするのではないかと目されている所でしたが、

”ガイドラインに則った治療をしています”と明記してあったのです。

言ったもん勝ちかいな。。。

これにめげずに頑張ります。


さて、ここから本題。以下は標準治療でしょうか。

①手術待ちが長く、その間何もしないのは気兼ねするので、とりあえず

タモキシフェンなどを処方する

②副作用が出ると気の毒なので、抗がん剤は少量(微量)使う

③手術が終わって退院までに時間があるので、抗がん剤を少量点滴して

から帰ってもらう

④腫瘍径1cm少しの患者さんに、命が危ないから術前化学療法をしないと

大変な事になると恫喝する


恫喝は治療じゃないですね。また、珍しい治療を目にしたら、アップするかも

しれません。
# by aiharatomohiko | 2011-07-15 23:04 | 日常

エキセメスタンの乳がん予防効果


ゲイルモデルにより五年間の乳癌発症リスクが1.66%以上の女性4560名

を対象として、エキセメスタン5年内服の乳癌発症予防効果をプラセボと

比較したランダム化比較試験の結果が発表されました。

結果は、エキセメスタンの5年内服はプラセボと比較して、浸潤がんを

65%減少させるという、一見SERMよりもよさそうなデータで、ASCO

での発表と同時にNEJMに掲載されました。


しかしながら、その研究の内容はいまひとつ感心できないものでした。

イベント数が少ないために95%信頼区間が広いこと、SERMとの直接

比較ではないために、効果・副作用ともに優劣がわからないことが

その理由です。

具体的には、追跡期間が35ヶ月と短いこともあり、イベント数がエキ

セメスタンとプラセボ群あわせてわずか43、エキセメスタンの浸潤がんの

ハザード比が0.35といっても、95%信頼区間は 0.18 - 0.70とかなり

広くなっています。

浸潤がんと非浸潤がんをあわせたハザード比は 0.47、95%信頼区間は

0.27 - 0.79とこちらも広いものでした。


これらのデータをNSABPのP1試験と比べてみましょう。

P1試験では、13000名以上の被験者を登録。浸潤がんのイベント数が

両群合わせて264で、タモキシフェンのプラセボとのハザード比が

0.51(95%信頼区間が 0.39-0.66)。非浸潤がんもハザード比が0.5

ですから、浸潤がんと非浸潤がんをあわせたハザード比はエキセメスタン

と変わらなくなります。


次に行われたSTAR試験では19000名以上の被験者を登録。浸潤がんの

イベント数がタモキシフェンとラロキシフェン両群合わせて330と、

十分なパワーを持っているといえるでしょう。


本試験は通常であればラロキシフェンとの比較試験となるべきだと考えます。

優越性を検証するとなると膨大な症例数が必要だとか、SERMの試験結果

から少ない症例数でプラセボに勝ちそうというのは研究者側や製薬会社の

論理で、現状これで良いとは個人的には思えません。


デザインもいま一つだし、パワーも十分といえないような研究結果が

NEJMに載るというのは、某先生の意見では製薬企業の力ではないかと

いうことですが、私には筆頭著者がハーバードの教授だからだとしか

思えませんでした。なんだかね。
# by aiharatomohiko | 2011-07-11 00:39 | 論文

ザンクトガレン2011

長らくご無沙汰してしまいましたが、先日論文化されたSt Gallenの会議に

参加してきました。会の構成は例年と同じで、三日間今まで得られた知見が

発表された後にコンセンサス会議が行われるというもの。


一日目は、既に発表された臨床試験結果の紹介のオンパレードで、目新しい

ものは特にありませんでした。MA27のデータはサンアントニオと全く同じ

でした。会の趣旨上は仕方ないのでしょうが、やや食い足りない感じです。


二日目は、午前中に疫学的な発表がありました。糖尿病でメトフォルミンを

服用している人ががんにかかりにくいというデータから、メトフォルミン

850mgx5yを服用することで再発が抑制されるかという試験が検討されている

ようです。

しかしながら、糖尿病にかかるとがんになるリスクが高くなるというデータ

があるので、糖尿病治療により元に戻るだけではないのでしょうか。

また、850mgというと実際の治療で使うくらいの結構な量ですが、

健常人に使用して低血糖などの問題はでないのでしょうか。

その後は、ついていくのが困難な突っ込み過ぎ気味な基礎データの発表が

続きました。中では、腫瘍に浸潤している制御性T細胞がRANKLを放出し、

パラクライン的に乳がん細胞に作用して転移を引き起こす(特に肺)という

話題は興味深かったので、論文を読んでみることにします。

デノスマブで肺転移が減るといいのですが。

当日最後のDr Paikの発表はさすがでした。遺伝子発現プロファイルを

用いてER陽性の再発低リスク群を見分ける場合に増殖に関わる遺伝子群が

重みを持っていること、臨床病理学的因子やKi67に比べると低リスク群

つまり化学療法を省略できる人に分類できる人の割合が高いこと

(ただしKi67の低い人でRSが高い人はほとんどいない)、

そして検査として再現性が高いことが説明されていました。


三日目は、手術・RT・薬物療法の話題が盛りだくさんで、これは結構興味

深く聞けました。



最終日のパネルコンセンサスは、議論が停滞する場面はありましたが、

以前のようにグダグダになることもなく、今回は意外にすんなりとまとまり

ました。特に目新しい内容はありませんでしたが、サブタイプ別に治療方針

を立てていくという方向性がよりはっきりしたのではないかと感じました。


ところで、今回は参加予定者が前回の4800人から4200人程度に減少して

いるというアナウンスがありました。スイスフランが高いからじゃないか

とかいう話もありましたが、本会では臨床的には目新しいデータがプレゼン

されるわけではない一方で唐突な基礎研究発表風のプレゼンがされたり、

最後のコンセンサス会議がまとまらない(今回はまとまったけど)しかつ

論文の内容と必ずしも一致しないという様な点が、参加者の期待するところと

ずれてきているからではないかと思います。

というか個人的にはズレを感じた今回のザンクトガレンでした。
# by aiharatomohiko | 2011-07-03 23:38 | 学会

SABCS2010 ゾレドロン酸の再発抑制効果 その2


AZURE試験ですが、3,360例のstage II/IIIの乳がん患者さんが登録

された試験で、標準薬物療法±ゾレドロン酸(5年)の比較になって

います。

この試験では、ゾレドロン酸が6 doses (q 3-4 wk)、8 doses (q 3 mo)、

5 doses (q 6 mo)とかなりインテンシブになっていることが特徴です。

主要評価項目はDFSです。


患者背景は、98%が腋窩リンパ節転移陽性で、95%に化学療法が行われ

ており、98%にアンスラサイクリンが、24%にタキサンが使用されて

いました。ER陽性が78%、閉経前が45%でした。観察期間の中央値が

5年でのデータが今回発表されました。


DFSは752イベントと解析には十分なパワーを持っています。

結果はHR = 0.98(95% CI [0.85-1.13])とほぼ同等という結果で、

カプランマイヤーもほぼ重なっていました。今までの二つの試験の結果

と異なり、この試験ではゾレドロン酸を追加することによるDFSの改善

が見られないという、かなり予想外の結果に終わってしまいました。

2008年に演題取り下げがあったときには治療効果が他の試験と比べて

低いのではないかと懸念していましたが、まさかここまでとは思って

いませんでした。なお、この傾向は今後イベント数が増えても変わること

は考えにくいとのコメントがありました。まあ、それはそうでしょう。。。


主要評価項目がネガティブな場合には、もれなく面妖なサブセット解析

の結果が出てくることになります。この試験の場合でも出てきました。

閉経前と閉経後 < 5 年および 閉経状況が不明な <60才をまとめた群

ではむしろゾレドロン酸群で予後が悪く、閉経後5年経過および60才

以上の群ではゾレドロン酸群で予後が良くなっており、治療効果に

heterogeneityがあると言う解析がそれです。

閉経状況によりE2レベルなどが変わることが、骨芽細胞や破骨細胞の

機能に影響するというデータがあり、これが閉経状況によってゾレドロン

酸の効果が違うという結果をサポートするというのですが、

ホントでしょうか。

そもそも95%の患者さんに化学療法が行われているので、例え閉経前

でもこれにより閉経する人が相当の割合で出てくるはずです。

それなのにこんなに差が出るのはおかしいと思いますね。

偶然の偏りだと考えますが、大胆すぎるでしょうか。

発表では化学閉経に関しては触れられていないようでしたが、一流の

ジャーナルに投稿することになるとかならず突っ込まれることでしょう

から、その時にはもう少し詳しいことがわかるかもしれません。


一方注目したいデータとして、OSがあります。イベント数が519あり、

ハザード比が0.85(95% CI [0.72-1.01])とゾレドロン酸による

改善傾向が見られています。再発が改善しないのに、OSが伸びると

いうのは、乳がんに関係ないゾレドロン酸の効果?なんて、

よくわからないですね。閉経状況との関係はOSもDFSと似た傾向でした。


副作用に関しては、ONJの疑いも含めてゾレドロン酸群で1.5%

(コントロール群 0%)と、ゾレドロン酸に不利な状況です。

ONJはQOLを著しく下げる合併症である事を考えると、結構厳しい

データです。


今後に結果が出ると思われるゾレドロン酸の追加効果が検討されている

試験は、654例のNa Tan試験だけのようです。症例数から考えると、

この試験の結果で決着がつくようには思えません。

SUCCESS試験はゾレドロン酸3年と5年の比較。

NSABP B-34はクロドロン酸ありなしの比較。


ゾレドロン酸が再発を抑制するという期待は、このままでは残念ながら

つぼみのまま開花することはなさそうな状況になってしまいました。
# by aiharatomohiko | 2011-03-09 22:34 | 学会

SABCS2010 ゾレドロン酸の再発抑制効果 その1



乳がんは骨への転移がしばしばみられるため、ビスフォスフォネートが

再発を予防するのではないかという観点で研究が行われています。


経口のビスフォスフォネートの第III相試験では、再発を減らすという

結果と、反対に再発を増やすという結果が報告されています。

ゾレドロン酸では、再発を減らすという結果と再発を減らすことを示唆

する結果があります。( “ゾレドロン酸(ゾメタ)は再発を予防する”

“サンアントニオ2008 ZO-FAST”参照して下さい。)

今回のサンアントニオでは、ABCSG12試験とZO-FAST試験のアップデート、

さらには2008年で出る出るといっていたのに、演題取り下げですっぽん

かまされたAZURE試験の結果が発表されました。


ABCSG12は閉経前ホルモン感受性乳がんを対象とした1800例規模の試験

です。Z+TAM vs Z+ANAとゾレドロン酸(6ヵ月毎3年)ありなしの

2x2デザインで、NEJMに48ヶ月フォローの結果が発表され、今回は

62ヶ月フォローの結果が発表されました。

ゾレドロン酸ありなしについては、48ヶ月時点ではイベント数が137で

ハザード比が0.64(95%CI 0.46-0.91)が、62ヶ月時点ではイベント

数が186でハザード比が0.68(95%CI 0.51-0.91)とほぼ同様な傾向

が保たれていました。

OSでも同様な傾向がみられましたが、イベント数が少なく有意では

ありませんでした。


前回興味を引いたANA群で死亡が多かった件については、今回は

ゾレドロン酸ありなしがテーマの発表だったため検定はありませんでした

が、テーブルから数字をひいてみると、死亡数はTAM群 89/1800例、

ANA群97/1803例でした。ANA群で一割くらい多そうです。


ZO-FASTは閉経後ホルモン感受性乳がんを対象とした1000例規模の

試験です。レトロゾール開始時にゾレドロン酸(6ヵ月毎5年)を

開始する群と骨関連事象が発症してからゾレドロン酸を追加する群の、

12ケ月目の骨塩量を主要評価項目とした試験で、再発は二次評価

項目に入っています。


DFSは104イベントが発生した5年時点での解析で、当初からゾレドロン

酸を開始する群で再発のハザード比が0.66(95%CI 0.44-0.97)と、

ゾレドロン酸の再発抑制効果を示唆するものでした。
# by aiharatomohiko | 2011-03-07 22:13 | 学会

香川県乳腺研究会で気付いたこと


3/2に先週に続いて香川県乳腺研究会で講演をしてきました。

その会で症例検討がありました。脳転移のあった患者さんで

ラパチニブ+カペシタビンが奏効したが増悪し、RTを行ったが再び

増悪したため、ラパチニブ+ドセタキセルを投与したところ奏効した

というケースが報告されていました。

保険的には微妙なものの、こういった投与法で効果が得られる

場合があるのかと、とても勉強になりました。

その時にフロアから質問があったのですが、”血液脳関門(BBB)が

転移によって破綻しているのであれば、ハーセプチンも効くのでは

ないか”といったような質問があがりました。


ラパチニブは分子量が小さいため、BBBを通過するといわれる

ことがあります。でも、分子量がどれくらいか知らなかったため、

その時に気になって調べてみました。

その分子量は 943.48。

抗体(ハーセプチン)はこの100倍超になりますので、BBBが破綻

したとしても通過は少し難しいのかもしれません。


抗癌剤の分子量も気になったので調べてみると、ドセタキセルの

分子量は807.879。

パクリタキセルの分子量は853.92。

エピルビシン塩酸塩の分子量は、579.98。

ビノレルビンの分子量は778。

分子量だけが問題ならば、これらの抗がん剤も通過するはず。

つまり単剤でも効果を発揮しても良さそうなものです。

ただ、BBBの通過は分子量だけの問題でもないということですし、

転移によりBBBが破壊されるという考えもありますし。。。


不勉強なので良く知らなかったのですが、この問題について

勉強してみたいと思います。

良くご存知の方はsuggestion頂けると幸いです。


当日研究会の時に、色々な先生方とディスカッション出来て

大変勉強になりました。

また、そのあとでご縁のあった先生にお世話になりました。

とても楽しい時間を有難うございました。
# by aiharatomohiko | 2011-03-06 22:39 | お知らせ

三重乳がん治療学術講演会での講演

2/25に、三重乳がん治療学術講演会で、”乳がん薬物療法のUp to Date

~サンアントニオ2010の知見から~”という題で、講演をして来ました。

三重県には、三重大学の水野先生率いる腫瘍内科医が多数おられました。

大阪にも腫瘍内科医の先生、来て欲しいですね。

症例検討では興味深いケースの提示がされ、レベルが高い討議が活発に

なされていました。レベルが高くとても勉強になりました。

私の話の内容は、おいおいアップしていきます。

来週は香川乳腺で講演があり、その次はザンクトガレンに参加するので、

忙しい月になっています。


ところで、小川先生の東京マラソンの結果はどうだったのでしょうか。

大阪マラソンも頑張って下さいね。


三重乳がん治療学術講演会での講演_f0123083_22352434.jpg

# by aiharatomohiko | 2011-02-28 22:37 | お知らせ

SABCS2010 CYP2D6の多型とタモキシフェン


タモキシフェンは、CYP2D6という酵素でエンドキシフェンに代謝されて、

効果を発揮するという考えがあります。考えといったのは、このことが明確に

証明されていないからです。


もし、この考えが正しいのであれば、CYP2D6の働きが弱い遺伝子多型を

もった人は、エンドキシフェンの血中濃度が低くなり、ひいては術後内分泌

療法としてタモキシフェンを使用した場合に、再発が多くなるはずです。

実際にそういった論文も発表されていますが、その一方で遺伝子多型と

再発は関係しないという論文も見られます。

また、タモキシフェンを服用している方が、CYP2D6を阻害する薬剤である

パロキセチン(SSRI)を服用すると再発が多くなるという論文がある一方、

パロキセチンの服用と予後は関係ないという論文も発表されています。


そういったわけで、この問題はまだ混沌としていますが、サンアントニオ

でATACとBIG1-98という二つのprospective studyにおいてCYP2D6の

多型とタモキシフェンの効果を検討した研究が発表され、どちらも関連無し

という結果だったので、インパクトは大きく感じました。

これらの発表を受けて、関連有り派のDr Goetzがdiscussionを行って

いました。その中のスライドを一枚挙げます。

SABCS2010 CYP2D6の多型とタモキシフェン_f0123083_22304323.jpg


Dr Goetzが行った二つの研究は関連有りという結果で、今回の結果は

関連無しだったので、心なしか顔色が悪いように見えましたが、

うがち過ぎでしょうね。


現在前向きの研究が行われていると紹介がありましたが、これは転移再発

のようです。術後内分泌療法での検討も必要になるでしょう。

とはいえ、関連性が明確になるまでは、タモキシフェンとパロキセチンの

同時服用は避けておいた方が無難とはいえます。
# by aiharatomohiko | 2011-02-26 22:31 | 学会

SABCS2010 (DD)6サイクルは4サイクルに劣る


Adjuvantケモの6サイクルvs4サイクルとACvsPTXを比較した

CALGB 40101試験から、6サイクルvs4サイクルの比較に関する

最初の解析が、発表されました。解析対象は3173例のn0-3症例です。

その結果は、再発も全生存も6サイクルの方が劣るという結果で、

イベント数が増えても4サイクルを上回ることは無い様です。この傾向はER

やHER2、AC かPTXかに関わらないとの事です。


イベント数は少ないものの、死亡が4サイクルで65例(乳がんによるもの

41例)、6サイクルで85例(乳がんによるもの50例)だったことからも、

6サイクルには期待が持てません。


とりわけ、AML/MDSが11-27ヶ月投与終了後の間6例に発症し、

内訳はAC x 6で5例、AC x 4 で1例だったという結果は、ACx6は

むしろ危険なレジメと考えても良いでしょう。6名のうち5名の方が

この副作用で亡くなっています。PTXではこの副作用は見られなかった

ようです。


この試験は、使用レジメが途中で変わっているために、解釈が難しい

です。多くはDose denseの症例ですので、我々が一般的に使用する

三週毎のレジメにこの結果を当てはめることが出来るのでしょうか。

2002-2003 n=570
AC q 3 wks x 4 or 6 cycles
T wkly for 12 or 18 wks

2003-2008 (DD)  n=2603
AC q 2 wks x 4 or 6 cycles
T q 2 wks x 4 or 6 cycles


結論が三週毎か二週毎かによって異なる可能性や、薬剤の用量で

変わる可能性もあり、一般化するのは難しいと感じます。

TACは6サイクルの方が良さそうですし。さらなるデータの成熟が

待たれますが、この時点でデータが公表されたのは、発表でそこまでは

コメントしていないものの、とにかくDD ACx6は使用すべきでないと

いうことを伝えるためのように感じました。
# by aiharatomohiko | 2011-02-19 22:18 | 学会

アバスチン:似たような結果と異なった解釈 余談


余談ですが、Referenceを見ていると、数あるアバスチンの試験のうちで、

たまたま良い結果が出た論文がNEJMに掲載され、真の値に近そうなものは

JCOかそれ以下という、何ともなえるような気持ちになる事柄にも気づきま

した。まあ、そんなものだよといわれれば、それまでの話ですが。


以下の論文はまだ読んでいないのですが、関連したものとしてお勧めでき

そうです。
When are "positive" clinical trials in oncology truly positive?
Ocana A, Tannock IF. J Natl Cancer Inst. 2011 Jan 5;103(1):16-20.

また、この著者らは、アロマターゼ阻害薬はタモキシフェンにOSで勝って

いない上に、QOLでも勝っていない。なおかつ副作用でも優れているとは

言えないので、標準治療薬とは言えない。というコメントも出しています。

ATACの論文などでアロマターゼ阻害薬の有用性を刷り込まれている

先生方が読むと、目からうろこが落ちるか、内容が理解できないかの

どちらかでしょう。

Up-front use of aromatase inhibitors as adjuvant therapy for breast
cancer: the emperor has no clothes. Seruga B, Tannock IF. 
J Clin Oncol. 2009 Feb 20;27(6):840-2. 

私はTannockの意見には相当程度同意できます。某先生から良く

“コンサバ“といわれるのですが、アロマターゼ阻害薬の試験結果、

CYP2D6の多型とタモキシフェン効果の関係に関する研究、アバスチンの

試験結果などをじっと見ると、あせって新しい治療に飛び乗るよりも、

それらを横にらみしながらも確立された治療法を行うことが、結局は

患者さんの利益になるという想いを強くした次第です。

まあ、もっと言いたいことはありますが、この辺でやめときます。
# by aiharatomohiko | 2011-02-09 00:18 | 論文

アバスチン:似たような結果と異なった解釈


アバスチンを題材にとっていますが、薬物療法の有用性に関する議論の本質

を突いた感のある総説(Comment)が、JCOに載りました。

Ocaña A, Amir E, Vera F, Eisenhauer EA, Tannock IF. 
J Clin Oncol. 2011 Jan 20;29(3):254-6.

原文を読んで頂くと、ナルホドな、と感心されると思うので、ぜひ原文で

読んで頂きたいのですが、以下要約を。

・化学療法±アバスチンの臨床試験の結果は、全てのがん種(乳がん・

卵巣がん・肺がん・胃がん・前立腺がん・大腸がん)で、アバスチン

使用群で無増悪生存期間(PFS)に改善傾向を認める一方で、全生存期間

(OS)に明らかな改善が見られないという傾向が、ほぼ一定して観察

されている。

・にもかかわらず、ある試験ではPFSを一次評価項目としているために

結果が“Positive”と発表され、別の試験ではOSを一次評価項目としている

ために結果が“Negative”と発表されている。

どちらが適切なのであろうか。

・結論を言うと、全生存期間やQOLといった適切な評価項目において、

臨床的に意味のある違いが認められたときに、“Positive Study”とすべき

である。 

・OSの改善が認められたときでさえも、潜在的に伴うQOLの低下とのバランス

を考える必要がある。(注)つまり、OSで有意差を持って勝った時でさえ、

それだけを持って“Positive study”とはするべきではないというスタンス。

統計学的有意差原理主義にとらわれている先生方に読んで欲しい。

目からうろこが落ちるか、内容が理解できないかのどちらかでしょう。

・特記すべきことに、試験が開始されてから、卵巣がんと肺がんの二試験で、

主要評価項目がOSからPFSに変更されていた。(注)OSでは十分なイベント

が得られないため、手っ取り早く結果の出る評価項目に変えたということ。

・Oncology communityは、PFSの改善に関して過剰な解釈をしている。

PFSの改善は、特に無症状の場合に画像での変化だけを追っている場合

には、患者にとっての意味のある成果とは言えない。

・がん種によって、評価項目や結果の解釈の基準が異なるのはおかしい。

すべてのがん種で、OSを主要評価項目として、臨床試験をすべきである。

といったところです。まさに正論ですが、どの程度の臨床試験がこの基準を

満たしているのでしょうか。


アバスチンのランダム化比較試験の結果一覧を見てみると、PFSの改善は

1~3ヶ月程度、OSの改善は-1~2ヶ月程度です。いくつかの試験では

重篤な合併症が増加することが報告されていることを考えると、アバスチン

はとても臨床使用に耐えないという結論になります。やはり。

以下J Clin Oncol. 2011 Jan 20;29(3):254-6 より引用。


アバスチン:似たような結果と異なった解釈_f0123083_010015.jpg

# by aiharatomohiko | 2011-02-09 00:10 | 論文

SABCS2010 エキセメスタンとアナストロゾールは同等


7576名のER陽性閉経後乳がんを対象として、術後内分泌療法における

エキセメスタン5年とアナストロゾール5年を比較したMA27試験の結果

が発表されました。 


EFSが一次エンドポイントで、ハザード比は1.02(95%信頼区間 

0.87-1.18、p=0.85)とほぼ同等でした。

n-でもn+でも同じような傾向だったということです。


結果の解釈としては、もともとエキセメスタンの優越性試験として

デザインされているので、エキセメスタンが優れているとはいえない、

というのが厳密な解釈になるのでしょうか。

95%信頼区間から考えると、エキセメスタンが13%優れているかも

しれないし、18%劣っているかもしれない(逆かもしれませんが)、

ということです。

もっとイベント数が増えれば信頼区間が狭まってくるのですが、

追跡調査には経費がかかるのと、現実的には追加解析をしても

エキセメスタンが勝つ可能性が低く、スポンサー企業がその資金を

出さない可能性があるので、追加解析がなされるかどうかは不明です。

その理由をマーケット的に考えます。

エキセメスタンはアメリカではタモキシフェンからの切り換えでない

単剤での術後療法としては認可されていないようです。

現状アナストロゾールのゾロが発売されたため、アナストロゾールに

勝たない限りは、もし認可されたとしても売れる可能性が低いという

わけです。同等性を証明しても企業としては意味ないわけですね。


望みがあるとすれば、今回の解析時点での骨折率は変わらないものの、

骨粗鬆症は4%ほどエキセメスタンが良かった(31%vs35%)など、

副作用のプロファイルがわずかながら異なるということでありますが、

実際にはいかがでしょうか?


厳密な統計学的解釈はさておいて、実臨床ではこれだけの規模の試験で

カプランマイヤー曲線がベタベタにくっついていることから考えると、

両者は同等であるという解釈で良いでしょう。


MA27のスライドが学会のHPにアップされていないのでこれ以上の

検討はできませんが、このこともスポンサー企業やゴスのやる気のなさを

現しているように思えます。
# by aiharatomohiko | 2011-01-10 10:59 | 学会

FDAがアバスチンの転移・進行乳がんでの適応取り消し


進行大腸がんでは標準治療となっているアバスチン。

乳がんでも、その効果について期待が大きく、いくつもの臨床試験が

行われています。

しかしながら、転移・進行乳がんについては、進行を抑制する期間は

延長するものの、全生存期間を改善する効果が証明されなかかっため、

とうとう一度認可された承認が取り消されることとなりました。


FDAからの声明を見てみると、なぜ認可したのか、そしてなぜ取り消しと

なったのかについて、理路整然とした内容が書かれていました。

個人的にはそもそもなぜ認可したのか疑問があるため、言い訳のように

感じるところもあるのですが、総じて立派な開示の仕方であると思います。

要は、どこかの国の内閣の如く仮免だったのが、本試験で落ちた

ということですね。


FDAのステートメントで目を引いた内容は以下の通りです。

・E2100および追加で行われた複数の臨床試験によっても、進行を抑制

する期間の延長は証明されたものの、全生存期間を改善する効果が証明

されなかった。

・追試験の進行抑制期間の改善効果が、E2100ほど印象的ではなかった。

・その理由として、E2100は中間解析でPFSの改善効果が高かったために

早期試験中止となったが、E2100で見られた程の効果が、他の試験では

再現されなかった。これは“random high”効果ではないかと指摘されている。

→たまたま良い結果が出たときに、試験が中止となったために、真の治療

効果よりもよく見えていた、ということです。

かねがね考えてきたことですが、やはり中間解析結果には気をつけなければ

ならないという事でしょう。

他の早期終了した臨床試験の治療効果についても、注意してみる必要

はあるでしょう。

・重篤な副作用が20%ほど増える。

・それとトレードオフするほどのQOLやclinical benefitの改善も明らか

でなかった。

・効果のあるサブセットが見当たらない。もしあるとしても、現時点では

見分ける方法がない。


個人的に最も印象的だったのは、以下に引用する文章です。

-以下引用-

No trial to date has demonstrated an improvement in OS.

Based on consultation with ODAC in 1999, FDA has recommended

that an improvement in OS be the regulatory endpoint for applications

evaluating drugs and biological agents in the first-line setting in

metastatic breast cancer.

An improvement in OS is considered direct clinical benefit.

None of the trials for initial treatment of metastatic disease

(E2100, AVADO, RIBBON1) were reviewed by the Agency under a special

protocol assessment and the Agency did not agree with the primary endpoint

(PFS) prior to trial initiation.



代替エンドポイントは、真のエンドポイントと相関してこその代替エンド

ポイントです。手っ取り早く結果を出して承認をとる目的で、代替エンド

ポイントが一次エンドポイントとして使われる臨床試験がほとんどですが、

十分な症例集積ができるようになっている現状を考えると、今後は真の

エンドポイントを一次エンドポイントとすべきでしょう。

少なくとも代替エンドポイントだけでFDAの承認を取ることは簡単では

なくなっているように感じます。


保守的といわれるでしょうが、日常臨床においては、新しい治療法に

飛びつくのではなく、真の治療効果を見極めてから新しい治療を取り入れる

ことが、結局は患者さんのためになるのだと、考えています。


転移・進行乳がんでアバスチン時代が来るのは、効果予測因子が

見出されてからでしょう。
# by aiharatomohiko | 2010-12-25 14:39 | 医療

市民フォーラム無事終わりました



11/27の市民フォーラムが無事終わりました。

司会の牧野さんがラジオで告知して下さったおかげもあり、

予定をオーバーする130名ほどの方にご参加頂きました。

アンケートを見ると、内容はわかりやすかったという方が80%

ほどでしたが、時間に限りがあるためもっとじっくりと、という

ご意見も頂いております。

ここは難しいところですね。

市民フォーラム無事終わりました_f0123083_13392732.jpg


写真は後日アップします。

ご来場頂いた皆さん、大住先生・増田さん・中田さん・牧野さん・

ご協力頂いた方々、どうも有り難うございました。
# by aiharatomohiko | 2010-12-11 13:43 | お知らせ

BRCA1/2の遺伝子検査は受けるメリットがありそう

乳がん患者さんには、少なからず家族歴のある方がおられます。

遺伝性乳がんは、乳がん全体では5-10%を占めるといわれています。

遺伝性乳がんに関連する遺伝子では、現在までのところBRCA1遺伝子

とBRCA2遺伝子の二つが知られています。同定されてから15年ほどが

経ち、遺伝子に異常があるかどうかは検査が可能となっています。

BRCA1/BRCA2遺伝子に異常がある方は、乳がんだけでなく卵巣がん

にかかる危険性が高くなることが知られているのですが、この危険性に

ついては案外ご存じない方が多いのではないでしょうか。


これら以外にも遺伝性乳がんに関連する遺伝子がある可能性があります

が、BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子に異常があるかどうかは、現在は検査

会社に依頼すれば、採血するだけで一か月ほどしたら結果が返ってきます。


それでは、どれほどの方が遺伝子検査を希望されるかというと、実際

にはそんなに多くないのが現状です。BRCA1/BRCA2遺伝子に異常がある

とわかった場合に、患者さんにとってどの様なメリットすなわち予防法が

あるのかが、不明確であるのがその理由のひとつかもしれません。


最近の論文では(Association of risk-reducing surgery in BRCA1 or BRCA2

mutation carriers with cancer risk and mortality. Domchek SM, et al.,

JAMA. 2010;304(9):967-75.)、遺伝子検査を受けることの具体的な

メリットが報告されています。


BRCA1遺伝子もしくはBRCA2遺伝子に異常がある2,482名の女性を対象

として前向きの観察研究が行われました。

予防的乳房切除については、3年の観察期間の間に受けた方には乳がん

の発生がみられず(0/247)、受けなかった方の7%(98/1372)に乳がん

が発生しました。

卵巣卵管切除を受けた方は、卵巣がんになる危険性が1/4-1/7ほどに

減りました。また、乳がんの発生も半分程度に減りました。乳がんが

減少する効果は、閉経後の方にはみられませんでした。また、乳がんを

発症した方に対して、反対側乳がんを減らす効果も見られていません。


特筆すべきは、卵巣卵管切除を受けた方で、閉経状況に関わらず、全ての

原因による死亡率が減少したことです(10%が3%に減少)。

乳がんによる死亡率が6%から2%に、卵巣がんによる死亡率が3%から

0.4%に減っていました。
BRCA1/2の遺伝子検査は受けるメリットがありそう_f0123083_1335766.jpg


予防的な乳房切除術には、心理的にかなり抵抗や、健康保険でカバー

されていないことが、実際にはかなりのハードルになると思います。

この研究でも全体の15%程の方が受けているに過ぎません。

予防的な卵巣卵管切除も同様かもしれませんが、卵巣がんを発症する

年齢が乳がんを発症する年齢よりも高いので、子供さんを生んでから

でも十分間に合うことから、個人的に一考に値する予防法であると

考えますが、いかがでしょうか。

BRCA1/2の遺伝子検査は受けるメリットがありそう_f0123083_13343751.jpg

# by aiharatomohiko | 2010-11-23 13:35 | 論文

第5回 Tokyo Breast Consortiumでの講演


先日東京での地域連携の会である第5回 Tokyo Breast Consortium

(TBC)で“ガイドラインは地域連携に有用か”という講演をしてきました。

薬物療法のガイドライン委員会で一緒だった国立がん研究センターのSC先生

からお話を頂いたのですが、当初の指令が地域連携という観点からガイド

ラインを俯瞰せよというかなり難しいお題で、また地域連携は東京が本場

という意識があり正直躊躇しましたが、今回何とかお役を果たすことが

できました。


地域連携からガイドラインの妥当性を検討する内容にしましたが、自分の

発表はさておいて駒込の黒井先生の〆のお話しが大変面白く、これを楽しみ

に参加されている先生もおられるとのことで、さもありなんと思いました。

このパートだけでもyoutubeにのせて欲しいですが、さすがに無理でしょうね。


余談ですが、薬物療法のガイドラインは、今年から委員長が変わりアップ

デートの間隔を短くするとの方針になり、昨年改訂したものを少し手直し

することになりました。

アップデートが三年間隔では長すぎると思っていたので、手間はかかり

ますが良い事だと思います。



会の後は久しぶりにお会いした先生がたに飲みに連れて行っていただき、

楽しい時間を過ごしました。ありがとうございました。
# by aiharatomohiko | 2010-11-21 20:07 | お知らせ

サブタイプ分類の現実


物事はその定義がはっきりしてこそ、議論する価値があります。

反対に、定義がはっきりしていないことを議論することは、

時間の浪費以外の何者でもありません。

今はやりのサブタイプ別に患者さんを個別化して治療方針を

考えることが、まさに後者に当てはまります。

個別化医療は、どこまでできるかはさて置いて、それ自体は重要な

概念であることは言うまでもありません。

しかしながら、サブタイプの分類法が確立ないしは統一されていない

のにも関わらず、サブタイプ別に治療方針をどうするか、

たとえばルミナルAとBで治療方針をどう変えるか、という議論を

することに、根本的な問題があることが分かります。


サブタイプ分類法には、遺伝子発現プロファイルや免疫染色法が

あります。遺伝子発現プロファイルという手法に限って考えても、

異なる方法が何種類か存在します。

これらは、果たして同じものを見ているといえるのでしょうか?


この問題を検討した論文が、Britta Weigeltらの、Breast cancer

molecular profiling with single sample predictors:

a retrospective analysis. Lancet Oncol 2010; 11: 339–49です。



この論文は、異なる3つのデータベースにおける個別の乳がん

患者さんが、3種類の異なる遺伝子発現プロファイルによって、

どのサブタイプに分類されるかを検討したものです。

使用したマイクロアレイは、Sorlie、Hu、Parkerの手法です。


予後とサブタイプの相関という観点では、いずれのマイクロアレイを

いずれのデータセットを用いて検討しても、luminalAが最も予後が

良好で、それ以外は予後が劣るという傾向が観察されており、

マスで見ると乳がんをサブタイプに分類することには一定の意義がある

ように思えます。


しかしながら、個別化医療=個々の患者さんがどのサブタイプに分類

されるか、という観点では、図表をみれば一目瞭然のように、

basal type以外は、liminalA、luminalBは言うまでも無く、HER2

タイプですら用いるマイクロアレイによって個々の患者さんの分類が

一致しないことが分かります。


つまり、個別の患者さんがどのサブタイプに分類されるのかが使用する

マイクロアレイによって異なるため、どの方法を用いたのかという前提

を省いてサブタイプ分類による個別化医療を議論することには意味が無い

ということが明確に示されたわけです。

サブタイプ分類の現実_f0123083_2350613.jpg



いずれのマイクロアレイを用いても個々の乳がん患者さんにおいて

basal typeの判定がほぼ一致していることは、興味深いことです。


もちろん、basalもさらに何種類かに分類することができるかも

しれません。しかし、basal typeという分類に再現性が見られることは、

このサブタイプに関しては特別な治療方針・治療法を議論・開発する

ことに、臨床的な意味がある可能性を示唆しています。

実際、このサブタイプをターゲットとして、PARP阻害薬の開発が

進んでいますし。


その一方で、繰り返しになりますがbasal type以外のサブタイプの

腫瘍の性質や治療方針を議論することは、分類の方法論が統一されない

限りにおいては、雲をつかむような話に思えます。
# by aiharatomohiko | 2010-10-15 23:45 | 論文