2006年サンアントニオ乳癌シンポジウム NSABP B-33 |
タモキシフェン5年終了後のエキセメスタン5年間の追加効果をみる試験。 MA17の結果で、プラセボ群がオープンになったために早期終了を迫られてしまった、かわいそうな試験だったが、どっこいデータを出してくるあたりが転んでもただで起きない感じです。 そういえば、当時学会で招聘されていたNSABPの偉い人(Dr.ウォルマーク?)が、「続けるのは倫理的に問題があるとされたが、個人的には続けたかった。」みたいな事を言っていたように記憶しています。スペインでは同じ様な試験が継続されていて、倫理観は国によって異なっていて当然だとも言っていたように思います。 脱線しましたが、途中でオープンになった結果、1598/3000のaccruelで終わったこの試験、エキセメスタン群の72%ほど、プラセボ群が44%実薬の服用を希望したとのことです。 エキセメスタン群の28%の人はどうしたんだ、ととても鋭い質問がフロアから上がりました。 Dr. マモウナスはわからない、と言っていましたが、レトロゾールに代えたのではないかとの意見がありました。これも鋭いスペキュレーションです。 こういった条件下でも、メディアン30ヶ月で再発を32%減らしているというのだから、結構なものです。ホルモン治療の期間はどんどん延びていく感じですね。 ということは、長期のコンプライアンスが問題になるので、多少効果が落ちても、副作用が少ない薬が勝つという風になっていくのではないでしょうか。 |
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by aiharatomohiko
| 2006-12-26 18:55
| 医療
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2006年サンアントニオ乳癌シンポジウム BCIRG006 |
BCIRG006は、HER2 陽性の早期乳癌患者3,222 例を対象とした術後療法のランダム化比較試験で、AC-T(DTX)を標準治療とし、 TCH と AC-TH を試験アームとしています。 昨年は第一回の中間解析の発表が行われ、AC-T < TCH < AC-TH といった感じの結果でした。 今年はプロトコールに規定された第2 回中間解析結果の報告がありました。結果は、AC-T < TCH = AC-TH といった感じで、一番期待されているTCHのデータが昨年よりも良くなっていましたね。HR:0.67と0.61。 大体どの試験でもハーセプチンの追加でHRは0.6くらいになりますね。 副作用では、TCHは今のところ心毒性が低い印象です。 もう少しデータが成熟してきたら、副作用の違いが明確になり、どのアームが良いかはっきりしてくることが期待できます。 TOPOIIの増幅との関係では、TOPOIIの増幅がある症例では、3群間のDFSに明確な差を認めず、TOPOIIの増幅がない症例では、AC-T < TCH = AC-TH という傾向がより明確になっています。まあ、こちらもデータの成熟待ちという感じです。 |
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by aiharatomohiko
| 2006-12-25 18:49
| 医療
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2006年サンアントニオ乳癌シンポジウム その4 |
放射線治療に関する発表もありました。 EORTCの温存療法後のブースト照射の意義についての発表について記載します。 ①ブーストにより、局所再発が41%減ること。 ②この効果は全ての年代において観察されたこと。特に40才未満の若年乳癌は局所再発のベースラインリスクが高いために有用性が高くなること。 ③その代償として、線維化がひどくなり、重度のものが1.6%から4.4%に増加したこと。 ④全生存率は変わらないこと。 という結果でした。 最近マスコミでは副作用が少ない体に優しい治療法として取り上げられがちな放射線治療ですが、まったくの間違いです。 皮膚に当てれば、皮膚は炎症を起こして硬くなったり、黒ずんだりします。長年たってから潰瘍をおこす事もあります。 舌に当てれば、味覚がなくなる事もあります。 お腹に当てれば、何年か経ってから放射線性腸炎をおこして、穴が開いて腹膜炎になったりすることがあります。場合によっては命に係わることもあります。 副作用がない治療法なんて、医療の世界にはありません。 |
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by aiharatomohiko
| 2006-12-24 14:47
| 医療
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2006年サンアントニオ乳癌シンポジウム その3 |
非常におどろいた発表がこれ。 アメリカでは乳癌の生涯発症率が日本の3倍にも上ります(日本:23~30人に1人。米国:8~9人に1人)が、これが2003年から減少しているとのことです。 特に50才以上(閉経後)のER+の乳癌が減少しているとのことでした。 いろいろな理由を検討していましたが、もっともそれらしいのが、この年の前にホルモン補充療法により乳癌発症が増加するという報告があり、ホルモン補充療法を受ける人が減ったためではないかという仮説でした。 結構説得力がありましたが、真相はいかに。 |
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by aiharatomohiko
| 2006-12-23 14:30
| 医療
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2006年サンアントニオ乳癌シンポジウムその2 |
今回のシンポジウムで記憶に残った発表を記憶するために、記載します。 まず、ラパチニブというHER1とHER2に対する分子標的治療薬です。 ラパチニブはハーセプチンと違い、脳転移に効果が期待できる薬剤です。 日本でも治験が終了したとのこと。 実際に使えるようになるまでは、まだ1、2年はかかるでしょう。 経口薬なので点滴しなくても良いというメリットがあります。 タキソールとゼローダどちらと併用しても、ハーセプチンと同等の効果がある印象でした。 副作用では、消化器症状、特に下痢が気になります。 この点ではハーセプチンの方が有利な印象でしたが、愛知県がんセンターの岩田先生に聞くと、下痢は臨床上そんなに問題にはならないとのことでした。 |
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by aiharatomohiko
| 2006-12-21 14:46
| 医療
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