SABCS2018 Triple negativeに対するカペシタビン |
876名のTriple negative乳がん患者さんを対象として、標準的術後化学療法を行った後に、カペシタビンの有用性を検討した臨床試験の結果が報告されました。 投与期間は24週間と同じものの、カペシタビンの用量が1000㎎/m2x2と、CREATEXの1250よりも低いことに留意する必要があります。 結果は、有意ではなかったものの、カペシタビンでハザード比の推定値が0.82と再発の抑制が示唆されています。 ![]() ![]() ![]() |
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by aiharatomohiko
| 2019-03-02 23:05
| 学会
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SABCS2018 IMPASSION PDL1- |
IMPASSIONのPDL1-のサブセットの結果がサンアントニオで発表されています。 大方の予想通り、ネガティブな結果でした。 年末位に保険適応になるとのうわさもありますが、例えPDL1の状況によらず認可されたとしても、使用するのはPDL1陽性症例だけになるでしょうね。 |
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by aiharatomohiko
| 2019-03-02 22:37
| 学会
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術前化学療法でnon pCRのHER2乳がんにはカドサイラ |
サンアントニオでの発表と同時にNEJMに発表された、KATHERINE試験の結果です。 HER2陽性乳がんで術前化学療法の後に手術で浸潤がんが残っていた人が対象で、ハーセプチンとカドサイラの術後14サイクルの比較がなされています。 中間解析での結果がよかったため、データがリリースされています。 IDFSが50%改善、DDFSが40%改善、OSも30%改善する可能性がある(まだイベントは少ないため、確定値ではない)という、素晴らしいデータです。中間解析とはいえ、イベント数が250あるので、推定値の精度も十分そうです。 問題は保険に通ってないことで、さすがにこのご時世は使えません。 学会からの要望などお願いしたいです。 ********************************************** 乳がんの最新情報を考察して、備忘録的に記録しています。 言うまでもないですが、あくまで個人の見解です。 相原病院ブレストセンター(乳腺外科) 相原智彦 **********************************************
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by aiharatomohiko
| 2018-12-07 10:01
| 論文
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PDL1抗体の有用性 |
転移もしくは手術不能なトリプルネガティブ乳がんに対して、抗PDL1抗体であるアテゾリズマブの有用性を検討した試験の結果がNEJMに発表されました(N Engl J Med. DOI:10.1056/NEJMoa1809615)。902名の乳がん患者さんを対象として、nab-パクリタキセルにアテゾリズマブもしくはプラセボを1:1で割り付けています。
結果は、PFSが7.2 monthswith atezolizumab plus nab-paclitaxel vs 5.5 months with placebo plusnab-paclitaxel (hazard ratio, 0.80; 95% confidence interval [CI], 0.69 to 0.92;P=0.002)とポジティブ、PD-L1–positive でもPFSが 7.5 months vs 5.0 months (hazard ratio, 0.62;95% CI, 0.49 to 0.78; P<0.001)とポジティブ。予定されたOSの中間解析は、 ITTで 21.3months with atezolizumab plus nab-paclitaxel vs 17.6 months with placebo plusnab-paclitaxel (hazard ratio for death, 0.84; 95% CI, 0.69 to 1.02;P=0.08)でネガティブ、PD-L1–positiveのサブグループはhierarchical testになっていたので検定はされず25.0 months vs 15.5 months (hazard ratio, 0.62; 95% CI, 0.45 to0.86)という結果だけ記載されています。 副作用については、新たな重篤なものはありませんでした。 ![]()
サブグループ解析でheterogeneityがありそうなのは、ITTでPDL1の発現、骨転移の有無、リンパ節再発単独か否かで、PDL1陽性のサブグループ解析とは若干様子が異なっているのですが、ここでは割愛します。
この試験は統計解析の設定がかなり複雑で理解するのに時間がかかりました(というか理解が正しいか自信がありませんので、確認をお願いします)。 ![]() ・全体のアルファは両側0.05に設定、これがPFSに0.01、OSに0.04スプリットされる。 ・PFSは中間解析の設定はなく、今回なされた主解析のみの一発検定。PFSの0.01は、ITTとTILのPDL1陽性のサブグループに0.005ずつスプリットされ、かつ帰無仮説が棄却された場合に、hierarchical testのかたちで、それぞれ奏効率の検定に0.001ずつ割り当てられ、それぞれの残りの0.004はOSの検定に還元される。奏効率の帰無仮説が棄却された場合には、その分のアルファ(最大で0.002)がOSの検定に還元される。 →注:PFSの帰無仮説は両方とも棄却されたものの、奏効率では両方とも棄却されなかったので、0.008がOSに割り戻された。 ・OSは中間解析がPFSの解析時(今回)ともう一回の都合二回設定されている。OS解析に使えるアルファは、上記より0.04+0.008(PFSからの還元)=0.048となります。中間解析の有意水準は論文でもappendixにも見つけられなかったのですが、プロトコールには以下のごとく書いていました。1回目(今回)の中間解析時のITTのP値が0.0039に、2回目は0.0210、それでもだめなら主解析のP値0.0408で有意ということだそうです(361/362ページに記載)。プロトコールから推測すると、今のハザード比が保たれるならば、最終的に有意になりそうです(HR £ 0.853を想定)。 いつかの時点の解析でOSがポジティブに出ることが期待されますが、問題なのは万一ITTでOSが有意にならなかった場合、大きな差が期待されるPDL1陽性サブグループでOSの検定が出来なくなることです。迷宮入りになったらえらいことです。。。
さて、現時点では、アテゾリズマブをnabパクリに加えることで、ITTでPFSが1.7ヶ月という誤差の範囲程度に改善し、PDL1陽性では2.5ヶ月と改善の度合いがより大きくなることまでは検証され、OSはITTで3.7ヶ月、全体の4割ほどを占めるPDL1陽性で9.5ヶ月と大きく改善される可能性がある、というところまで言えます。他のがん腫のように、10-20%ほどの長期間にわたり効果が見込めるポピュレーションがあることを期待したいですね。OSのカプランマイヤーを見ると、15か月以上のat riskがまだ少ないですが、期待できそうに見えます。
現状で保険が通ったなら、OSの主解析結果を待たなくても、PDL1陽性のケースに使用したいです。 ********************************************** 乳がんの最新情報を考察して、備忘録的に記録しています。 言うまでもないですが、あくまで個人の見解です。 相原病院ブレストセンター(乳腺外科) 相原智彦 **********************************************
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by aiharatomohiko
| 2018-11-07 00:13
| 論文
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BOLERO2から振り返るフリカケ薬の話 その5 |
ホルモン感受性の転移再発乳がん患者さんの二次療法として、フルベストラント+プラセボVSフルベストラント+パルボサイクリブ(PALOMA3)のOSの結果がNew Engl J Medに掲載されました。結果は、median overall survival was 34.9 months (95% CI, 28.8 to 40.0) in the palbociclib–fulvestrant group and 28.0 months (95% CI, 23.6 to 34.6) in the placebo–fulvestrant group. The stratified hazard ratio for death was 0.81 (95% CI, 0.64 to 1.03; P = 0.09)ということで、ハザード比で20%の改善と推定値では6.9か月の改善が見られましたが、統計学的には有意差なしでした。頻度主義原理主義の観点からは、“パルボサイクリブの上乗せによるOSの改善は統計学的に示されませんでした”、以上です(笑)。
サブグループを見ると、DFIが24月以下、一次ホルモン療法が有効でなかったケースでは、パルボの上乗せ効果がなさそうです。3つの層別化因子での後解析が事前に予定されており、それらは一次ホルモン療法への感受性、内臓転移の有無、閉経状況です。一次ホルモン療法が有効だった410人の解析では、the median overall survival was 39.7 months (95% CI, 34.8 to 45.7) in the palbociclib–fulvestrant group and 29.7 months (95% CI, 23.8 to 37.9) in the placebo–fulvestrant group (hazard ratio, 0.72; 95% CI, 0.55 to 0.94; absolute difference, 10.0 months)という結果でした。αが効いておらずたまたま良かった後解析のくせに論文のアブストラクトの結果欄には大々的に書かれてました。最近こういう手合いが多いような気がします。内臓転移と閉経前では効果は今一ぽいですが、症例数が少ないので、実臨床でこういったデータは考慮しないですね。
CDK4/6のPIIIは複数行われているので、全てのOSの結果が出そろうのが楽しみです。
個人的にはこのデータによって臨床を変えるつもりはないですが、一次ホルモン療法が効いた人の二次療法として使う時にOSが改善されるかもしれないなあと思って、使うときに少し気が楽になるかもしれません。ベイズ的ですが(笑)。 ********************************************** 乳がんの最新情報を考察して、備忘録的に記録しています。 あくまで個人の見解です。 相原病院ブレストセンター(乳腺外科) 相原智彦 **********************************************
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by aiharatomohiko
| 2018-10-28 21:43
| 論文
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