タモキシフェンの10年投与 ATLASの再検討 |
タモキシフェンを5年以上使用する時に重要なデータとなるATLAS試験の結果を改めてみてみました。Lancet 2013; 381: 805–16。 閉経前と閉経後の違いが気になります。実際に登録された閉経前のケースはわずか10%程度で、ほとんどは閉経後のケースです。この状況で閉経前に結果を適用してよいかどうか(結果の一般化の問題)ですが、再発リスクのサブグループ解析を見ると、ratio of annual event rates (SE)は、閉経前0·81(0·15)に対して、閉経後0·85 (0·05)と大きく変わらないので、結果を適応して問題ないでしょう。 ER陽性での結果を再確認すると、Recurrencerate ratio [RR] 0·90 [95% CI 0·79–1·02] during years 5–9 and 0·75 [0·62–0·90]in later years 全期間では0·85 (SE 0·05); breast cancermortality RR 0·97 [0·79–1·18] during years 5–9 and 0·71 [0·58–0·88] in lateryears.全期間では0·83 (SE 0·07)です。タモキシフェンの延長効果は10年目以降に明らかになります。再発の内訳をみると、Isolated local 0·73 (0·13)、Isolated contralateral 0·75 (0·11)、 Distant 0·90 (0·06)と遠隔転移を押さえる効果は高くないように思えますが、それでも乳がん死亡を17%減少させる効果があるので、リスクの高い人には投与を検討する必要があります。 |
#
by aiharatomohiko
| 2018-02-18 22:26
| 論文
|
GS3-1 ABCSG16 延長期間2年で良いのならば朗報ですが |
TAMかAIかTAMからAIに切り替えて4-6年ホルモン治療を行っている3484名の閉経後乳がんを対象として、アナストロゾール2年 vs 5年を比較したABCSG16試験の追跡期間中央値106か月の結果が発表されました。 主要評価項目はDFSで、ランダム化された時点とランダム化2年後を起点とした2種類の解析がなされたと書いてありました。どっちがメインとかαエラーがどうなっているか詳細は書いてなかったですが、他の記述と発表された結果からは前者のようです。 統計学的仮説は、HR0.74を両側α5%で85%の検出力で検出するために433イベントが必要で、全患者を10年フォローすることが決まっていたようです。ということから、これは優越性試験という事が分かります。 3469名を対象として、762イベントが起こった時点で解析されたようです。なぜこんなにイベント数がオーバーランした時点まで解析を待ったのかはわかりません。 対象は2/3がn0で、化学療法がおこなわれていたのは30%でした。TAMが50%。TAM-AIが40%、AIのみは10%以下でした。なので、この試験の対象のほとんどはTAMからスタートした人であるという点は重要です。 結果:ランダム化した時点からのDFSはHR1.007(95%CI:0.87-1.16)NSでした。サブグループで、heterogeneityはありませんでした。TAM単独でも、AIが入っていても変わらない。OSも変わらず。骨折は5年投与群で多かった4.7%vs6.3%。つまり、5年のAIは2年のAIに対する優越性を示せなかった。 結論:予後を改善せず、骨折が多いために、AIは2年で十分ということでした。MA17の後解析で、LETは経時的にハザード比が下がる=再発を抑える効果が高くなる=長く服用すればするほど良い(Breast Cancer Res Treat. 2006 Oct;99(3):295-300.)という結果が出ていたので、5年完了するまで継続していました。探索的な結果ではありますが、今回の結果とは齟齬があります。SOLE試験もその背景によりデザインされていたのだろうと思います。今後どうするべきかよく考えないといけないですね。 |
#
by aiharatomohiko
| 2017-12-25 15:24
| 学会
|
GS1-06 SUCCESS A study これも覚えておくべきnegative studyか |
化学療法の後にゾレドロン酸を2年vs5年を比較したRCTの結果が報告されました。対象が明確に記載されていないが、試験に登録されたのは3754名の化学療法の適応がある患者さんのようで、うち2987名が解析対象となっています。 評価項目は、ゾレドロン酸を開始して2年目を起点とした、adapted DFSとadapted OS。 予め最長観察期間が4年と規定されているようです。観察期間中央値約3年時点での結果は、いずれも差を認めなかった(HR0.97 95%CI 0.75-1.25イベント数aDFS n=250)。OSも同様の傾向。副作用は5年の方が多かった。
結果:実臨床で術後に再発予防を目的としてゾレドロン酸を使用するときには、2年を超えて投与するメリットを証明できなかった。
問題点:良くあることだけど、学会ではそもそもの統計学的仮説がきっちり発表されていない。adaptedDFSはITT解析でない。どうせなら2年の時点でランダム化すればいいのにと思う。一般的にゾレドロン酸の適応にならないと思われる閉経前が4割以上含まれていることで検出力が落ちている。閉経後に限定して、ゾレドロン酸無しの群があればそもそもゾレドロン酸が必要かどうかを検証できたかもしれないが、スタート前にわからなかったことも多いと思います。結局この試験の結果では、まず2年必要かどうかわからないし、2年でよいかどうかもはわからないけど、5年行くと副作用が増えることは確実というすっきりしない幕切れに。。。 |
#
by aiharatomohiko
| 2017-12-23 17:27
|
サンアントニオ GS1-02 NSABPB47 素晴らしいが、negative |
なかなか結果が発表されなかったので芳しい結果ではなかったのかな、と心配していたら、残念ながらその通りだったようです。 ハーセプチンの術後療法での有効性が報告されたNSABPB31でのエントリー基準は参加施設で検査したHER2のFISH>2.0もしくはIHC3+でしたが、セントラルで調べると174/1795 9.7%はHER2陰性でした。そのHER2陰性のサブセットでも、再発の相対比は0.5以下とハーセプチンの効果をHER2陽性と同等に認めた。またN9831でも同様な傾向を認めたため、ハーセプチンはHER2陰性でも効くんじゃないか、という仮説が提示されました。それを検証するために行われたのがこの試験です。 対象:HER2 1+もしくは、2+かつHER2 FISH陰性(ratio<2かつ<4)のhigh risk node negativeかn+ 腫瘍評価項目:IDFS 統計学的仮説:ハーセプチン追加による33%のリスク低減を90%のパワーで検出する。片側α2.5%の有意水準。264イベントで解析。 3270名をランダム化、中央値46か月のフォローアップ。 5年IDFSは89.2%vs89.6%、イベント数は264で、ハザード比は0.98(0.77-1.26)であった。フォレストプロットでもinteractionはなし。IHC1+と2+で違いはなし。心毒性は高く、OSはむしろ悪い傾向(HR1.33(0.91-1.94))。 二つの試験の後ろ向きの解析で同様な結果が出たにもかかわらず、前向きに試験をするとnegativeとは。。。結果がnegativeな試験を覚えるのは難しいが、この試験は個人的に特別なものとして忘れがたいですね。中央で集中して行った検査より、各施設で行った検査の方が試験の結果を反映している=正確であることを示唆したともいえるのではないでしょうか。 |
#
by aiharatomohiko
| 2017-12-21 22:54
| 学会
|
SABCS2017 EBCTCG dose dense |
EBCTCG 2週毎と3週毎の術後化学療法のメタ解析による比較の結果がサンアントニオで発表されました。 結果です。 再発:相対比 0.83 乳癌死亡:相対比0.86 再発;ER陰性:相対比0.82 ER陽性:相対比0.86 結果再発を認めない死亡数の増加はなく、OSの相対比は0.87で絶対値の差は3%であった。
Dose denseはメーカーの強力なプッシュにより広がってきているようにも見えますが、3週毎投与との効果の差はそう大きくはなく、3週毎PTXをweekplyPTXに変えた効果と同じくらいです。 無治療と比較すると、AC(HR0.75)xPTX(HR0.83)xdose dense(HR0.83)もしくはweeklyPTX(HR0.80)を掛け合わせると再発を半分くらい抑えることになります。まあ、これはこのメタ解析の結果を待つまでもなく計算できたわけですが。 学会発表で時間が限られていたために、特にsequentialとconcurrentでのレジメなど細かいところがわからないので何とも言えないものの、dosedensityを上げることの有用性がERが陽性・陰性によらずにほぼ同程度にあると示されたのは、良かったと思います。 論文化したら詳しく読み込みたい研究です。 |
#
by aiharatomohiko
| 2017-12-16 21:24
| 学会
|
SOLE試験って知ってます? |
結果がNegativeな試験は覚えるのが難しい。SOLE試験もそんななかの一つになってしまいました。まあ、結果がどう出るかは運みたいなものがあるんですけどね。これは、レトロゾールを中止した後再開することで、ホルモン治療への耐性を克服できるという動物実験からヒントを得た研究です。 4-6年の術後ホルモン治療中に無再発である4851名の閉経後女性が、試験治療の9月レトロゾール3月休みx4年⇒休みなしレトロゾール1年計5年 (n=2425) と標準治療 休みなし5年レトロゾール(n=2426)にランダム化されています。アロマターゼ阻害薬10年が標準かいっという突っ込みを頂くのは当然ですね。反論はできません。 結果です。中央値60月フォローアップの結果です。Disease-free survival was 85·8% (95% CI 84·2–87·2) in theintermittent letrozole group compared with 87·5% (86·0–88·8) in the continuousletrozole group (hazard ratio 1·08, 95% CI 0·93–1·26; p=0·31). と間歇投与群の優位性はありませんでした。副作用も差がありませんでした。 Negativeでした、というだけで片がついてしまいますが、それだけでは寂しいので、細かく内容を見てみました。
![]() |
#
by aiharatomohiko
| 2017-11-23 09:38
| 論文
|
Olaparibよ、お前もか。 |
Medianprogression free survival was significantly longer in the olaparib group thanin the standard therapy group (7.0 months vs. 4.2 months; hazard ratio fordisease progression or death, 0.58; 95% confidence interval, 0.43 to 0.80; P<0.001).The response rate was 59.9% in the olaparib group and 28.8% in thestandard-therapy group.ということで、PFSのハザード比が40%も改善して第一のドミノが倒れ、奏効率も2倍というolaparibの顕著な抗腫瘍効果が観察されました。ただ、改善されたPFSの絶対値は、そもそも組み入れられた患者さんが治療に対する抵抗性が高かったためか、わずかに2.8か月でした。 2番目のドミノも、以下の如く有意な改善を示して、倒れました。The median time from randomization to a second progression event ordeath after a first progression event was 13.2 months in the olaparib group and9.3 months in the standard-therapy group (hazard ratio, 0.57; 95% CI, 0.40 to0.83; P = 0.003). ここまでは上々でしたが、残念なことにもっとも重要な3番目のドミノであるOSは、倒れませんでした。OS did not differ significantlybetween groups (hazard ratio for death, 0.90; 95% CI, 0.63 to 1.29;P = 0.57). The median time to deathwas 19.3 months in the olaparib group and 19.6 months in the standard-therapygroup。カエサルならば、olaparibよ、お前もか、大阪人ならば、何やそれっ、て突っ込んだことでしょう。エベロリムスやアバスチンと変わらない。。。Discussionには、OSの違いを検出する十分なパワーがなかったって書いてありましたけど、それならば何のためのhierarchical multiple-testing strategyなのか。そもそもパワー不足と事前にわかっていたならば、検定する意味があるのでしょうか。カプランマイヤーはolaparibの方がなんとなく上の方なので、本気で勝つ気でいたのなら、十分なパワーを確保して研究すればよかったのに、と思いました。
|
#
by aiharatomohiko
| 2017-09-18 21:19
| 論文
|
ハーセプチンのバイオシミラーの研究がイケてない件 |
CT-P6というハーセプチンのバイオシミラーとハーセプチンを比較した第三相試験の結果がLancet(Volume 18, No. 7, p917–928, July 2017)に掲載されていましたが、抄録を読んだだけで全文を読む気を失ってしまいましたので、そのつもりで読んでください。 |
#
by aiharatomohiko
| 2017-09-17 23:57
| 論文
|
FALCON試験 名前は強そうだけど、 |
術前後も含めてホルモン治療が以前になされていない、閉経後局所進行または転移乳がんの一次ホルモン治療(化学療法は一レジメンまで許容)において、アナストロゾール1mgとフルべストラント500mgを比較した、ダブルブラインド・ダブルダミーのランダム化比較試験であるFALCON試験の結果です。 462例の患者さんが登録され、PFSが主要評価項目でした。PFS中央値はフルベストラント群において16.6カ月、アナストロゾール群では13.8カ月と、でフルベストラントの方が2.8カ月長かったことが示されました(ハザード比:0.797;95% 信頼区間:0.637-0.999; p値=0.0486)。 副作用には、大きな差はありませんでした。
PDになればいずれにせよフルベストラントは使用するわけですし、OSが変わらない(仮定)のであれば、非侵襲的な治療から始める方が患者さんにとっても医療者にとっても良いという考え方もあるでしょう。フルベストラントを二次治療以降に使用すると一次治療に使用する場合と比べると治療期間が短くなるため、侵襲的な治療が行われる期間が短くなります。費用の問題も馬鹿にはなりません。
|
#
by aiharatomohiko
| 2017-08-06 22:14
| 論文
|
なかなかご機嫌な結果-TACT2試験 |
デザイン:4391名のリンパ節転移陽性もしくはリンパ節転移陰性高リスク乳がんを対象として、epirubicin 100mg/m2 2週毎(dose dense)が3週毎(標準)より優れるか、 classical CMFより capecitabine(four 3-week cycles of 2500 mg/m² capecitabine per day)が劣っていないか(非劣性)をみた、2x2 factorial design。 結果:閉経前が40%、n0がほぼ半数。追跡期間中央値85.6か月での解析。 ①Epirucibin q2wk vs q3wk は、[HR] 0・94, 95% CI 0・81–1・09;stratified p=0・42)であり、DD epirubicinは優越性を示せずかつ毒性が高いため、脱落。 ②CMFに対する capecitabineの非劣性に関しては、書きぶりから仮説を理解するのが困難でした。 結果に、“There was also no significant difference”と書いているので混乱しますが、 “in TTR between the CMF and capecitabine groups (362 [17%] of 2178 patients in the CMF group had TTR events compared with 354 [16%] of 2180 patients in the capecitabine alone group, overall HR 0·98, upper 95·78% CI limit 1·12; 95% CI 0·85–1·14, p=0·00092 for non-inferiority and stratified log-rank test p=0·81 for superiority of capecitabine compared with CMF;figure 2).”と続きますので、非劣性は証明されたが優越性は証明されなかったといっているのが分かります。 95%信頼区間は上下とも15%ほどなので、同等と言ってよいでしょう。QOLは、24か月まではcapecitabineが優れていましたので、CMFに代わり得ることが示されました。なお、いずれの治療法間でもサブグループ間でのheterogeneityはありませんでした。 考察:E100単独にDDが無意味なことが分かった意義は大きい。しかしながら、E単独でCが入っていないために、AC60/600の場合にDDが無効とは言えない。当院ではACを使用しているために、個人的にはあまりinformativeでない試験結果となったのは致し方ありません。 Lancet Oncol. 2017 Jul;18(7):929-945. ![]() |
#
by aiharatomohiko
| 2017-07-23 21:53
| 論文
|