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乳腺外科医が乳がんの最新情報をブログで紹介しています
by aiharatomohiko
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しぼむアテゾリズマブへの期待 その2IMPASSION131

転移性トリプルネガティブ乳がんの一次治療としてパクリタキセルにアテゾリズマブの上乗せ効果を検証するIMPASSION131の結果が報告されています(Ann Oncol. 2021Aug;32(8):994-1004.)。PD-L1発現陽性でのPFS中央値はアテゾリズマブ群で6.0カ月(95CI 5.67.4カ月)、プラセボ群では5.7カ月(95CI 5.47.2カ月)でHR 0.82(95CI0.601.12P0.20)と有意な改善は認めなかった。

また、OSも有意な改善は無かった(というかOS推定値がアテゾリズマブ群で6か月も悪い傾向。HR 1.11, 95% CI 0.76-1.64; median 22.1 months withatezolizumab-paclitaxel versus 28.3 months with placebo-paclitaxel)

nabPTXでは良い傾向にあったが有意差検定はさせてもらえず、PTXでは勝てなかったアテゾリズマブの未来は明るいと言えないかもしれません。

しぼむアテゾリズマブへの期待 その2IMPASSION131_f0123083_23135859.jpg


# by aiharatomohiko | 2022-03-05 23:14 | 論文

乳がん治療にプラチナは出番なしか

トリプルネガティブ乳がんの術前化学療法後に1cm以上の残存腫瘍があった症例を対象として、プラチナ製剤の3週毎4サイクルとカペシタビンの3週毎6サイクルを比較したEA1131試験の結果が発表されました。J Clin Oncol. 2021 Aug 10;39(23):2539-2551.


結果は以下の通りで、プラチナがカペシタビンを上回る可能性がなく、副作用も強いことから、試験が早期に中止になりました。


After median follow-up of 20 months and 120iDFS events (61% of full information) in the 308 (78%) patients with basalsubtype TNBC, the 3-year iDFS for platinum was 42% (95% CI, 30 to 53) versus49% (95% CI, 39 to 59) for capecitabine.

この他に、

TNBCの転移乳がんの一次治療で、カルボプラチンはドセタキセルに対する優越性を示せていない。

TNBCの術前化学療法のpCRの割合で、シスプラチンはパクリタキセルを上回れなかった。

という事から、現時点では乳がん治療でプラチナが有用であると思われるシチュエーションは見当たらないといえそうです。


# by aiharatomohiko | 2021-09-11 22:19 | 論文

ホルモン治療は5年を超えていつまで行うべきか

術後ホルモン治療5年後にアナストロゾール2年vs5年を比較したABCSG試験の結果がNEJMに発表されました。3484名が11で割りつけられています。解析は投与開始2年時点でのランドマーク解析が行われているため、当初二年間に再発あるいは服薬中止した症例(ANA2年;それぞれ67例と62例、ANA5年;それぞれ68例と65例)が解析から除かれています。これだったら、2年服用終了時にランダム化すればいいのにと思いますが、ABCSGは以前から同様のタイミングでランダム化していたような記憶もあります。

10年フォローアップして再発あるいは死亡はいずれの群にも20%おこり、差は認めなかったという報告でした。ただし、骨折リスクはANA5年群で1.35倍です。再発リスクが低い人は、そもそも2年追加する必要があるのかもわかりませんが、アロマターゼ阻害薬を漫然と投与すべきではなさそうです。

ただ、この試験には、nが4個以上の人はあまり含まれていないようなので、ハイリスク群で5年投与するかどうかは個別の判断になりそうです。

disease progression ordeath occurred in 335 women in each treatment group in the primary-analysis setat 8 years (hazard ratio, 0.99; 95% confidence interval [CI], 0.85 to 1.15; P =0.90). No between-group differences occurred in most secondary end points, andsubgroup analyses did not indicate differences in any particular subgroup. Therisk of clinical bone fracture was higher in the 5-year group than in the2-year group (hazard ratio, 1.35; 95% CI, 1.00 to 1.84).


# by aiharatomohiko | 2021-08-25 15:23 | 論文

RxPonder試験 リンパ節転移陽性へのオンコタイプの利用

腋窩リンパ節転移陽性のER陽性、HER2陰性乳がんのうち85%はオンコタイプでRS0-25であるという。そのうち、リンパ節転移が1-3個の人を対象として、ホルモン治療 VS ホルモン治療+ケモを比較したRxPonder試験の結果が、SABCS2020で報告されている。

論文化がまだなのでfigureは上げられないが、結果は以下の通り。

・閉経後の患者さんでは、化学療法の上乗せ効果はなかったので、化学療法を省略する目的でオンコタイプは有用。

・閉経前の患者さんでは、化学療法の上乗せ効果を認めた。つまり、リンパ節転移陽性の場合、閉経前の患者さんではRSの値によらず化学療法の上乗せ効果がある(IDFS40-50%減少させる)ことから、この対象にRSは化学療法を省略する目的での、効果予測因子としての意義がないという結果だった(標準治療が化学療法ありのため)。

ただ、5IDFSがホルモン治療で89.0%、化学療法上乗せで94.2%と絶対値で見て5%の違いだったため、その程度の違いならば化学療法は受けたくないという人もいるだろうから、この対象にオンコタイプの意義が全く無いとは言えないかもしれない。すなわち、オンコタイプは予後因子として利用する意義はあるのではないか。(ちなみに化学療法による遠隔転移の改善は5年で2.9%。)

というのは、GnRHアナログを追加することで、2%ほどIDFSの改善が得られるかもしれない。また、GnRHとアロマターゼ阻害薬の併用では、3.5%ほどの改善が期待でき、化学療法との差がかなり小さくなるが、さて、患者さんへの説明と治療法の選択が難しくなりそうだ。


# by aiharatomohiko | 2021-05-06 00:29 | 学会

しぼむアテゾリズマブへの期待 IMPASSION130と131

良くない情報は目立たないように報告されるものですね。Positiveなら学会発表と同時にNEJMに報告されるのに。

昨年のESMOでアテゾリズマブの有用性を検証するIMPASSION130試験のOSの最終解析結果がひっそりと報告されていました。

以下がその結果です。真の評価項目である全生存期間は統計学的には有意に改善はされなかった、ということが骨子です。中間解析結果を見るとOSでも何とか有意になりそうだったのですが、ダメでした。

Final OS analysis A + nP (n = 451) P + nP (n =451)

ITT population

Events, n (%) 322 (71) 344 (76)

Median OS (95% CI), mo 21.0 (19.0, 23.4) 18.7 (16.9, 20.8)

Stratified OS HRa (95%CI); log-rank P 0.87 (0.75, 1.02);0.0770b

3-year OS (95% CI), % 28 (24, 32) 25 (21, 29)

PD-L1+ population c (n = 185) (n= 184)

Events, n (%) 120 (65) 139 (76)

Median OS (95% CI), mo 25.4 (19.6, 30.7) 17.9 (13.6, 20.3)

Stratified OS HR (95% CI) 0.67 (0.53, 0.86)d

3-year OS (95% CI), % 36 (29, 43) 22 (16, 28)

ITTで有意でなければ、PDL1陽性では検定が出来ない(ITTでαを消費してしまったため)デザインでしたので、いくらPDL1陽性でデータが良いように見えても、それはまぼろしかもしれません。

ESMOの発表では、苦し紛れに“clinicallymeaningful OS benefit was observed in PD-L1+ pts”って書いていますけど、これは発表者バイアスなので、われわれ臨床家はまともに受け取ってはいけません。

パクリタキセルを使用したIMPASSION131試験では、アテゾリズマブはPFSを改善しなかったばかりか、OSでは悪い傾向にあるということで、、、

まとめると、nabPTXとの併用でアテゾリズマブはPFSを改善するが、OSの改善は見られなかった。PTXとの併用では、アテゾリズマブはPFSを改善しなかったばかりか、OSでは悪い傾向にある。なんじゃこりゃ。中間解析での期待は幻だったのか。。。

副作用のプロファイルを考えると、真のエンドポイントを改善しないのならば、ただただ使いにくくて患者さんに対するベネフィットは??という印象です。

P3の結果はまだ論文化されていないものの、現時点でのデータをみると、今後はSacituzumab Govitecanなどの抗TROP2抗体がtriple negativeの治療の中心になるでしょう。心から早く上市して欲しいと思います。

追記:ほかのPD1/PDL1抗体に関しては、OSの結果はまだなので、この系統の薬剤全てが今一と決まったわけではありません。


# by aiharatomohiko | 2021-03-06 22:18 | 論文