人気ブログランキング | 話題のタグを見る
excitemusic

乳腺外科医が乳がんの最新情報をブログで紹介しています
by aiharatomohiko
ICELANDia
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
カテゴリ
以前の記事
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


n0高リスクに対する術後ハーセプチン投与期間短縮その2

結論から言えば、n0 高リスクのHER2陽性乳がんの術後治療で、trastuzumabの1年間の投与は必須ではないと思われる。なぜならば、投与期間を6月に短縮することで高くなることが懸念される、再発リスクの絶対値は1%未満と推定され、臨床的に無視できるほど小さいうえに、抗HER2療法に伴う心血管系の毒性ならびに通院を含めた医療コストが半分以下に減少することがその理由である。

たしかに、標準治療とされているtrastuzumabの1年投与に対して、試験治療である短縮期間投与が臨床的に劣らないかを検討したランダム化比較試験(すなわち非劣性試験)は今までに5件報告されているものの、非劣性が検証されたのはわずかに1件だけである。他の試験では非劣性が検証されていないためこの試験ではαエラーによりたまたま非劣性が検証されたのではないか、この試験で設定された1.29というハザード比の非劣性マージンの大きさが妥当かどうか(すなわち大きすぎるのではないか)、といったような批判は当然ありえるだろう。

しかしながら、全ての試験のデータを総合的に検討することで、そういった批判が当たっておらず、大部分の患者さんでは1年投与より短縮期間投与、具体的には6月投与が臨床的に妥当であることがわかる。まずは短縮された投与期間ごとに臨床試験の結果を見ていきたい。


# by aiharatomohiko | 2020-05-23 21:09 | 医療

n0高リスクに対する、術後ハーセプチン投与期間短縮の妥当性

術後治療におけるtrastuzumabの投与は、1年に対して2年の優越性が検証されなかったため、1年投与が標準とされる。短縮期間投与の有用性を検討するために、標準治療である1年投与と短縮期間投与を比較したランダム化比較試験が複数行われた。結果が公表されたものは、いずれも有効性(再発)を主要評価項目とした非劣性試験である。非劣性試験とは、ランダム化比較試験によって試験治療が標準治療と比べて臨床的に劣らないことを検証しようとする臨床試験である。試験で得られた結果の信頼区間の上限が予め設定した値(非劣性マージンという)を下回ることで非劣性を検証するという方法論は確立されているものの、非劣性マージンの値をどれくらいに設定するべきか、非劣性が検証されなかった場合にどのように結果を解釈すべきか、という課題がある。

結果が報告されたtrastuzumabの短縮投与の期間は9週と6月であり、先に述べたように一つの試験のみで非劣性が検証され、残りすべてで非劣性は検証されなかった。しかしながら、短縮期間投与で心血管系の毒性は改善されたため、副作用の観点では短縮期間投与の利益は明らかである。加えて、患者さんの通院や経済的な負担からも短縮期間投与の利益は明らかである。そのため、投与期間の短縮によりどの程度再発率が増悪する恐れがあるのか、そしてそれは臨床的に受け入れられるのか、を検討する必要がある。

各々の臨床試験の結果から短縮期間投与の治療効果を推定し、その結果をn0 高リスクに当てはめることで、1年投与と短縮期間投与の治療効果の絶対的な違いがどの程度かを推定することで、n0 高リスクのHER2陽性乳癌の術後治療でtrastuzumabの短縮期間投与の妥当性を考えてみた。


# by aiharatomohiko | 2020-04-12 15:24

予防的乳房切除のメリット


BRCA1/2陽性の健常者の方が予防的乳房切除を受けることによるメリットを検討したオランダのコホート研究からの報告です。Breast Cancer Research and Treatment (2019) 177:723–733

10.3 年のフォローアップ期間に,722 / 1712名のBRCA1 (42%) 406 /1145名のBRCA2 (35%) 変異を持った方が両側乳房予防切除を受けました。

手術を受けた方により健康状態が良好な方が含まれていた可能性はあるようですが、多変量解析を行うと、BRCA1変異を持った方で全死亡が40%(95%信頼区間20-80%)、乳癌関連死亡が6%(同1-46%)に減っていた。BRCA2変異を持った方では、全死亡が45%(同15-136%)、乳癌関連死亡NA(0であったために推定できず?) との結果でした。

BRCA2変異陽性の方はBRCA1変異陽性の方よりも予後の良い乳がんの発症が多い可能性があるために、統計学的に有意といえない結果でしたが、点推定値からは生存率を改善する可能性が十分ありそうに思えます。今までは検討されていなかった(らしい)、予防的卵巣切除の有無を多変量解析のモデルに組み込んだデータですので、変異のある方へ予防的乳房手術を勧めるための基礎となるデータとなりそうです。

予防的乳房切除のメリット_f0123083_22593795.jpg




# by aiharatomohiko | 2020-02-01 23:00 | 論文

CDK4/6阻害薬で全生存期間が延長 アベマサイクリブ


術後ホルモン治療終了12か月以内もしくは一次治療に抵抗性であったホルモン陽性・HER2陰性の進行乳がんに対して、フルベストラント±アベマサイクリブを比較したMONARCH2試験でも、統計学的に有意な差を持って(HR, 0.757; 95%CI, 0.606-0.945; P =.01)、全生存期間の改善(生存期間中央値は46.7months vs 37.3 monthsと推定値で9.4か月の改善)が報告されました(JAMA Oncol. 2019 Sep 29. doi:10.1001)。


治療効果は、閉経前と閉経後のいずれでも確認され、またprimaryresistancesecondary resistanceを問わずに確認されています。サブグループ解析で顕著なheterogeneityはありませんでした。


副作用は既知のものだけであったと報告されています。国内では肺障害による死亡症例が報告されているため十分な注意が必要なことは言うまでもありませんが、二次治療では積極的に使用していくことになりそうです。


CDK4/6阻害薬で全生存期間が延長 アベマサイクリブ_f0123083_00190365.jpg


# by aiharatomohiko | 2019-10-28 00:19 | 論文

CDK4/6阻害薬でOSが延長 ribociclib

ホルモン受容体陽性HER2陰性の進行乳がんで、化学療法が1レジメン以下で進行乳がんに対するホルモン治療を受けていない672名の方を対象にして、ゴセレリン+ノンステロイダルのアロマターゼ阻害薬かタモキシフェン+リボサイクリブかプラセボを比較したMONALEESA-7試験の結果が報告されました(N Engl J Med. 2019 Jul 25;381(4):307-316.)。

ハザード比0.712 (95% CI: 0.535-0.948); P= .00973と全生存期間が30%も改善されていました。イベント数が少ないので、推定値の精度は低いものの、かなり良いデータです。生存期間の中央値はプラセボで40.9月、リボサイクリブでは到達していませんでした。この図にあるように、42か月時点での生存率は70%vs46%と圧倒的にリボサイクリブで勝っています。PFSの中央値が 23.8 vs 13.0 mos (ハザード比: 0.55; 95% CI: 0.44-0.69; P < .0001)でしたが、OSの差はちょうどこの24月くらいから開き始めています。

CDK4/6阻害薬でOSが延長 ribociclib_f0123083_22483635.jpg

気になる重篤な副作用は肺毒性で、肺塞栓が2.7%vs0.9%と比で3倍、差で2%ほど多くなっています。他に注意すべき毒性はQT延長で12.5 vs 6.2%でした。

決定的な結果ではありますが、日本ではリボサイクリブは販売されません。他のCDK4/6阻害薬も少なくともPFSについては同等の結果なので、OS延長も十分期待できます。なので、読み替えて使用する方向で検討することになりそうです。


CDK4/6阻害薬でOSが延長 ribociclib_f0123083_22485228.jpg


# by aiharatomohiko | 2019-10-06 22:50 | 論文