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乳腺外科医が乳がんの最新情報をブログで紹介しています
by aiharatomohiko
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GEICAM9906:FEC vs FEC-wPTX


本日はお世話になっていた方からリクエストがありましたので、GEICAM

9906について考察します。

この試験は、リンパ節転移陽性乳がんを対象として、FEC90x6と

FEC90x4-wPTX100x8(FEC-P)を比較した試験です。

微妙に両アームの治療期間がずれているのと、FECとwPTXの

治療期間が異なっているのが、なんだか美しくないデザインです。

PACS01の方が対象的になっていて、美しいですね。


解析対象は登録されたうちの1246名の患者さんで、5年無病生存率は、

FEC-P 78.5% に対して、FEC 72.1% (絶対差 6.4%, 95%信頼区間

1.6% - 11.2%; P = .006)と、相対比で23%の再発リスク低下を

得ています(95%信頼区間 0.62 - 0.95; P = .022)。

全生存率も相対比で22%の改善を得ています。(95%信頼区間 0.57

- 1.06; P = .110).

どのような症例に対して、wPTXが有用かという事に関して研究がなされ

ましたが、HER2やホルモン受容体との関係は見出されませんでした。


最近発表されたタキサンを使用した術後療法のメタ解析の結果で示され

たのと同程度の再発リスク低減効果が、本試験でも示されました。

この試験にはいろいろなポイントが有ると思いますが、

個人的にPACS01で示された、アンスラサイクリンの6サイクルよりも、

タキサンを追加して同期間治療を行った方が良いということが確認

されたことを重要視したいと思います。

これらの結果を演繹すると、ACx3-wPTX9の方がACx6よりも良いと

言え、であれば当然ACx4よりも良いと考えられるわけです。

そうすれば、ACx4-wPTX12をしなくても良くなるので、臨床的には

楽になるのですが、頭の中で作ったレジメが現実の世界でワークする

とは限らないため、ACx3-wPTX9を使うわけにはいかないのが辛い

ところです。FECx3-wPTXx9で試験をしてくれていたら、もっと応用

が利く解釈が出来たかもしれないですが。。。

wPTXの量ですが、E1199ではwPTX80でDTX100と同等の効果が

得られているので、wPTX100までは必要ないかもしれません。

ただ、wPTX80でデータがあるのは12サイクルです。

余談ですが、DTXはTACの試験では75が使用されていたので、

100まで必要ないかもしれません。
# by aiharatomohiko | 2008-07-04 21:47 | 論文

栃木県乳腺研究会で講演してきました


薬物療法のランダム化比較試験を例にとり、”エビデンスにだまされない

臨床試験のデータの読み方”という題で、栃木県の研究会で講演をさせ

て頂きました。


内容は、ファルモの術後療法における用量設定の問題点、術前化学療法

におけるpCRをエンドポイントとした臨床試験の問題点、中間解析結果の

解釈の問題点、ATAC100のデータプレゼンにおける問題点に関して

でした。内容について参加された先生方にお聞きしたところ、

”私もだまされてる”といった意見を複数頂き、おおむね好評の様でした

が、疑問点や改善点がありましたら、またご意見よろしくお願いします。

フロアから頂いたご質問のあとディスカッションになった時に、骨密度

一つとるのにも大病院では大変な手間がかかることなど、解決困難な

ことがあるのに今更ながら気がつきました。大病院ならではの良い点も

もちろんあるわけですが。

当日栃木県がんセンターの認定看護師の方の講演もあり、

印象に残った内容は、認定を取ってからも当初は病棟配属となり、

しばらくして部署横断的な活動ができるようになったという

ところで、どこかの病院でも聞いたようなお話でした。

医師よりも看護師の方が人事の面では硬直的なところがあるようで、

これも大病院ならではの弊害といえます。

幸い当院ではリエゾン専門看護師による全患者さんへの介入が出来て

いるため、ケアとキュアを高いレベルで追求できていると現時点では考え

ています。(医師の方に念のためにご説明しますと、専門と認定の違いは、

2年の修士課程と半年研修の違いです。)

きめの細かいフォローは、小さい病院ならではのメリットといえます。


栃木県乳腺研究会で講演してきました_f0123083_23385185.jpg

# by aiharatomohiko | 2008-06-29 23:24 | 日常

閉経前:タモキシフェン vs アナストロゾール


プライマリーエンドポイントである無病生存率は、タモキシフェンと

アナストロゾールのカプランマイヤーカーブがベタベタに引っついて

いて、離れそうにありません。無再発生存率にしても同じことです。

それだけではなく、イベント数では、アナストロゾールの方が多い。

つまり、悪い。(イベント数 TAM:ANA DFS 72:65 RFS 72:64)

これでは、時間が経ってイベント数が増えても、アナストロゾールが

勝つことはなさそうです。


さらに驚いたことには、全生存率では危うく有意差をもってアナストロ

ゾールが負けかけているではありませんか。

イベント数、つまり死亡者数では、アナストロゾールがタモキシフェンの約2倍

に上っているのは、驚きを通り越してちょっと信じられないくらいです。

(イベント数 TAM:ANA 27:15 p=0.065)

死亡については発表で具体的には触れられていないので、詳細は

わかりません。


今ヨーロッパなどで行われている閉経前の人を対象にしたアロマターゼ

阻害薬の臨床試験がこの結果をもって早期に取りやめになると言う事はない

と思いますが、自分の患者さんにはお勧めしたくなくなるようなデータ

ではあります。


かえすがえす惜しいのは、この臨床試験での治療期間が3年であるという

ところですね。もし5年だったなら、かなり確定的なデータになっていた

と思います。


このデータでは製薬メーカーが販促本を作って営業に来ることはないので、

注意しておかないとしばらく経つと目に触れることさえなくなるかも

しれませんね。
# by aiharatomohiko | 2008-06-26 22:08 | 論文

ゾレドロン酸(ゾメタ)は再発を予防する その2


閉経前乳がんに対して、化学閉経薬に加えて、タモキシフェン vs

アナストロゾールとゾメタありなしを比較する、ABCSG12試験の

続報です。

本試験は、術前化学療法以外の化学療法が入っていない、

治療期間が3年である、といった弱い点はあるものの、

1999-2006年まで7年掛けて1800名あまりの参加者を得て

やり遂げられた素晴らしい試験であることは間違いありません。

そういえば、ARNO/ABCSGの結果が発表された時のことです。

Jakeszに化学療法の割合は?と聞いたときに”None”と言われた

ことを思い出しました。えーっと思いましたが、オーストリアでは

化学療法をあまりしないのでしょうかね?

対象症例をみて感じたのは、T1が75%とかなり予後が良い

人たちが対象となっていること、術前化学療法が約5%と少ないことです。

n0は約2/3でした。

TAM vs ANAのカプランマイヤーを見て、驚きました。(続く)
# by aiharatomohiko | 2008-06-26 00:15 | 論文

第二回市民フォーラム無事終了しました


140名あまりの参加者をお迎えして、6/21金曜日に第二回の市民フォーラム

が無事終了しました。

大阪府立成人病センターの小山先生による乳がん検診の

講演で知ったのですが、箕面市は乳がん検診による早期がんの発見率が

80%と、大阪府の平均である40%強と比べると高いのですね。

たまたまかもしれませんが、やはり勇気を出して乳がん検診に来て

頂きたいと思いました。

私は、乳がんのホルモン治療について、現状と最新知見のお話を

させていただきました。

パネルディスカッションでは、あけぼの大阪の中田さんと早川看護師も

パネリストとして参加して頂いて、いろいろな疑問に対して様々な角度から

検討できたと思います。

最後になりましたが、うまく司会して頂いて全体をまとめて下さった

牧野エミさん、ありがとうございました。
# by aiharatomohiko | 2008-06-23 12:54 | お知らせ

ゾレドロン酸(ゾメタ)は再発を予防する


閉経前早期乳がん1800例を対象として、LHRHアゴニスト+タモキシフェン

vs LHRHアゴニスト+アナストロゾール ±ゾメタの投与の効果をみる試験

の結果が、ASCOで発表されました。


アナストロゾールの効果がタモキシフェンを上回らなかったことに驚き

ましたが、ゾメタの投与でイベントが36%減少しており、骨転移だけでなく

局所再発、骨以外の他臓器転移、対側乳がんも減少していたのにも

驚きました。


半年毎に一本ゾメタを使用するだけでハーセプチンに近い再発抑制

効果が得られるというのは、とても費用対効果が高いですね。

副作用はほとんどないでしょうし。

この結果を追試する結果がしばらくうちにいくつか発表されることに

なりそうです。投与間隔・投与期間などにも注意が必要です。


早晩NEJMにでも論文が発表されるのではないかと思いますので、

詳細は改めて。
# by aiharatomohiko | 2008-06-03 16:00 | 論文

第2回市民フォーラムのお知らせ


第2回市民フォーラムのお知らせです。

6/21に箕面駅前の箕面文化交流センターで行います。

大阪府立成人病センターの小山先生が検診について、

私がホルモン療法の最新情報についてのお話をさせて頂きます。

その後パネルディスカッションの2部構成となっています。

参加ご希望の方は、forum1st@yahoo.co.jpまでメールをお願いします。


第2回市民フォーラムのお知らせ_f0123083_23494185.jpg

# by aiharatomohiko | 2008-05-13 23:49 | お知らせ

アロマターゼ阻害薬とビスフォスフォネート


タモキシフェンと比較して、アロマターゼ阻害薬を服用することにより

骨塩量が減少し、骨折が増えることが良く知られています。

ビスフォスフォネートは、破骨細胞を傷害することにより、骨吸収を妨げます。

その結果骨塩量が増加し、閉経後女性における骨粗鬆症による骨折を減少

させることが分かっています。そのため、アロマターゼ阻害薬を処方する

場合に骨粗鬆症があればビスフォスフォネートを同時に処方することは、

ガイドラインにもあるように正しいことだと思います。


一方で、ビスフォスフォネートには、服用方法が面倒である、食道潰瘍など

の副作用がある、といった問題点があります。また、非常にまれですが、

抜歯などをした場合に下顎骨の壊死を引き起こすことも知られています。


ビスフォスフォネートの最適な投与期間は決まっていないようですが、

臨床試験では3年や5年の投与期間が設定されているようです。

アレンドロネート5年と10年の比較試験(JAMA Vol. 296 No. 24,

December 27, 2006)では、5年でプラセボに変更した群で骨塩量の

減少が見られるものの、非椎体骨折骨折には差がありませんでした(19%)。

臨床的な椎体骨折はアレンドロネートを継続した群の方が少なかった

(5.3% vs 2.4%)のですが、形態的な椎体骨折はアレンドロネートで

やや少なかったものの有意差はありませんでした(11.3% vs 9.8%)。

骨折が特に心配される場合には、ビスフォスフォネートの治療を5年間を

超えて継続するが、それ以外は5年間で良いということでしょうか。


ただ、長期間のビスフォスフォネート投与により骨の正常な代謝を妨げる

ことが、骨自体に悪い影響が無いかという懸念があります。

実際、最近気になるデータも出てきています。ビスフォスフォネートの長期間

投与により、非典型的な小さな衝撃による大腿骨骨折が引き起こされる

危険性があるというのです(n engl j med 358;12:1304 march 20, 2008)。

前向きの臨床試験で検討されたデータではなく、JAMAのデータから

考えると現時点で心配する程ではないとは思いますが、注意を払う必要は

ありそうです。


最近閉経前女性に対して、術後療法としてLHRHIとアロマターゼ阻害薬を

投与する臨床試験が行われており、その際にビスフォスフォネートを併用

している試験もあります。閉経前の人は乳がん治療終了後の期間がかなり

長くなるので、ビスフォスフォネートが骨に与える長期的な影響がより

重要視されるようになるでしょう。
# by aiharatomohiko | 2008-05-04 10:28 | 医療

E1199の論文が発表されました


E1199の論文が発表されました。N Engl J Med 2008;358:1663-71.

術後薬物療法におけるAC後のタキソール vs タキソテールと

3週投与 vs 1週投与を比較するECOG1199試験のデータが、

New England Journal of Medicineに発表されました。

内容は大方ASCOの発表通りで、以前このBLOGに書いた通りです。

そして、データの発表自体も、もともとの研究仮説であるタキソール vs

タキソテール、毎週投与 vs 3週毎投与の比較ではなく、

AC-タキソール(3週毎)を標準治療とし、AC-タキソール(毎週)、

AC-タキソテール(3週毎)、AC-タキソテール(毎週)の各群を比較したデータの

検討がメインとなっています。

この場合の統計学的な解析は、多重比較により有意水準が甘くなるため、

ボンフェローニの方法に基づいて、有意水準がp=0.017に下げられています。

(p=0.05/3 = 0.017)。これにより、タイプIエラーは0.05に保たれています。

最終結果だけを記すと、無病生存期間に関しては、AC-タキソール(3週毎)と

比較して、AC-タキソール(毎週)のオッズ比は1.27、 AC-タキソテール(3週毎)

のオッズ比は1.23とともに有意水準。AC-タキソテール(毎週)

はほぼ同等でした。

全生存期間に関しては、AC-タキソール(毎週)のオッズ比のみ有意に

良好で、1.32でした。

全体的に見るとAC-タキソール(毎週)が最も良いデータとなっています。

AC-タキソテール(3週毎)が無病生存期間で良好な結果でしたが、

全生存期間が改善されなかった理由はわかりません。

また、AC-タキソール(毎週)がAC-タキソテール(3週毎)と比べて

良いかどうかはわかりません。

しかしながら、当院としては、投与量の関係から、AC-タキソール(毎週)

を現在標準として使用しています。

付け加えるデータとしては、タキソール(毎週)の効果は、ホルモン受容体

とHER2の発現状況に影響されないということです。

余談ですが、ブリストルのMRの方がお出でになられた際に、

“サブセット解析ですから”と言われていましたが、サブセット解析とは

違います。4アームの試験としてとらえるのが、正解だと思います。
# by aiharatomohiko | 2008-04-27 10:41 | 論文

FM宝塚出演!


昨年はFM箕面に乳がん検診の啓発の取材を受けましたが、本日は

すみれブレストケアの皆様とともにFM宝塚の生放送に出ました。

すみれブレストケアは、私がお世話になっている谷村外科胃腸科の

谷村雅一先生がお始めになられた乳がん検診啓発を目的とした組織です。

乳がん検診の出張講座もなさっています。

遠いところでなければ、宝塚に限らず出向いて頂けるとの事なので、

関心のある方は一度連絡されてはいかがでしょうか。

すみれブレストケアホームページ

FM宝塚出演!_f0123083_22445450.jpg


奥のカッコいい人はパーソナリティの方です(笑)。
# by aiharatomohiko | 2008-04-16 22:44 | 日常

タモキシフェン服用中の子宮体がんのスクリーニング


タモキシフェンを服用している方から、“子宮体がんの検査はしなくてよい

のですか?”と聞かれることが多くなってきました。そういえば、

ホームページには術後のフォローアップに関することを記載していない

ので、今後充実させていく必要がありますね。しばしお待ちを。


取り急ぎガイドライン的にはどうなっているのかを以下に記します。

American Cancer Society(ACS)のガイドラインによると、


通常リスク:子宮体がんのスクリーニングは、推奨できない。

ランダム化試験のデータが無いためであるが、試験がなされないのは

不正出血で早期にみつかることが多いからとされています。


中等度(増大)リスク:子宮体がんのスクリーニングは、推奨できない。

タモキシフェン服用をふくむ子宮体がんのリスクが増大している人に

とっても、通常リスクの人と同様に、不正出血で早期にみつかることが多い

ため、通常リスクと同様の推奨となっています。


高リスク:HNPCCという遺伝性大腸がんの遺伝子に異常のある人だけが

当てはまります。35才までに毎年の子宮内膜生検による健診をはじめるよう

勧められています。

出典:American Cancer Society guidelines on testing for early
endometrial cancer detection-update 2001.
In: American Cancer Society guidelines for the early detection
of cancer. American Cancer Society - Disease Specific Society.
2001. 6 pages. NGC:001975


ASCOの2006年の乳がん術後フォローアップに関するガイドライン

では、“Regular gynecologic follow-up is recommended for all women.

Patients who receive tamoxifen therapy are at increased risk for

developing endometrial cancer and should be advised to report any

vaginal bleeding to their physicians.”とあります。

Regular gynecologic follow-upが具体的に何を意味しているのか

分かりませんでしたが、後に続く文章の意味を考えると、ACSと同様に

不正出血に気をつけなさい、そして不正出血があれば検査を受けなさい

という意味だと思います。


日本産科婦人科学会では、以前に子宮体がん検診を勧めるガイドラインを

出していたようですが、現在のものは確認できませんでした。


以上のガイドラインに則って、現在はタモキシフェンを服用している方に対する

定期的な子宮体がん検診はお勧めしていません。

結構痛い検査のようですし。


もちろん、医学的なメリットが明らかでないことを理解されたうえで、ご本人の

希望で子宮体がん検診をお受けになられることは、全く問題がありません。


今後タモキシフェンを服用する期間が5年を超えてくるようになると、少々話し

が変わってくるかもしれませんが、これは今後の課題とさせて下さい。
# by aiharatomohiko | 2008-03-30 10:36 | 医療

FDA 転移性乳がんへのアバスチン適応認可


FDAが転移性乳がんへのアバスチンの適応を認可しました。

AVADOのデータに目新しいものがなかっただけに意外でした。

全生存期間では有意に良好ではなかったが、QOLが改善されたのが、

その理由であるような報道もありますが、データがパブリッシュされないと

何ともいえません。

Advocacy groupにも賛否両論があるようですが、

"Genentech wins; patients lose,"というのは、強烈ですね。

まとまった記事は、以下です。

http://online.wsj.com/article/SB120368879321485741.html?mod=sphere_ts&mod=sphere_wd
# by aiharatomohiko | 2008-02-28 21:41 | 医療

アバスチン続き、AVADO study速報


転移再発乳がんの一次治療でアバスチンとタキソテールを併用する

AVADO studyの結果が発表され、無増悪生存期間で併用群が

優れていたとジェネンテックから発表がありました。

正式には学会発表(EBCCかASCO?)を見ないとわかりませんが、

全生存期間のデータは発表されていないようです。

FDAでは転移性乳がんにアバスチンは認可されていないのですが、

このニュースから考えると状況に変化はなさそうです。
# by aiharatomohiko | 2008-02-14 07:40 | 論文

アバスチン、結果はpositiveだが…その2


試験の結果からベバシツマブが転移性乳癌で保険適応を取ることが

出来るのか。また、もし適応が取れたとして、実際に使うのかというところが

大きなポイントになります。

個人的には全生存率が改善していないため、保険適応が取れたとしても

使用する気にはなりません。患者さんにとって、単に抗がん剤を使用している

期間が延びるだけだからです。

しかも、通常の化学療法の費用に加えて1回約20~30万円、

月にすると約40~60万円という相当高い医療費が追加されますし。


イギリスでは転移性大腸癌ですら高価すぎるため保険適応を取れなかった

と言うこの薬。全生存率が改善されないのでは、高い薬剤費に見合う効果が

あるとはいえないと思います。

アバスチンの使用が生存に寄与するサブセットを見つけ出すことが出来れば

別ですが、いくらなんでも今の状況で厚生省の認可が下りてバカスカ

使用されるという事態にはならないでしょう。

ところで、製薬メーカーは厚生省に保険適応の申請を出すのでしょうか。

出すのでしょうね。

個人的には、術後療法での結果に期待といったところです。
# by aiharatomohiko | 2008-02-11 00:31 | 論文

アバスチン、結果はpositiveだが… その1


九州がんセンターのY先生、お待たせしました。アップします。

たまには感想送って下さい。

オホン。さて、722名の転移性乳がんを対象として、パクリタキセルと

パクリタキセル+ベバシツマブ(商品名:アバスチン)をファーストラインで

比較した第Ⅲ相試験の結果がNEJMに発表されました

(N Engl J Med 2007;357:2666-76.)。

プライマリーエンドポイントである無増悪生存期間は、中央値で11.8ヶ月 vs.

5.9ヶ月 (ハザード比 0.60; P<0.001)と併用群で有意にかつ相当程度に改善

していました。カプランマイヤーもきれいなデータですね。

全生存期間は、併用群で良い傾向が見られたものの、残念ながら両群で

有意な差はありませんでした(中央値 26.7 vs. 25.2ヶ月; ハザード比, 0.88;

P=0.16)。2005年のASCOで発表された中間解析では、全生存期間でも

併用群が勝ちそうな感じでした。

カプランマイヤーも何となく勝ちそうに見えますが、最終的には有意では

なかったということで、残念な結果でした。

重篤な(グレード3/4)副作用は、高血圧 (14.8% vs. 0.0%, P<0.001)と

感染(9.3% vs. 2.9%, P<0.001) が、併用群で多く見られました。


カペシタビンとの併用では、無増悪生存期間も全生存期間も勝てなかった

ベバシツマブでしたが(奏効率のみ勝った)、パクリタキセルとの併用では

プライマリーエンドポイントである無増悪生存期間できれいに勝ちました。

併用する薬剤が違ったから、結果が違ったのでしょうか?

論文のdisucussionにも書かれているように、カペシタビンとの併用試験では、

試験の対象がアンスラサイクリンとタキサンを既に使用した人だったため、

勝てなかったのだと推察します。

ファーストラインで試験を行えば、カペシタビンとベバシツマブの併用でも、

今回のパクリタキセルの併用と同様な結果が得られた可能性は十分ある

でしょう。

アバスチン、結果はpositiveだが… その1_f0123083_085940.jpg

N Engl J Med 2007;357:2666-76より引用。
# by aiharatomohiko | 2008-02-11 00:06 | 論文

30thサンアントニオ乳癌シンポジウム-Oncotype Dx-


Oncotype Dxという検査があります。


リンパ節転移陰性のホルモン感受性乳がんで、タモキシフェンを服用する

患者さんが対象です。検査により再発リスクがスコア化され、リスクが低い

人に化学療法を省くために使用されます。アメリカではFDAの認可をうけて

おり、ガイドラインでも推奨されています。日常臨床でも使用されるように

なっているようです。


今回のサンアントニオでは、Dr.Albainによりリンパ節転移陽性ホルモン

感受性乳がんを対象にしたOncotype Dxの有用性を検討した結果が発表

されました。その結果は、再発高リスクと中リスクでは、タモキシフェンに

対する化学療法の追加効果が見られたものの、再発低リスクではタモキシ

フェン単独とタモキシフェン+化学療法の無再発生存率が同じであった

という結果でした。


しかしながら、母集団としたINT0100の約40%しか検討されていないこと、

症例数が低いため信頼区間が広く、低リスクでの化学療法の追加効果が

見逃されている可能性に注意が必要です。この結果を実臨床に適用すると

するならば、再発スコアが低い人には化学療法が無駄なので省くことになる

のですが、低リスクでも10年DFSは60%なので、実際に化学療法を省くこと

ができるのか、難しいですね。

現時点では興味深い結果ですが、データの精度が低く、再現性を確かめる

必要があります。
30thサンアントニオ乳癌シンポジウム-Oncotype Dx-_f0123083_21361064.gif


この発表よりも面白かったのが、Oncotype Dxを開発したGenomic

Healthという会社のランチョンというか、プロモーションです。

まず色々な症例が提示されて、治療方針を会場の参加者に聞き、

その後にOncotype Dxの再発スコアが提示されて、改めて治療方針を

聞き直すというものです。一般に再発リスクとして用いられている指標と

Oncotype Dxの再発リスクが一致しない症例では、Oncotype Dxの

結果で治療方針を変更する人が多いこと、またアメリカ人のphysician

でもできれば化学療法を避けたいと思っている人も多いということを知り

ました。確かに、1cmの腫瘍でも再発危険率が50%と言われれば、

化学療法をしようと思いますね。Oncotype Dxの日本人でのデータもある

はずなので、また調べてみたいと思います。

ただ、この検査は保険が効かず45万円もします。


乳がんの手術料の1.5倍以上ですね。

日本の場合技術料がアメリカと比較して安すぎるというのはありますけど、

ちょっとね。
# by aiharatomohiko | 2008-01-03 17:53 | 論文

30thサンアントニオ乳癌シンポジウム-症状緩和-


Plenary lectureで、MayoのDr.Loprinziが症状緩和について

の話をしていました。


タモキシフェンなどのホルモン剤によるほてりはしばしば問題になります

が、なかなか良い解決策がありません。

パキシル(パロキセチン)という選択的セロトニン取り込み阻害薬が有用

であるとの報告がありますが、この薬剤はタモキシフェンと同時に服用する

と活性化物質であるエンドキシフェンの血中濃度を下げるために、タモキシ

フェンの効果を低下させる危険性が指摘されています。

それに対して、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬である、

Vanlafaxineはそういった副作用が無く、ほてりの発現率を下げることが

示されていましたが、現在日本で発売されていません。

ガバペンチンという抗てんかん薬を服用することで、ほてりを半分に改善

できるという話がありました。これも適応外使用になりますが、2005年の

Lancetにも服用4週間時点でプラセボで21%、ガバペンチン1日900 mgで

49%のほてりのスコア改善が見られたという報告があります。


他に問題となるがん関連の疲労感については、運動が最も良く、

薬物ではアメリカジンセン1~2g服用で25%、プラセボで10%に疲労感の

改善が見られたとの報告があります。


タキソールなどでおこる末梢神経障害に対しては、ガバペンチンは効果が

無く、ビタミンE 内服により改善が得られることの報告がありました。

論文を調べてみると、アセチルLカルニチンも効果があるようで、日本では

サプリメントとして売っているようです。
# by aiharatomohiko | 2007-12-24 21:25 | 論文

-ATAC 100months-その2


気を取り直して、ATAC 100monthsの報告から良かったところを

拾い上げてみましょう。


まずは、骨折率が5年以降ではTAM群とANA群で変わらなかった

、です。


ビスフォスフォネートの使用の有無は、影響していないのでしょうか?

発表者は学会発表の時につっ込まれて、即答できなかったのですが、

論文には、ビスフォスフォネートの使用率がアナストロゾール群で10%

タモキシフェン群で7%と記載があります。

ほとんどの人は使用していないようなので、アロマターゼ阻害薬にとって

いいデータです。


また、time to recurrenceのデータではありますが、5年を越えた後でも

タモキシフェンよりも再発率の改善が続いており、carryover効果

が認められそうだ
ということも良いデータです。


そして、今回の論文では死亡のデータを正直に詳しく出しているのが

評価できます。このデータから、全死亡は、タモキシフェンもアナストロゾール

も同じであること、再発後死亡はアナストロゾールのほうが1%少ないが

乳癌に関連しない死亡は反対にアナストロゾールのほうが1%多い

ということです。論文では、乳癌に関連しない死亡がアナストロゾールで

多い理由を"probably due to chance"と楽観的に言っていますが、

レトロゾールでも同じ傾向があるので、まだデータを追いかける必要が

あるでしょう。


主な懸念は、タモキシフェンと比較してアナストロゾールによる再発率の

改善がほとんど見込めない様な再発リスクの低い患者さんにアナストロ

ゾールを使用した場合には、タモキシフェンを使用する場合と比べて

乳癌に関連しない死亡率が1%増える分、アナストロゾールのほうが

生存率が悪くなる可能性があるということです。


ということは、DCISにアナストロゾールを使用するのは、どうなんで

しょうか。また、NSABPで行っていたアロマターゼ阻害薬を使用した

乳癌の化学予防の試験が中止されたのも、このような毒性が懸念された

ためかもしれません。


最後に、2次癌の発生率は両者とも同じなのに、発生する癌の種類が

異なり、さらにアナストロゾールで2次癌による死亡率が高くなっている

ことも気になります。
# by aiharatomohiko | 2007-12-19 22:30 | 論文

30thサンアントニオ乳癌シンポジウム-ATAC 100months-


ATACの100ヶ月のデータが発表されました。

何千人にもなるデータを10年近くにわたって継続して収集し続

けるのは非常に大変なことで、頭が下がります。


学会ではITT解析は発表されず、ホルモン受容体陽性症例だけ

でしたが、再発リスクの低減がハザード比で0.76と以前と比べて

良くなっていました。


ところが、同時にLANCET ONCOLOGYに発表された論文を見て

驚きました。

というのは、無再発生存率のハザード比がITTで0.90(0.82-0.99)、

ホルモン受容体陽性では0.85(0.76-0.94)と、学会発表よりも低かっ

たからです。


よくよくデータを見てみると、学会で発表されていたのは、私の記憶が

正しければ、プライマリーエンドポイントである無再発生存率ではなく

セカンダリーエンドポイントのtime to recurrenceだったようなのですね。

イベントの取り方が違うので、そのハザード比が0.76と無再発生存率と

比較してかなり良いのです。

そのため、違和感があったと思われます。


もしそうであれば、学会発表には数字を良く見せるための情報操作

が入っており、論文ではそんなことが出来ないので正直なデータ

になっているということになります。


AZ社のプレスリリースを見てみると、”Overall, women in the ATAC

trial taking anastrozole were 24% less likely to have their

cancer come back, compared with those taking tamoxifen”

とあります。


あー、やっぱりね、といった感じです。。。

もちろんうそではありませんが、プライマリーエンドポイントよりも、

数字の良かったセカンダリーエンドポイントを強調するのは

ちょっとやりすぎでは?と思います。

この後のプロモーションもこの数字を使ってするのでしょうかねえ?


センシティブな問題なので、後で裏をとってから文章を変更する

ことになるかもしれませんが、うーん。

フォローアップに関して、せっかく感心した後なんですが、、、
# by aiharatomohiko | 2007-12-16 20:44 | 医療

30thサンアントニオ乳癌シンポジウム-ATLAS-


サンアントニオ乳癌シンポジウムに参加してきました。

個人的に今年のハイライトと思っているのは、タモキシフェンの5年と

10年を比較するATLAS試験の中間解析の発表です。

この試験には、1996-2005年にわたって日本を含む世界38カ国

で11500人の患者さんが参加されました。

試験が始まったのが昔であったのと参加国の関係があり、

ER陽性が59%で後は不明ということでした。


観察期間の中央値4.2年で、コンプライアンスは、タモキシフェン5年

中止群の1%未満が別の薬剤に変更していること、タモキシフェン

10年群のうち83%が服用継続していることが示されました。

さて、効果の方ですが、再発のハザード比が5-9年で0.88、

10-14年で0.77と服用によりさらに再発が減少することが

示されました。


副作用についての報告は残念ながらありませんでした。


この結果をうけてタモキシフェンの服用期間を全ての人で直ちに

10年に延長することはないでしょうが、再発リスクの高い人

には最終結果が出るまで十分な注意をしながら投与継続する

ことを選択肢に入れても良いのではないでしょうか。
# by aiharatomohiko | 2007-12-16 20:01 | 医療