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乳腺外科医が乳がんの最新情報をブログで紹介しています
by aiharatomohiko
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ホルモン治療の影響を周囲が理解することの難しさ


ホルモン治療は、抗がん剤治療と比較すると副作用が軽いとみなされて

います。もちろん、髪が抜けたりとか吐き気が強いといった、誰が

見ても分かるような副作用はあまりありません。

しかしながら、ホルモン治療には副作用が全く無い訳ではないどころか、

人によっては日常生活に大きな影響を与えます。


悪いことには、ホルモン治療の副作用は、周囲からは分かりにくいもの

です。治療期間が5年以上という長期に渡るため、しばらくはケア

してくれていたご家族も時間が経つに連れて、ご家族はそう思い込みたい

こともあってだと思いますが、”もう治ったんじゃないか”という態度で

接することも少なくないようです。

ご本人は副作用でしんどい上に再発の恐れを抱えたままの状態でいる

のにもかかわらず、です。


どうやったらご家族に分かって頂けるのか、しばらく思案していました。


”私はこんなにしんどいのに!”といって頂くのが直接的なのですが、

なかなかそうは言えない方のために、武田薬品のご協力で小冊子を

作りました。

そっと食卓の上に置いて見てください。

きっと、“こんなことくらいわかってるよ。”といった顔で読んで

くれることでしょう。

そして、治療のしんどさを再認識してもらえれば良いですね。


ブログにはpdfはアップできないようですので、ホームページに近日中に

アップする予定です。一度ご覧になって下さい。

お役に立ちそうであれば、冊子を受付の前に置いていますので、

お持ち帰り下さい。

他院に通院されている方は、担当医に取り寄せて頂くよう頼んでみて

頂ければ、国内の方は入手できると思います。
ホルモン治療の影響を周囲が理解することの難しさ_f0123083_22182443.jpg

# by aiharatomohiko | 2009-02-01 22:18 | お知らせ

サンアントニオ2008 ZO-FAST


アロマターゼ阻害薬を投与することで骨塩量の低下や骨折率が増加

することが知られていますが、これを軽減する目的でゾレドロン酸

(ゾメタ)が使用されたのがZO-FAST試験です。


この試験では、レトロゾール投与開始と同時にゾメタを開始する群

(IMMEDIATE群)と骨塩量が減少してからゾメタを投与する群

(DELAYED群)の比較が行われました。

投与開始一年後の腰椎の骨塩量を一次評価項目としています。

ゾメタの投与は半年毎に5年間です。


投与開始一年後の腰椎の骨塩量はIMMEDIATE群が良好で、

この効果は3年まで持ち越されましたが、3年の骨折率では両群間に

有意な差を認めませんでした(5.0% vs 6.0%)。

驚いたことには、DELAYED群と比較してIMMEDIATE群で再発が

40%も減少したことです。イベント数がまだ少ないので断定的な事は

いえませんが、局所再発が約1/5に、骨転移が半数に、しかし実質臓器

である肺や肝転移では減少なし、という結果でした。


ABCSG12試験と同様に、本試験でもゾメタの投与が再発を抑制する

という結果がでました。しかも40%も。やはりハーセプチンより偉いのか、

ゾメタは。。。


ちまたの噂に上っていたAZURE試験の結果は発表されませんでしたが、

これで有意な結果がでれば、術後の再発予防にゾメタを使用する方向に

一気に傾きそうです。
# by aiharatomohiko | 2009-01-31 21:50 | 学会

サンアントニオ2008 TEAM試験 追加


TEAM試験で治療を開始しなかった人を抜いた解析のハザード比が

0.83と書きましたが、この解析では途中で治療を中止もしくは変更

した人を“打ち切り”にしていると、TEAMの日本での研究代表者である

自治医大の穂積先生と話をしている際に教えて頂きました。

このことは、発表のスライドには、書かれてはいませんでしたが。


ということはこの数字はお化粧がされていると考えて良いので、

実際のハザード比は0.83-0.89の間くらいにあるのでしょうね。

ただ、他のアロマターゼ阻害薬とは大きくは変わらないということに

変わりはありません。
# by aiharatomohiko | 2009-01-30 22:12 | 学会

サンアントニオ2008 N-SAS BC03


ひとりひとりに合わせたテーラーメード医療の時代といいますが、

現実には日本人と欧米人といった民族間差があるのかないのか

といった検証すらなされず、欧米で行われたランダム化比較試験の

データをそのまま日本人に適応している場合がいまだに良く見られます。

アロマターゼ阻害薬はまさにその典型といえましょう。


例えば、タモキシフェンを活性化する体内の酵素CYP2D6の遺伝子型

の違いが治療効果に影響を与える可能性が指摘されており、

欧米人と日本人で遺伝子型の分布が異なることが知られています。

タモキシフェンの効果がもし欧米人と日本人で異なるのであれば、

ひいてはタモキシフェンとアロマターゼ阻害薬との効果の差が異なります。

また、エストロゲン受容体やアロマターゼ自体にも遺伝子型に民族間差

があり、現在ではわかっていない治療効果や副作用の民族間差が

存在する可能性がないとは誰も言えないのです。

実際タモキシフェン5年終了後のレトロゾールの追加効果を見た

MA17試験では、白人以外のminorityではレトロゾールの追加効果が

確認されなかった旨の報告がなされています。

こういった議論は、ほとんどの人が知らないのか知らないふりをしている

のかは置いておいて、日常臨床の場でも学会の場でもほとんど聞く事は

ありません。


もちろん、日本人のデータがない場合は欧米人でのデータを適応する

以外ないのですが、今回のサンアントニオでN-SAS BC03の代表として、

やっと日本人でのアロマターゼ阻害薬の有用性のデータを報告すること

が出来ました。

N-SAS BC03は、2002年から 2005年までの間に登録された706名の

1-4年タモキシフェンを服用されている閉経後乳がんの方をそのまま

タモキシフェンを服用するかアナストロゾールに切り換えるかという試験です。

アナストロゾールのハザード比は無病再発率で0.69 (95 %信頼区間、

0.42 - 1.14; P=0.14)、無再発生存率で0.54 (95 %信頼区間、0.29 - 1.02;

P=0.06)と有意差こそつかなかったものの、他の試験とほぼ同等の再発

抑制効果を認めました。全生存率はイベントがわずかであったこともあり、

差を認めませんでした。

副作用に関しては、ほてりなどはタモキシフェンで多く、関節痛がアナスト

ロゾールで多かったものの、骨折は欧米のデータとは反対にタモキシフェン

に多く見られました。この原因は分かりませんが、欧米人ほど骨折が見られ

ないということは、アナストロゾールにとって悪いことではありません。

また、血栓症の発症がほとんど見られないといった、欧米人と日本人の

副作用に差があることが確認されました。

結果が出たのは遅かったとはいえ、また結果だけを見れば欧米での試験と

ほぼ同一ではありますが、単一の試験で物が言えるアジア人で唯一の

アロマターゼ阻害薬のデータです。

試験に参加された方々に、厚く御礼申し上げますとともに、

ご報告申し上げます。
# by aiharatomohiko | 2009-01-29 22:07 | 学会

サンアントニオ2008 BIG1-98試験up date


タモキシフェンとレトロゾールの比較を行ったBIG1-98試験の

76ヶ月のup dateのデータも発表されました。この試験でも

タモキシフェン群の25%が途中でレトロゾールに切り換えられた

ため、ITTと切り換え時に打ち切りという二つの解析が行われました。


ITT でのハザード比は0.88、打ち切りにすると0.84、真実の

値はこの間くらいに存在すると考えてよいので、ATACとほぼ

同じくらいか。

全生存率では、ITT でのハザード比は0.87、打ち切りにすると

0.81で、統計学的にも有意差が出そうなくらいです。

ここがいつまで待ってもタモキシフェンとアナストロゾールで

全生存率に差が出そうにないATACと大きく違うところです。

ただ、アナストロゾールとレトロゾールのどちらが真に優れている

のかを結論付けるためには、直接比較のデータを待つ必要があります。


これに続いて、レトロゾール対タモキシフェン→レトロゾールと、

レトロゾール対レトロゾール→タモキシフェンという2種類の

切り換え方法との比較という興味深い結果が発表されました。

71ヶ月時点のデータで、プロトコールによる最終解析との事でした。

とても期待した発表でしたが、カプランマイヤーがベタベタにくっつい

ていることや、多重比較検定による第一種過誤率の増大を避ける

ために信頼区間を99%に取っているためか、イベント数が足りず

群間差が出ないという残念な結果に終わりました。

5年無病生存率は、レトロゾール単独の87.9%に対してレトロゾール

→タモキシフェンで87.6%、タモキシフェン→レトロゾールで86.2%でした。

フォレストプロットをみるとタモキシフェン→レトロゾール<

レトロゾール単独=レトロゾール→タモキシフェンと言いたくなりそうです。

厳密に言うとレトロゾールが2年入っていればどれも大差ないといわざる

を得ないのですが、やはり累積イベント発生率曲線を見ると、

タモキシフェン→レトロゾール<レトロゾール単独=レトロゾール→

タモキシフェンという印象が強くなります。


TEAM試験の最終結果が出てメタ解析をすることで、

タモキシフェン→アロマターゼ阻害薬対アロマターゼ阻害薬の優劣に

ついては、決着がつくかもしれません。

しかしながら、アロマターゼ阻害薬→タモキシフェン対アロマターゼ阻害薬

の優劣は、迷宮入りになりそうです。
# by aiharatomohiko | 2009-01-19 23:18 | 学会

サンアントニオ2008 アロマターゼ阻害薬:いまだ残る疑問


タモキシフェン vs アロマターゼ阻害薬のメタ解析の発表がありました。

この発表にはTEAMとN-SAS BC03の結果は含まれていません。

タモキシフェン5年対アロマターゼ阻害薬5年の解析では、無病生存率

はアロマターゼ阻害薬で改善される。

改善効果は0-1年が最も大きいが、5年を超えても持続する。

全生存率の改善は見られず、乳がん死亡も非乳がん死亡もほぼ同等、

という結果でした。


タモキシフェン5年対タモキシフェンからアロマターゼ阻害薬切り換え5年

の解析では、無病生存率はアロマターゼ阻害薬切り換えで改善される。

改善効果は0-2年が最も大きく、5年を超えると効果はあまり見られない。

全生存率は20%ほど改善される。乳がん死亡は20%ほど、非乳がん

死亡も改善される、という結果でした。


どちらかというと、切り換えの方が良さそうに見えますが、本当でしょうか?


切り換え試験で無病生存率の改善効果が大きく見えるのは、試験の対象

が無治療の人とタモキシフェンを2~3年服用した人というように異なるから、

ということで説明できます。

ただ、なぜ切り換えで全生存率の改善がみられるのに、当初からアロマターゼ

阻害薬を投与することでは改善されないのか、ということの合理的な説明が

私にはできません。

ATACでは9年になってもアロマターゼ阻害薬の生存曲線が改善される

兆しが見えません。非乳がん死亡が多いのでアロマターゼ阻害薬の乳がん

死亡改善効果がマスクされているという議論があります。

しかし、この理屈ではアロマターゼ阻害薬の投与方法による全生存率の

違いを説明できません。なぜならば、試験に参加された方の年齢はどの試験

も60-64才くらいで揃っているからです。ATACやBIG1-98で高齢者が多い

のであれば納得できますが、対象が異なるというわけではなさそうです。


しかも、後述しますがBIG1-98の切り換えと当初からのアロマターゼ阻害薬

の投与の比較のデータが今回発表され、直接比較ではどちらかというと当初

からアロマターゼ阻害薬を投与する方が良さそうです。


早期の再発を抑制するという観点から考えると、当初からアロマターゼ阻害薬

を投与する方が優れているとする方が合理的に思えます。しかしながら、

この方法ではタモキシフェンと比較して全生存率の改善が見られず、

切り換えでは全生存率の改善が見られる。うーん。。。


何か見落としがあるのでしょうか?
# by aiharatomohiko | 2009-01-18 17:04 | 学会

サンアントニオ2008 TEAM試験


サンアントニオで、閉経後ホルモン感受性早期乳がんの術後療法としての

タモキシフェンとエキセメスタンの2.75年の治療を比較したTEAM試験

の結果が発表されました。

日本からの184人を含む全世界から9000人以上の登録があり、全例が

ホルモン受容体陽性です。当初はタモキシフェンとエキセメスタンの5年

投与の比較でしたが、他の試験の結果が出てきたため、標準アームの

タモキシフェン5年がタモキシフェンからエキセメスタンの順次投与に

変更された経緯があります。

その過程では喧々諤々の議論があり、結局どこかの国が国ごと試験から

抜け落ちたりしました。今回の解析は、単剤同士での比較が出来る2.75年

で全例のデータを打ち切っての解析となります。


有効性の解析は、局所再発・新規乳がん発症・非乳がん関連死亡は

両群で同様でした。遠隔転移は、エキセメスタン群で20%ほど減少して

いました。無病生存期間は、ハザード比で0.89(95%CI 0.77-1.03 p=0.12)

と11%ほどの改善が見られました。他のアロマターゼ阻害薬よりも治療効果

がやや弱く見えます。

ただし、本解析は各群50例ほど割り付けられた治療を開始していない人を

含んだ、完全なITT解析です。これらのデータを抜いた解析では、

ハザード比で0.83(95%CI 0.71-0.97 p=0.02)となり、他のアロマターゼ

阻害薬に見劣りしないデータになります。

私はこの解析の方が実際の治療効果に近いのではないかと思います。

50人といえば全体のわずか1%ですが、試験全体の結果に結構大きな

インパクトを与えるものだという印象を受けました。

タモキシフェン群がエキセメスタンに切り替えられたため、これ以上の

期間解析しても単剤同士でのデータは出てこないので、

これが最終のデータです。本解析で有意差が出なかったのですが、

エキセメスタンがタモキシフェンより勝らないというわけではありません。

IES試験の結果を鑑みると、p値<0.05にこだわる有意差原理主義に

おちいる必要はないでしょう。

現在エキセメスタンとアナストロゾールの直接比較試験が行われている

最中ですので、この結果がでれば優劣はより明らかになるでしょうが、

それまではどのアロマターゼ阻害薬もほぼ同等として扱って良いと思います。


他には、エキセメスタン群で20%、タモキシフェン群で30%の試験治療中止

が見られたことで、これが本試験の結果に影響している可能性が

言及されていました。


副作用は他のアロマターゼ阻害薬と同様で、ほてりなどの症状はエキセメ

スタンの方が少なく、関節痛や骨粗鬆症はエキセメスタンに多かったものの、

骨折のエキセメスタン群での増加は見られませんでした。個人的には懸念

していたアロマターゼ阻害薬で非乳がん死亡が増えるという現象が見られ

なかったので、安心しました。


それはそうと、近々タモキシフェン-エキセメスタンの順次投与とエキセメ

スタン単剤の比較のデータが出てくるはずなので、こちらの方にも注目です。
# by aiharatomohiko | 2009-01-18 11:36 | 学会

乳癌学会近畿地方会で講演してきました


12/6に滋賀医大の阿部先生が当番世話人をされた乳癌学会近畿地方会

の教育講演3「薬物治療・放射線治療」で、術前薬物療法の講演を

して来ました。

当日は360名ほどの参加が有ったようで、盛会でした。

プログラムも充実しており、勉強になった一日でした。

乳癌学会近畿地方会で講演してきました_f0123083_10383553.jpg

# by aiharatomohiko | 2008-12-07 10:37 | 日常

pCRを目的として術前化学療法を行うことは適切か?その3


もう一つ根本的な問題点として、pCR率をどの程度改善すれば、

どれくらい生存率が改善されるのかがわかっていない事も、

pCRをエンドポイントとして臨床試験をする上での大きな障害

なのだと思います。

つまり、“この新規レジメはpCR率が50%なので、優れています。”

といっても、この新規レジメが例えばACよりも生存率のハザード比が

何%良いのか、皆目見当がつかないわけです。

(誰か知っている人がいれば、メール下さい。)

B27の論文のdiscussionには、“Extrapolating from the B-18 survival

curves, doubling of the pCR rate from 13% to 26% could be

predicted to increase the number of surviving patients by

approximately 2%.“という文が根拠の提示なしにのっていますが、

これが本当であれば、5%の改善を示すには、30%くらいのpCR率の

上乗せが必要になりそうです(だいたい)。

もしこれが本当なら、ハーセプチンクラスの薬剤が必要ですね。


つまり、pCRは代用エンドポイントとして不十分であり、

pCRをエンドポイントとして、新しい有効なレジメを見つけるために

臨床試験をするのは臨床的な有用性が低い、

という結論になります。


反対に、たいしてpCR率が改善されないのであれば、そのレジメは

生存率をほとんど改善しないので捨てるべきだ、という風には

使えるかもしれませんが。

ただ、pCR率が標準レジメと同じでも生存率を

改善するような新規レジメがある可能性も否定できません。

そう考えると、ますますpCRをエンドポイントとして臨床試験を

することに意義を見出すのは難しく思えます。


もちろん、迅速に有用な新規レジメを見つけることができるに

越したことはありません。

しかしながら、現時点では、臨床的に意味のあるレジメを開発するためには、

適切な対象を設定して、新規レジメがどの程度無再発生存率や

全生存率を改善するかをランダム化試験で検討するという、

従来からの手法が最善といえるのではないでしょうか。

これに、効果予測因子を探索する系を乗っけることができれば、

なお良いですが。

従来からの方法でも症例数を増やしてパワーを上げる事で、

結果が出るまでの期間を短くすることはできます。

これはこれで倫理的な問題点が全く無いとはいえないのですが、

その点については、また。
# by aiharatomohiko | 2008-11-19 23:45 | 医療

pCRを目的として術前化学療法を行うことは適切か?その2


新規レジメを開発する際に、pCR率をエンドポイント(主要評価項目)

としてよく臨床試験が行われます(いました?)。

私もそういった臨床試験に参加していた時期はあります。

しかしながら、pCRをエンドポイントとして臨床試験を行うことは、

本当に意義があることなのでしょうか?

NSABP B27試験の結果から考えてみたいと思います。


この試験は、術前化学療法として、ACとAC-DTXを比較した試験です。

(ややこしいので、もう1アームのAC-手術―DTXについては

ここでは触れません。)

pCR率は、AC単独の13%からACにDTXを追加することにより

26%となりました。相対値で100%、絶対値でも13%という著しい

改善です。

それに対して無再発生存率はわずかに相対値で10%、絶対値では3%

という改善にとどまりました。

さらには、全生存率は相対値で3%、絶対値では0%の改善です。

この試験においては、pCR率が改善するほどには、生存率が改善しなかった

ということが言えます。

pCRにこだわる意味があまり無いことを示した臨床試験の結果だったと

思います。
# by aiharatomohiko | 2008-11-16 23:48 | 医療

pCRを目的として術前化学療法を行うことは適切か?その1


術前に化学療法を行うことによる予後の改善はみられなかったのですが、

病理学的完全寛解(pCR)が予後予測因子、また生体内抗がん剤感受性

試験として非常に興味深い現象であることがわかり、臨床面のみならず

研究面でも注目されています。

その様な中で、pCRが患者さんにとってどのような臨床的意義を持つのか、

考えてみました。


まず、pCRになった場合には、ならなかった場合と比較して、どのくらい

予後が良いのかを確認してみました。

B18試験の結果からは、乳房のがんがpCRになった場合、5年無再発

生存率は85.7%でした。10年無再発生存率はもう少し下がることを考えると、

術前化学療法でpCRになった場合でも、患者さんに“pCRになったので、

乳がんが治りますよ。“と言えるほどのインパクトのある数字とはいえない

のがわかります。

えっ?pCRになったので治るって説明されている?うーん。。。。

85%治ります、といわれても高いのか低いのか、何ともいえないでしょうね。


一方、pCRにならなかった場合の5年無再発生存率は76.9%。

差があると言っても絶対値では10%切る位ですので、pCRにならなかった

と言って悲観するほどでもありません。

pCRの予後予測因子としてのパワーは、過大評価されていると

個人的には考えます。

そのため、pCRが得られるかどうかを観察することのみを目的として、

術前化学療法を行う意義は小さく、患者さんにとってメリットは無い

と考えます。


それでは、pCRを目的として臨床試験を行うことは、意義があること

なんでしょうか?
# by aiharatomohiko | 2008-10-29 20:53 | 医療

術前化学療法は患者さんの役に立っているのか?番外


今日研究会に行ってきました。思いがけず術前化学療法の話題になって

いましたが、気になったのは、”術前化学療法だから、pCRをねらって

うんぬん”という様な言葉が聞かれたことです。

現状pCRになろうがなるまいが、だからなんなんっていう意味しかないはず

なのですが、今回は次回以降の前フリとします。
# by aiharatomohiko | 2008-10-18 22:52 | 医療

術前化学療法は患者さんの役に立っているのか?その4


術前化学療法の問題点として、術前組織診の限られた標本でしか

原発巣の病理学的な検討を行えないこと、もともとのリンパ節転移の

状況が正確には把握できないこと、腫瘍が縮小し非触知となった場合には

乳腺部分切除の際に切除範囲を決定しにくいこと、などが挙げられます。


特に、腋窩リンパ節転移の状況(=転移再発のリスク判断)が分からずに、

レジメを決めなければならないのが、第一の問題と考えます。

一時は術前化学療法といえば、ステージに関わらずアンスラサイクリン

+タキサンを使用したり、標準治療とかけ離れたレジメが使用されることが

ありました。私も当時はそれが妥当と思っていましたので、以前はその様な

臨床試験に参加したことがあります。

しかし、術後に行う化学療法を術前に行っても生存率は同じ、という所から

始まった治療なのに、術後治療として使用しないようなレジメが術前化学療法

に使用されることは本来ありえないはず、と現在では考えるに至りました。

具体的に言えば、腋窩リンパ節転移が無い場合には、タキサンの追加効果

が絶対値で見ると低いため術後療法では頻用しないのに、術前化学療法だと

腋窩リンパ節転移の状況に関係なく使用されるのはなぜか?

過剰治療なのではないか、ということです。


この点をよく理解している施設では、いち早くセンチネルリンパ節生検を行って

から治療方針を決定するようになりました。

腋窩リンパ節転移がある場合には、アンスラサイクリン+タキサンを術前に

行っても良いという判断がこれでできる事になります。

手間を惜しまなければ、大変スマートなやり方だと思います。


もう一つは、乳房切除後の放射線治療の適応についてです。

乳房切除した場合でも、リンパ節転移が4個以上の場合には術後放射線

治療を行うことが標準となっています。

しかし、術前化学療法により手術時に腋窩リンパ節転移の個数が減少する

可能性があるので、もともとの転移個数がわからなくなり、適切に放射線

治療の適応を決定することが困難になるのではないかという懸念も、

問題点の一つであると考えます。
# by aiharatomohiko | 2008-10-15 23:20 | 医療

術前化学療法は患者さんの役に立っているのか?その3


結論としては、患者さんに対する術前化学療法の実質的なメリットは、

術前化学療法を行うことにより、乳房温存率が上昇するということ、

これだけなのではないでしょうか。


ということは、当初より乳房温存療法が可能であるような場合には、

術前化学療法が術後化学療法に比べて優れている点はほとんどないの

ではないでしょうか。もちろん、劣っているともいえませんが。

術前化学療法で3cmの腫瘍が2cmになった場合には、より切除範囲が

小さくなり、質の高い温存手術ができるという考え方はあります。

ただ、質の高い温存手術と言うのは、切除範囲もさることながら腫瘍の

できる部位に左右されるところが大きいので、3cm前後の腫瘍に積極的に

術前化学療法を勧めるのが良いかどうかは難しいところです。


また、術前化学療法を行っても、温存手術が可能にならないような場合も、

あまり良い適応では無いと考えます。例えば、乳頭乳輪直下に腫瘍が広く

およぶ場合です。また、石灰化が広範囲に広がっているタイプの乳がんは、

乳管内進展部分が化学療法で消えないことが懸念されます。

余談になりますが、先日乳癌学会でお会いした先生によれば、

HER2陽性乳がんに対してHerceptinとFE75C→Taxaneを併用した

場合には、石灰化のある範囲もがん細胞が消えている場合が結構ある

との事でした。


ただ、この場合も石灰化のある範囲は手術で切除されるというお話で

あったので、やはり広がりがあまりに大きい場合には美容的な事を

考えると難しいのかもしれません。


それでは、術前化学療法の問題点とは何でしょうか。
# by aiharatomohiko | 2008-10-14 23:33 | 医療

術前化学療法は患者さんの役に立っているのか?その2


重要な知見とは、病理学的完全寛解(pCR:本試験では乳房の浸潤がん

部分が消えることで、非浸潤がんの残存を含む。また、この試験では

腋窩リンパ節の転移状況は勘案されない。)が13%にみられ、浸潤がんが

残存した症例よりも予後が良いこと(5年無再発生存率:85.7%, vs 76.9%)、

術前化学療法により腋窩リンパ節転移が相対値で28%減少すること

(術前化学療法41%vs 術後化学療法57%)、乳房温存率が改善される

(術前67% vs 術後60%、5cm以上の乳がんに限れば22% vs 8%)

ことです。


つまり、化学療法は術前に行っても術後に行っても生存率はかわらないが、

術前化学療法で浸潤がんが消えた場合には、消えなかった場合よりも

予後が良い事がわかりました。

これをもって患者さんに対する術前化学療法のメリットという医師もいる

けれども、“浸潤がんが消えたので、5年無再発生存率が85.7%です。

良かったですね。”といわれても、15%再発の危険性があるわけで、

完全に治ったといえるほどの数値ではないため、ビミョーですね。

本試験では5年以降にも再発が見られますし。

病理学的完全寛解になった場合に予後が良くなることを強調しすぎると、

むしろ再発した場合にショックが大きくなるだけ、メンタルヘルスにとって

マイナスなのではないかと考えます。なので、個人的にはこの点をあまり

強調して患者さんにお伝えしないようにしています。

一方、MD アンダーソンのデータでは、腋窩リンパ節転移陽性の患者さん

を対象とした術前化学療法の臨床試験で、術前化学療法でリンパ節転移

が消えれば、5年以降の再発はほとんど無いと言う事が示されていますので、

腋窩リンパ節転移の病理学的完全寛解を目安にすれば、5年無事経過した

患者さんに今後の予後が良好であると説明することができそうな気がします。

他の試験で同様なデータがあれば、教えて下さい。


腋窩リンパ節転移の28%が消えることは、もし術前化学療法後に正確に

センチネルリンパ節生検ができるのであれば、腋窩郭清を省略できるので

患者さんのメリットになります。しかしながら、腋窩リンパ節転移があって

術前化学療法を行った場合に、どの程度センチネルリンパ節生検が正確

なのかはまだまだ分かっていないと思います。

どのみち腋窩郭清を行うのであれば、これはメリットとはいえないです。


それじゃあ、術前化学療法の患者さんに対するメリットって、なんなの

でしょうか。
# by aiharatomohiko | 2008-10-04 22:10 | 医療

術前化学療法は患者さんの役に立っているのか?


乳がん治療において、薬物療法(ホルモン療法・化学療法(抗がん剤))は、

手術ではとりきることが出来ない、目に見えないような微小ながん細胞が

将来転移・再発するのを防ぐために非常に重要です。


どのような薬物療法を行うのかは、乳がんの手術を行い、病理検査により

再発の危険性や薬剤の感受性(ホルモン感受性・HER2の状況)を検討

して決めるのが一般的です。


しかしながら、手術前に化学療法を行う、すなわちより早期に目に見えない

がん細胞の広がりに対する治療を行うことで、手術後に化学療法を行う

よりも生存率を改善することができるのではないかという仮説があり、

これを検証するための臨床試験がもう20年も前に行われました。

試験の名前は、NSABP B18です。


この試験の結果明らかになったことは、化学療法を手術前に行おうと

手術後に行おうと生存率は変わらないということです。

つまり、残念ながら手術前に化学療法を行うことによって予後は改善

されなかったということで、今風に言うと研究仮説が証明されない

”Negative study”だったわけです。


しかしながら、データを詳細に検討することにより、いくつかの重要な知見が

報告されました。
# by aiharatomohiko | 2008-09-23 21:56 | 医療

ゾメタの抗腫瘍効果と顎骨壊死


先日ゾレドロネート(ゾメタ)の勉強会に参加してきました。

基礎から臨床まで幅広い知見が紹介され、大変勉強になりました。

基礎的な所では、ビスフォスフォネートの抗腫瘍効果には直接的なものと

間接的なものがあり、間接的なものとしてγδT細胞の賦活化、血管新生の

抑制、などが紹介されていました。

興味深かったのは、理由はわかりませんが、化学療法との併用では、

同時投与よりも逐次投与の方が効果が高いという話でした。

ビトロの話なので、人には直接応用できませんが、今後の展開が期待

されます。


阪大歯学部の米田先生から、臨床的に意義深いお話がありました。

抜歯が必要な時にとゾメタの休薬と再開の時期をどうすればいいのか

という内容です。

骨のリモデリングの期間から考えると、休薬は3ヵ月で再開は

2ケ月空けた方が良い、と仰っていたと記憶しています。

かなり長い(約半年)休薬期間が必要なようですが、顎骨壊死

への対応の困難さ考えると、仕方がないのかもしれません。

*以上の内容は聞き間違いなどがあるかもしれませんので、臨床応用の

際には個人の責任でご確認下さい。*
# by aiharatomohiko | 2008-09-23 21:21 | 医療

日本看護協会での講義


先日、日本看護協会の神戸研修センターで、"乳がんの治療と看護"という

研修の”乳がん治療の実際”のコマで講義をしてきました。

以前は化学療法のコースで乳がんのコマを担当しましたが、イントロが

少なくいきなり治療内容に入りすぎていたため、乳がんを専門にしていない

方にはややわかり難くかったと反省しております。

今回はイントロをわかりやすくしたつもりですが、乳がん看護に

携わっておられる看護師さんがほとんどだったためか、わりと興味深く

聞いて頂いたような印象でした。

大病院からの参加が多数でしたが、大病院では外来と入院が

ほぼ分断されており、勤務形態は入院は入院だけ、外来は外来だけ

になっています。そのため、継続した看護はまず期待できません。

患者さんがご覧になっておられるかもしれませんが、これは仕組みの

問題で、看護師は診察室にはほとんど入ってきませんので、

大病院にいって看護師があまりフォローしてくれなくても、仕方がない

と思ってください。

乳がん診療は、外来が診療の中核を担っているのですが、こんな

現状を先日受講されていたようなやる気のある看護師の方達が

満足しているのか疑問です。


幸い当院では外来から入院まで継続性を持った看護が出来ますので、

1人の患者さんを診断から治療そしてフォローアップまで継続してみて

みたいというやる気のある看護師の方を、手術件数がもう少し

増えてきたら募集しますので、ちょっと今から考えてみておいて下さい。

来年には病院も新しくなりますし、とリクルートしてみた。



日本看護協会での講義_f0123083_20583280.jpg
# by aiharatomohiko | 2008-08-13 20:57 | 日常

GEICAM 9805 n0高リスクに対するTAC vs FAC


ザンクトガレン1998基準のn0高リスク乳がんに対するTAC

(ドセタキセル,ドキソルビシン,シクロフォスファミド)の有用性を検討する

GEICAM 9805試験(n=1059)の結果が、ASCOで発表されました。

印象的ではありますが、当たり前といえば当たり前の結果で、

5年間無病生存率は、TACが91%、FACが86%(HR:0.66、

95%CI:0.46~0.94、p=0.0202)とTACの勝ちでした。

5年OSはTACが97%、FACが95%(HR:0.72、

95%CI:0.40~1.30、p=0.2677)でした。

これは、腋窩リンパ節転移陽性乳がんを対象としたBCIRG 001

でみられた、TACはFACに比して再発リスクを28%,

死亡リスクを30%有意に改善したというものとほぼ同じでした。


結果が当たり前といったのは、薬物療法の治療効果がリンパ節転

移陽性と陰性で変わる訳ではないからです。

リンパ節転移陰性症例でレジメ間の有効性に差がつきにくいのは、

n0では再発率が低くイベント数が少ないからというだけです。

直接比較のデータは無いですが、AC-wPTXと比してものすごく治療

効果が高いとは思えないこと、peg G-CSFが使用できないことから、

当院では今までどおりAC-wPTXを標準治療とします。

もちろん、リンパ節転移がなくとも再発リスクが高いと見込まれる場合にも

AC-wPTXは使用します。
# by aiharatomohiko | 2008-08-08 21:59 | 論文

aTTom試験 もう一つのタモキシフェン10年 vs 5年


先日参加させて頂いた会の中で、ASCOで発表されたタモキシフェン

10年と5年を比較したaTTom試験の中間解析結果のデータを

手に入れることが出来ました。


aTTomはATLASとペアで行われた試験で、今回の解析は8000名

あまりの登録のうち7000名ほどのデータを解析した結果です。


残念ながら再発抑制効果はATLASほどではなく、服薬コンプライアンスが

タモキシフェン10年で80%とかなり良いにもかかわらず、

乳がんの再発が10年投与群で5年終了群と比較して5%ほど

しか減っておらず、有意差もありませんでした。


安全性については、子宮体がんの発症は2倍ほどになっていました。

ただ、他の二次がんが10年投与群で少なくなっており、二次がん全体では、

どちらの群もほぼ同じという、ちょっと理由がわからないような結果

でした。子宮体がん以外の二次がんのデータはATLASでは発表されて

いなかったようですので、理由は不明です。


今まで報告のあった10年 vs 5年の結果をメタ解析した結果の

テーブルも見ることが出来、5年と比較して10年で再発のハザード比が

10%ほどの改善と言う事でしたが、追加で5年服用しようという気が

起こるほどのデータではないように感じました。


タモキシフェン5年終了後で再発リスクが高い人に対しては、閉経後の方

にはやはりアロマターゼ阻害薬をお勧めし、閉経前の人には以上の事を

ご説明した後に、続けるかどうするか検討することになると思います。


ATLASのデータを見たときには、ちょっと元気が出たものでしたが、

このデータではタモキシフェンの10年をお勧めするのはしんどい

感じです。


ただ、どちらも最終解析結果ではないので、もうしばらくデータが成熟

するのを待つ必要はあります。
# by aiharatomohiko | 2008-07-07 22:15 | 論文