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乳腺外科医が乳がんの最新情報をブログで紹介しています
by aiharatomohiko
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カテゴリ:論文( 57 )

HER2とタキソールの有用性との関係-その1-


リンパ節転移陽性乳癌の術後化学療法において、タキソールは標準治療薬

となっています。初めてタキソールの追加効果をAC vs AC-タキソールの

比較により検証したのは、CALGB9344というエポックメイキングな試験です。


この試験の中間解析の結果が発表された時から、ER陽性とER陰性では

タキソールの追加効果の大きさが異なるのではないか、と言われていました。

ただ、その後に発表されたアンスラサイクリン vs アンスラサイクリン+

タキサンを比較した試験では、ERの状況と無再発生存率の改善効果に

ついてバラツキがあったため、現時点では日常臨床においてERの状況で

タキサンを使用するかどうかを決めることは推奨されていません。

また、HER2の状況とタキソールの効果については、進行再発ではいくつかの

試験で検討されていますが、術後療法での検証はなされていません。


こういった背景から、HER2ならびにERの状況がタキソールの追加効果に

影響を与えるかどうかの解析が、CALGB9344の全3121例から無作為に

選ばれた1500例のうち組織が利用できた1322例を利用して行われ、

その結果が先月のNEJMに掲載されました。


CALGB9344試験では、アドリアシンの増量効果とタキソールの追加効果

という二つの命題を検証する2x2のファクトリアルデザインがとられていた

ため、以下の結果が得られました。


①HER2陽性乳癌に対してアドリアシンの量を60mgから90mgに上げても、

無再発生存率は改善しない。

②HER陽性乳癌とHER2陰性・ER陰性乳癌に対しては、タキソールの追加で

無再発生存率が改善するが、HER2陰性・ER陽性乳癌に対してタキソールを

追加しても、無再発生存率は改善しない。


全症例の過半数を占めるHER2陰性・ER陽性乳癌に対してタキソールを

追加する効果が無い
、ということが真実だとすると、臨床的に非常に

大きなインパクトがあります。
by aiharatomohiko | 2007-11-04 23:39 | 論文

Leuprorelin (リュープリン) versus Goserelin(ゾラデックス)


閉経前ホルモン感受性乳癌に使用できる卵巣機能抑制療法の薬剤は、

Leuprorelin (リュープリン)とGoserelin(ゾラデックス)があります。

この2剤はどちらが優れているか、どちらを使えばよいのか、

といったことを、患者さんに良く聞かれます。

リュープリン3ヵ月製剤とCMFを比較した臨床試験が論文化されたので、

ここで考察をしたいと思います。

まず、ゾラデックスは臨床試験におけるデータが豊富で、世界的にも標準

として使用されている薬剤です。

医療者にとっては、事前の調整を必要とせずにすぐに使用できるという製剤上

の利点があります。また、注射した後に針が自然と引っ込むよう設計されて

いるので、医療安全において優れています。

しかしながら、針が太いために注射は相当痛く、この点患者さんから

かなり不評です。また、現時点では1ヵ月製剤しかありません。

リュープリンは、臨床試験におけるデータがゾラデックスほど多くは

ありません。ただ、術後療法において、リュープリンの3ヶ月製剤の

無再発生存期間がCMFとほぼ同等(症例数が少ないので、同等と言い切って

良いかは疑問ですが)で、全生存期間ではCMFに勝っていた、

という臨床試験(TABLE study)の結果が最近論文化されました。

無再発生存期間が同等で全生存期間では勝っている理由をどう考察するのか

興味がありましたが、discussionでは、“理由ははっきりせず、探索的な結果

である”旨だけ記載されていました。まあ、これはしかたないですね。

さて、リュープリンは、使用前に混ぜなければならないのが

ゾラデックスと比較して面倒ですが、針が細いために注射時の痛みは軽く、

患者さんには好評です。また、1ヵ月製剤と3ヶ月製剤の両方が使用できます。

3ヶ月製剤は、薬価が2倍で効果が3倍なので1月あたりの

医療費は安くなりますが、局所反応による硬結を認めることがあります。

さて、どちらの製剤を使用すべきでしょうか。

結論から言えば、私はどちらでも良いと考えています。

その理由は、このタイプの薬剤は下垂体からのLHRHの放出をブロックし

月経を停止させ、その結果卵巣からのエストロゲンを抑制することで

抗腫瘍効果を発揮するため、薬剤の違いは効果に大きく影響しないと

考えられるからです。

世界的にはどう考えられているのでしょうか。

ヨーロッパを中心に現在行われている閉経前乳癌の臨床試験では、

リュープリンでもゾラデックスでもなく、トリプトレリンという日本未発売

の薬剤が使用されています。

これは、世界的にも“月経を止めるのが治療の目的だから、薬剤の種類は

何でもよいだろう”と考えられていることの証です。

また、1ヵ月製剤と3ヵ月製剤の違いはどうでしょうか。

臨床試験で1ヵ月製剤と3ヵ月製剤を直接比較するデータはありませんが、

リュープリンは3ヵ月製剤でも1ヶ月製剤と同様にエストロゲンのレベルが

抑えられていること、今回発表された臨床試験のデータから、どちらでも効果

は同じではないかと思います。

日常臨床では、以上のことを患者さんに説明して、薬剤を選択しています。

余談ですが、アストラゼネカ社は、“ゾラデックスは臨床試験のデータが豊富

で、リュープリンはデータが余り無い”というキャンペーンをしているようです。

これは確かにその通りで、誰も異論がないでしょう。

しかしながら、ゾラデックスの3ヵ月製剤が乳癌に適応拡大されたとしたら、

どのようなキャンペーンをするのでしょうか。

臨床試験のデータを重要視するアストラゼネカ社のことですから、

ゾラデックスの3ヵ月製剤を使用した大規模臨床試験がなされている

のでしょうね。

結果を期待して待ちたいと思います。
by aiharatomohiko | 2007-07-14 20:33 | 論文

E1199試験からの考察


AC-PTXにDFSで勝ったレジメを挙げましょう。

AC-wPTX, AC-DTX, Dose dense AC-PTX, Canadian CEF (or FEC120)

これらのなかで、どのレジメを選択するかというのは、人により異なる

とは思いますが、私が日常診療で使用したいと考えるレジメは、

AC-wPTXです。

その理由を以下に挙げます。

・Canadian CEF:最も強力かもしれないが、最も使いづらいレジメでもある。

その理由は、観察期間2.5年で、急性白血病/MDSを0.7%に認めたこと、

抗生剤予防投与でも発熱性好中球の頻度が約1/4、遅発性心毒性の恐れ

などです。観察期間が短いため、最終的にどの程度DFSが改善されるのか

を知ることができるのはまだ先ということもあります。

・Dose dense AC-PTX:G-CSFとエリスロポイエチンを投与しておけば、

早く終わるし副作用も少なく良いのかもしれないが、治療費がバカ高くなるし

日本では現実的でない。効果もAC-wPTXを大きく上回るとは考えがたい。

・AC-DTX:DTXのdoseが100mg/m2であることが使いづらい最大の

理由です。まず、100mg/m2を使用したことがないし、承認用量よりかなり多い。

発熱性好中球の頻度が約1/6、浮腫のコントロールがやっかい、

といったところでしょうか。

ただ、TACレジメではDTXのdoseが75mg/m2であることから、

75mg/m2でも効果があることが推測されます。

wPTXが使用できないときには、75mg/m2でこのレジメを使用します。

次点ですね。

AC-wPTX:末梢神経障害のリスクはやや高くなるものの、他の副作用

は軽いため、正直使い易い上に効果も高い。コストが高くなり来院回数が

多くなるのはデメリットではありますが、バランスの良いレジメと考えます。

アップデートされたE1199の結果をみて、Canadian CEFを使用する

必要がなくなったので、正直ホッとしています。

さて、皆様のチョイスはどうでしょうか?
by aiharatomohiko | 2007-07-04 22:21 | 論文

Negative or Positive? E1199 trial その3


“それはね、インタラクション(相互作用)があったというのです。”

“薬剤と投与方法の間にインタラクションがあったために、

試験全体のパワーが足らなくなったということです。”

と大橋先生はおっしゃった(ように記憶しています)。

それでは、PTX3週投与を標準アームとした4アームの試験と

考えてよいのでしょうかと尋ねると、“いいんじゃないですか。

ただし、パワーが足りないかもしれませんが。”とおっしゃいました

(ように記憶しています)。

ということで、このE1199試験の結果の正しい解釈法は、

“薬剤と投与方法の間に相互作用があったのがわかった”

ということだそうです。

そして、“PTX3週投与を標準アームとした4アームの試験と考えてよい”

ということです。

そうであれば、AC-PTXに比較して、AC-DTXがDFSで、

AC-wPTXがDFSとOSで勝った“positive study”であったという

ことがわかります。

統計学的に有意差が出ており、p値も十分に低いので、試験としての

パワーも足りていると考えてよいはずです。(医療統計家未確認)

これで、すっきりしましたね。

BMSもこの結果をふまえてadjuvantにwPTXをもっと勧めても

良いと思うのですが、毎週投与はまだ当局に申請中とのことです。

それにしても、もう何年も前に申請を出したような気がするのですが。

さて、タキサンを使用したレジメは数あるのですが、それではどのレジメを

使用するのがよいのでしょうか?
by aiharatomohiko | 2007-07-04 07:28 | 論文

Negative or Positive? E1199 trial その2


各群別のDFSの比較をみてみましょう。

PTXの3週毎投与を標準アームとすると、PTX毎週投与のハザード比は、

1.27(95% CI 1.07-1.51 p<0.006 低減の方向でみれば、

HR 0.79)と有意に良好でした。

DTX3週毎投与のハザード比は、1.23(95% CI 1.04-1.46 p=0.02

低減の方向でみれば、HR 0.81) とこちらも有意に良好でした。

DTX毎週投与は、PTXの3週毎投与と有意差はありませんでした。

全生存率は、PTX毎週投与のみがPTXの3週毎投与よりも有意に

優れており、そのハザード比は、1.32(95% CI 1.06-1.63 p=0.01 

低減の方向でみれば、HR 0.76)でした。

この結果を見ればわかるように、“PTXは毎週投与が優れており、DTXは

3週毎投与が優れていた”のです。

2x2ファクトリアルデザインの前提が崩れてしまっているのですね。

この傾向は、2005年のサンアントニオでの発表から見られていたので、

その頃から“ファクトリアルデザインの前提が成り立っていないので、

この試験の結果をどう解釈したら良いのだろう”と漠然と考えてはいました。

しかしながら、その時にはイベント数が少なく、各群間の優劣が今回ほど

はっきりしていなかったため、経過観察としていました。

今回のASCOでの上記の結果をみて、“それでは、4アームの試験と考えて

良いのではないか”という気持ちが強くなってきたので、乳癌学会の

ランチョンでプレゼンをしたスローンのメディカルオンコロジストに

“この試験は4アームと考えてよいか?”と質問をしてみたところ、

彼女からは“良いです。”という返事をもらいました。

しかしながら、医療統計家である大橋先生の御著書に“アメリカの臨床医

の方が日本の臨床医よりも統計を学習していない。”という一文が

あったような気がしたので、疑い深い私は

大橋先生ご本人に伺ってみることにしました。
by aiharatomohiko | 2007-07-01 23:19 | 論文

Negative or Positive? E1199 trial その1


術後薬物療法におけるAC後のタキソール vs タキソテールと

3週投与 vs 1週投与を比較するE1199試験のデータが、

ASCOでアップデートされました。

この試験結果は、“どのタキサンをどのスケジュールで投与すれば

よいのか”という誰もが知りたいリサーチクエスチョンを問うていた

ため、その結果を皆が待ち焦がれていた試験ですが、2005年の

サンアントニオで発表された結果がいま一つパッとしなかったため、

皆に忘れ去られかけていた試験です。

この試験のデザインは、薬剤の比較と投与スケジュールの比較検定を

同時に行う”2x2ファクトリアル・デザイン”です。

このデザインは、2つの仮説を1つの試験で検討できるので、

採用されることも多いのですが、それぞれの治療効果がパラレル

であることが前提です。

例えば、この試験に関していえば、研究仮説が成り立つためには

“どちらの薬剤も同じ投与スケジュールのほうが良いはず”

という前提がなされているのです。

もっと具体的にいうと、”タキソールの1週投与が3週投与より

良ければ、タキソテールでも同様に1週投与が3週投与より良いはず”

という前提がなされているということです。

この試験の主要評価項目は無病生存期間(DFS)で、

タキソール (PTX) vs タキソテール (DTX)、

3 週毎投与vs 毎週投与の比較において、DFS ハザード比の17.5% 減少

を86% の検出力で捉える症例数が設定されています。

結果は、(PTX) vs タキソテール (DTX)、3 週毎投与vs 毎週投与

ともにDFSに有意差がありませんでした。

もともとの研究仮説が証明されない場合には、通常”negative study”という

評価になります。

ASCOの速報にコメントを書いている、国立がんセンター東病院

化学療法科 向井先生も、“本試験はネガティブスタディーであった。”

と結論付けています。

さて、この解釈は正しいのでしょうか?
by aiharatomohiko | 2007-07-01 23:04 | 論文

ザンクトガレン・コンセンサス会議:卵巣機能抑制療法


Scientific programのなかで、印象に残るプレゼンテーションを紹介します。

まずは、Johns HopkinsのDr. Davidsonが行った発表のうち、

卵巣機能抑制療法についてのアップデートを挙げます。

中でも、化学療法を行った後に卵巣機能抑制療法を追加することの

意義について論じた部分は、非常に興味深いものでした。

いままでは、化学療法の後に閉経になった人は、ならなかった人よりも

予後がいいというような断片的なデータがありました。

そして、化学療法後に卵巣機能抑制療法を追加することの意義を検討した

複数の臨床試験が行われています。

しかしながら、単一の試験ではその有効性を示せたものはなく、複数の

臨床試験を統合したメタ解析でも同様でした。

閉経前乳癌12,000例を対象としてEBCTCGにより2006年に行われた

メタ解析では、卵巣機能抑制療法により、20年で4.2%の絶対値での

無再発生存率の改善が報告されましたが、化学療法を併用した場合には

無再発生存率の改善が見られませんでした。

このメタ解析の大きな欠点は、今日ではホルモン治療の対象とされない

ホルモン受容体陰性症例が相当の割合で含まれることです。

2006年のSan Antonio Breast Cancer Symposiumで

Dr.Cuzickが発表した、ER陽性症例に限ったLH-RHアゴニストの

メタ解析のデータ(n=9,000)には、この欠点はありません。

この報告では、無再発生存率が化学療法併用時にハザード比が0.88と

統計学的に有意に改善されていたことが特筆されます。

EBCTCGのメタ解析で証明されなかった、化学療法の後に

卵巣機能抑制を追加することの意義が証明されたわけです。

いままでは、単一試験ではその有効性が証明されなかったものの、

40才未満のサブグループ解析では、どの試験も同様に

卵巣機能抑制を追加することの有用性が示唆されていました。

サブグループ解析の限界はよく言われることですが、複数の試験で同じ

結果が報告されているときには、裏に何かが隠れていることが期待されます。

そのような理解の下で、ヨーロッパ中心に化学療法後の卵巣機能抑制

療法の有用性を検討する臨床試験が組まれています。

しかし、その結果を待たなくても、化学療法後に卵巣機能抑制を

行う根拠になるような発表でした。

個人的には、40歳未満の人には勧めたいように思います。

40代後半の人には、おそらくお勧めはしないでしょう。

40代前半の人は、悩ましいところ。月経の戻りをみて、ご本人と

相談することになるでしょう。

論文発表の時には、このあたりが少しでもわかるデータが含まれていれば

良いのですが。

それにしても、サンアントニオに出席してこの発表を聞いていたにも

かかわらず、四国がんのO先生に教えられるまでその重要性を認識できて

いなかったことは、とても大きな反省点です。
by aiharatomohiko | 2007-03-27 00:30 | 論文