HER2とタキソールの有用性との関係-考察- |
N Engl J Med 2007;357:1496-506.より引用。 このデータを詳しく見るために、Figure2における6年無再発生存率に 焦点を当ててみました。 これでわかることは、ER陰性ならHER2の状況に関わらず、 またER陽性でもHER2陽性なら、6年無再発生存率がACのみで約50%、 タキソール追加で約70%とほとんど変わらないということです。 ER陽性HER2陰性の場合だけは例外で、タキソールありでもなしでも 約70%と、タキソールの追加効果がみられなかったわけです。 言い換えると、ER/HER2の状況に関わらず、術後にAC-タキソールを投与 することで6年無再発生存率が約70%になる。ER陽性HER2陰性の症例 だけはACだけでも約70%と良いが、それ以外はACだけでは約50%である、 ということになります。 AC-PTX治療後の全サブセットの6年生存率がほぼ同じくらいだったのは、 たまたまかもしれません。 しかし、これが真実だとすると、HER2陽性乳癌の場合には、ハーセプチンを 追加することで、ハザード比で40から50%のさらなる再発抑制効果を得る ことが出来ます。 ER/PR陰性HER2陰性のいわゆるトリプルネガティブは、さらに予後を改善 する手法が今の所見当たりませんが、タキソールの追加効果がはっきりあり ますので、化学療法は有用なのでしょう。分子標的薬を含めた何らかの化学 療法剤の追加が、さらなる予後の改善に有用である可能性があります。 その一方で、ER陽性HER2陰性でタキソールの追加効果がみられないという のは、ひょっとしたらタキソールだけでなく化学療法自体が効きにくいということ かもしれません。今後化学療法が進歩していく過程で、意外に予後が改善され にくいサブセットとして残るということになるかもしれません、うーん。。。 少し混乱してきました。 各サブセットで患者背景が揃っていない恐れもある中で結果をあまり細かく 見ても意味が無いのかもしれませんが、ERとHER2でサブセットを分けた 解析が今後いくつもの臨床試験でなされてくると思います。 そうすると、この問題も少しずつ真実が見えてくるのだと思います。 それまではしばらく、うーん、とうなっているしかなさそうです。 |
by aiharatomohiko
| 2007-12-02 21:01
| 論文
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