HER2とタキソールの有用性との関係-その1- |
リンパ節転移陽性乳癌の術後化学療法において、タキソールは標準治療薬 となっています。初めてタキソールの追加効果をAC vs AC-タキソールの 比較により検証したのは、CALGB9344というエポックメイキングな試験です。 この試験の中間解析の結果が発表された時から、ER陽性とER陰性では タキソールの追加効果の大きさが異なるのではないか、と言われていました。 ただ、その後に発表されたアンスラサイクリン vs アンスラサイクリン+ タキサンを比較した試験では、ERの状況と無再発生存率の改善効果に ついてバラツキがあったため、現時点では日常臨床においてERの状況で タキサンを使用するかどうかを決めることは推奨されていません。 また、HER2の状況とタキソールの効果については、進行再発ではいくつかの 試験で検討されていますが、術後療法での検証はなされていません。 こういった背景から、HER2ならびにERの状況がタキソールの追加効果に 影響を与えるかどうかの解析が、CALGB9344の全3121例から無作為に 選ばれた1500例のうち組織が利用できた1322例を利用して行われ、 その結果が先月のNEJMに掲載されました。 CALGB9344試験では、アドリアシンの増量効果とタキソールの追加効果 という二つの命題を検証する2x2のファクトリアルデザインがとられていた ため、以下の結果が得られました。 ①HER2陽性乳癌に対してアドリアシンの量を60mgから90mgに上げても、 無再発生存率は改善しない。 ②HER陽性乳癌とHER2陰性・ER陰性乳癌に対しては、タキソールの追加で 無再発生存率が改善するが、HER2陰性・ER陽性乳癌に対してタキソールを 追加しても、無再発生存率は改善しない。 全症例の過半数を占めるHER2陰性・ER陽性乳癌に対してタキソールを 追加する効果が無い、ということが真実だとすると、臨床的に非常に 大きなインパクトがあります。 |
by aiharatomohiko
| 2007-11-04 23:39
| 論文
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