アロマターゼ阻害薬(AI)とタモキシフェン その2 AIの弱点 |
アロマターゼ阻害薬の問題点とは、主には骨と関節の問題です。 タモキシフェンと比較した臨床試験では、どの試験でもアロマターゼ阻害薬を 使用した群で全骨折率が40%強増えています。絶対値の差は患者背景に よって異なりますが、1%~3%ほどです。一方、アロマターゼ阻害薬のメリット である無再発生存率の改善は、アリミデックスとフェマーラの臨床試験では 2.5%ほどで、骨折率の増加で相殺されてしまいます。 ”再発したら命が危なくなるが、骨折は手術すれば治るだろう”というスタンス には問題があります。大腿骨頸部骨折を経験した人は、QOLが低下する ばかりでなく、その後の生存率がかなり落ちるからです。 椎骨骨折でもQOLは低下します。 ビスフォスフォネートを服用すればよいだろう、というのも安易な意見です。 というのは、ビスフォスフォネートは服用方法がやっかいなため長期の服薬 持続率はかなり低く、食道潰瘍などの重大な副作用もあるからです。 注射剤が使用できるようになれば、この問題は解決します。 しかし、ビスフォスフォネートは正常な骨の代謝を妨げることにより、骨塩量を 増やすので、ごく長期の安全性がわからないのは、いささか不安です。 最適な投与期間もわかっていません。 また、“アロマターゼ阻害薬は、通常の人と比べて骨折を増やすのではない。 タモキシフェンに骨折予防効果があるので、これと比較すると骨折が多いよう に見えるのだ”という意見がありますが、こんなことを論じてみても、 意味がありません。なぜなら、対象となる人には無治療という選択肢は無い からです。タモキシフェンと比較するのが当然です。 関節のこわばりも厄介な副作用です。 時間の経過で改善する場合がありますが、かなりな不快感となる場合も あります。消炎鎮痛剤で改善が期待できますが、仮に消炎鎮痛剤を数年間 処方しなければならないとなると、消化性潰瘍や心臓への影響も無視できなく なります。 |
by aiharatomohiko
| 2007-09-06 21:18
| 医療
|
<< アロマターゼ阻害薬とタモキシフ... | アロマターゼ阻害薬とタモキシフ... >> |