ザンクトガレン・コンセンサス会議:卵巣機能抑制療法 |
Scientific programのなかで、印象に残るプレゼンテーションを紹介します。 まずは、Johns HopkinsのDr. Davidsonが行った発表のうち、 卵巣機能抑制療法についてのアップデートを挙げます。 中でも、化学療法を行った後に卵巣機能抑制療法を追加することの 意義について論じた部分は、非常に興味深いものでした。 いままでは、化学療法の後に閉経になった人は、ならなかった人よりも 予後がいいというような断片的なデータがありました。 そして、化学療法後に卵巣機能抑制療法を追加することの意義を検討した 複数の臨床試験が行われています。 しかしながら、単一の試験ではその有効性を示せたものはなく、複数の 臨床試験を統合したメタ解析でも同様でした。 閉経前乳癌12,000例を対象としてEBCTCGにより2006年に行われた メタ解析では、卵巣機能抑制療法により、20年で4.2%の絶対値での 無再発生存率の改善が報告されましたが、化学療法を併用した場合には 無再発生存率の改善が見られませんでした。 このメタ解析の大きな欠点は、今日ではホルモン治療の対象とされない ホルモン受容体陰性症例が相当の割合で含まれることです。 2006年のSan Antonio Breast Cancer Symposiumで Dr.Cuzickが発表した、ER陽性症例に限ったLH-RHアゴニストの メタ解析のデータ(n=9,000)には、この欠点はありません。 この報告では、無再発生存率が化学療法併用時にハザード比が0.88と 統計学的に有意に改善されていたことが特筆されます。 EBCTCGのメタ解析で証明されなかった、化学療法の後に 卵巣機能抑制を追加することの意義が証明されたわけです。 いままでは、単一試験ではその有効性が証明されなかったものの、 40才未満のサブグループ解析では、どの試験も同様に 卵巣機能抑制を追加することの有用性が示唆されていました。 サブグループ解析の限界はよく言われることですが、複数の試験で同じ 結果が報告されているときには、裏に何かが隠れていることが期待されます。 そのような理解の下で、ヨーロッパ中心に化学療法後の卵巣機能抑制 療法の有用性を検討する臨床試験が組まれています。 しかし、その結果を待たなくても、化学療法後に卵巣機能抑制を 行う根拠になるような発表でした。 個人的には、40歳未満の人には勧めたいように思います。 40代後半の人には、おそらくお勧めはしないでしょう。 40代前半の人は、悩ましいところ。月経の戻りをみて、ご本人と 相談することになるでしょう。 論文発表の時には、このあたりが少しでもわかるデータが含まれていれば 良いのですが。 それにしても、サンアントニオに出席してこの発表を聞いていたにも かかわらず、四国がんのO先生に教えられるまでその重要性を認識できて いなかったことは、とても大きな反省点です。 |
by aiharatomohiko
| 2007-03-27 00:30
| 論文
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