温存術後の放射線治療省略 その3 |
RCTの結果も2023年に報告されています。N Engl J Med 2023;388:585-94. 対象;ホルモン受容体陽性、リンパ節転移陰性、T1またはT2(腫瘍の最大径が3cm以下)で、切除断端陰性であった乳房温存手術と術後補助内分泌療法を受けた65歳以上の女性の原発性乳がん。 方法;全乳房照射(40~50Gy)を受ける群と受けない群に無作為割り付け。主要エンドポイントは同側乳房再発。 結果;合計1326人の女性が登録され、658人が全乳房照射群に、668人が無照射群に割り付けられた。追跡期間中央値は9.1年。 10年の同側乳房再発累積発生率は、無照射群で9.5%(95%信頼区間[CI]、6.8~12.3)、放射線治療群で0.9%(95%CI、0.1~1.7)であった(ハザード比、10.4;95%CI、4.1~26.1;P<0.001)。 初回イベントとしての遠隔再発の10年発生率は、無照射群で1.6%(95%信頼区間、0.4~2.8)、放射線治療群で3.0%(95%信頼区間、1.4~4.5)と、放射線治療群より高くなかった。 10年全生存率は両群でほぼ同じで、無照射群で80.8%(95%信頼区間、77.2~84.3)、放射線治療群で80.7%(95%信頼区間、76.9~84.3)。 領域再発率および乳癌特異的生存率も両群間で大きな差はなかった。 考察;参加患者さんは年齢の中央値が70歳であること、HER2 statusが分からないこと、NG3、ER low、2cm超、LV侵襲はわずかに含まれているのみという事に留意する必要があるものの、ホルモン治療単独よりも放射線治療を併用する方が局所再発率は有意に下がるという結果です。放射線治療で局所再発リスクが1/10になるというのは先行研究から考えると治療効果が大きすぎるのかもしれませんが。 ホルモン治療単独で10年10%の局所再発率ならば、20年ならざっくり20%くらいになるので、この対象全例に放射線治療を省略するのは躊躇しますね。 より局所再発リスクの低い対象を探してくことが重要で、先に挙げた研究に加えて今後結果が出てくる他の研究の結果をフォローしていく必要があります。 |
by aiharatomohiko
| 2024-01-04 00:08
| 論文
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