n0高リスクに対する術後ハーセプチン投与期間その5 |
・n0高リスクHER2陽性がんの術後治療におけるtrastuzumabの6月投与
いままで紹介してきた試験にはn0とn+が含まれているため、n0高リスクHER2陽性がんに対して化学療法とtrastuzumabの1年投与を行った場合の再発リスクを見込み、PHARE/PERSEPHONE試験の考察から得られた6月投与で1年投与より7-8%程度再発が多くなるという推定を援用することで、n0高リスクHER2陽性がんの術後治療におけるtrastuzumabの6月投与の有効性を検討してみる。
これには、pT3㎝以下、pN0のHER2陽性早期乳がんに対して化学療法(パクリタキセル毎週投与12回)と トラスツズマブの1年投与を行ったAPT試験(10)のアップデートされた結果が有用である。
報告された7年DFSは全体で93.3% (95%信頼区間 90.4-96.2%)、 ホルモン受容体陽性では 94.6% (95%信頼区間 91.8-97.5%) ホルモン受容体陰性は 90.7% (95%信頼区間 84.6-97.2%)であった。PHARE/PERSEPHONE試験の結果から、trastuzumabの1年投与に対する6月投与のハザード比の推定値1.08を援用すると、概算される7年DFSの絶対値の差は、ホルモン受容体陽性でおよそ0.5%、ホルモン受容体陰性でもおよそ 0.75%ほどであり、臨床的に無視できるほどの差でしかない。
その一方で、心血管の毒性が1/2-1/3に減少する。心血管の毒性に対する医療費はもちろん、半年間のtrastuzumab投与にかかる医療費を考えると、医療経済的にも6月投与はメリットが大きい。
結論として、n0高リスクHER2陽性がんの術後治療で、trastuzumabの1年間の投与は必須とは言えない。なぜならば、投与期間を6月に短縮することで高くなる再発リスクの絶対値は1%未満と推定され、臨床的に無視できるほど小さいうえに、抗HER2療法に伴う心血管系の毒性や通院を含めた医療コストが半分以下に減少するからである。特にホルモン受容体陽性では1年投与が必要なケースはかなり限定されるであろう。 |
by aiharatomohiko
| 2020-05-26 21:24
| 医療
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