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乳腺外科医が乳がんの最新情報をブログで紹介しています
by aiharatomohiko
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n0高リスクに対する術後ハーセプチン投与期間短縮その3

trastuzumab(ハーセプチン)1年 vs 9週

trastuzumabの1年投与と9週投与を比較した試験は、ShortHER試験とSOLD試験の2本がある。

ShortHER試験(n=1,254)では、主要評価項目である無再発生存期間(以下、DFS(disease-free survival))は、 観察期間中央値6 年(イベント数200)でハザード比 1.1390%信頼区間 0.89-1.42)と、設定された非劣性マージンの1.2990%信頼区間の上限が1.42と超えたために非劣性は検証されなかったものの、推定値では13%の増悪にとどまった。心血管イベントのリスク比は0.3395%信頼区間;0.22 - 0.50P<0.0001)と軽減した。5年全生存期間のハザード比は1.07 (90%信頼区間 0.74–1.56)と、DFSとほぼ同様の傾向であった。

SOLD試験 (n=2,174)では、観察期間中央値5.2年(イベント数245)でのDFS のハザード比は1.39(両側90%信頼区間1.12-1.72)と、こちらも非劣性が検証できなかった。

SOLD試験のハザード比の推定値1.39は、ShortHER試験の1.13と比べるとかなり悪い数字だが、データを掘り下げると、差の多くは癌と関連の無い死亡(14 [1.2%] vs 5 [0.5%])や対側乳癌発症(15 [1.3%] vs 7[0.6%])など偶然のバラツキによる誤差が原因と考えられた。乳癌死亡に関連する無遠隔再発生存期間はハザード比1.24 (90% 信頼区間, 0.93-1.65)と、DFSほど悪くはなかった。心血管イベントは2% vs. 4%P=0.019週投与で半減した。全生存期間はハザード比1.36 (90% 信頼区間, 0.98-1.89)と芳しくなかったが、これは乳癌以外の死亡(24 [2.2%] vs 11 [1.0%])9週投与で偶然多くなったことの影響が大きい。

まとめると、trastuzumabの1年投与と9週投与を比較した2本の試験とも非劣性を検証できなかった。これらの試験はイベント数が200程度しかないために検出力が低く、偶然のバラツキによる誤差がデータの精度に影響を与えているであろうことを鑑みると、現時点で9週投与を推奨する根拠は弱い。


by aiharatomohiko | 2020-05-24 21:12 | 医療
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