アバスチンの乳がんへの適応にみる日米の差 |
アメリカでは2010年夏に独立委員会の評決により12-1でアバスチンの 転移乳がんへの適応取り下げが勧告され、これを受けて本年6月末にFDAが 2日間に渡る公聴会を開きました。その際に独立委員会の再評決も行われ、 6-0で取り下げを支持するという結果でした。 最終的に11/18に適応承認の取り消しが行われ、その結果が同日にHP にアップされています。取り消しの理由は、消化管穿孔などの重篤な 副作用がみられる一方で、全生存期間の改善が見られなかったため、 リスクベネフィットを考えて承認すべきでないということのようです。 新しいデータが出たおりには再承認もあり得ると読めました。 首尾一貫した態度であると感じます。 Q&Aには薬価が高いことは考慮しなかった旨も書かれていました。 http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/ucm279485.htm さて、これに先立つ本年8月1日に日本ではアメリカと逆方向である アバスチンの乳がんへの適応拡大に向けた審議が行われたようです。 その際の議事録が11/14(アメリカに比べると遅いですね。) に公開されています。 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001uiuh.html 内容を読むと、機構が適応拡大に賛成、しかしながらその理由が”本剤 の有効性を再現するような試験をデザインするのは、現状では難しい のではないか(使用したい人が多いため)”であるのには驚きました。 有効性を再確認するような試験ができないから承認ですか。 この理由であれば、たまたま良い結果が出たような薬剤はその効果が 疑問視されたとしても、追試が難しいという理由で全部承認するしかない ということになりますね。正気でしょうか。 部会長もこの意見にややなびいているようです。 委員の先生方はとても全うな意見を出されていて、まともな議論が 行われていたことは伺い知れます。 委員の先生方はどちらかというと即時の適応拡大に難色を示されて いたように読めるのですが、結局は8月25日に継続審議となり、 そこで承認されたようです。 ただ、8月25日の審議結果が未だに公開されていません。これでは、 われわれにはどういった理由で承認されたのか、承認に条件が付いた のか否かといったことは今もってわかりません。 適応拡大の是非はともかくとして、FDAの即日公開とは比べようもなく 遅く、怠慢といわれても仕方がないのではないでしょうか。 残念ですね。 私の個人的な考えを述べると、アバスチンが有効な対象があるよう には思えるものの、それがどういった患者さんであるかをわかる術 が現状ないために、FDAの決定の方を支持します。 |
by aiharatomohiko
| 2011-11-26 23:42
| 医療
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