人気ブログランキング | 話題のタグを見る
excitemusic

乳腺外科医が乳がんの最新情報をブログで紹介しています
by aiharatomohiko
ICELANDia
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
カテゴリ
以前の記事
2024年 11月
2024年 06月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 06月
2022年 04月
2022年 03月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 05月
2021年 03月
2020年 11月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 02月
2019年 10月
2019年 03月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 05月
2018年 02月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2016年 12月
2016年 09月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 03月
2016年 01月
2015年 10月
2015年 06月
2014年 12月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 02月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2001年 01月
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


無増悪期間を一次評価項目とする問題点


前回の続きです。


この試験をしてよかったことは、転移乳がんに対して無増悪期間を

一次評価項目とする問題点が改めて浮き彫りになったことでしょう。

無増悪期間はあくまで治療の主たる目的である全生存期間の代替指標

に過ぎません。無増悪期間が改善される→全生存期間が改善されるという

図式が成り立つという前提の上、有用な治療を早く評価して世に出すために

無増悪期間が一次評価項目として使用することが許容されるのです。

試験治療が一次評価項目で統計学的な有意差をもって勝ちさえすれば、

それが無条件に新しい標準治療になると考えるのはあまりに楽観的です。


無増悪期間が改善されても全生存期間が改善されないのなら、新薬により

QOLが改善される場合や新薬の副作用が少ないもしくはコストが安いなど

という場合を除いて、新規薬剤を全症例に使うのは推奨出来ません。

コストが高かったり副作用が強いのであればなおさらです。

全生存期間に改善が見られないが無増悪期間が長いだけの治療法は、

ただ単に薬が効いている(使っている)期間が長いということであり、治療者の

自己満足に過ぎない恐れがあります。

製薬会社は喜ぶでしょうけど、患者さんが本当に喜ぶでしょうか?

単に奏効率が高いという治療法(例:化学療法の同時併用療法)も、

似たようなところがあります。


しかしながら、製薬会社は新薬の有効性を速く証明して早く市販したい、

それによって投資を早く回収したいという思惑があるため(パテント期間の

問題にも起因する)、企業スポンサードの臨床試験では、より早期に決着が

つく代替エンドポイントで勝負したがります。

その結果として、イベント数が不足して真の治療効果を検討することが

出来なくなってしまい、使った方がいいのかどうかわからなくなってしまう

のは、皮肉としか言いようがありません。


もう一つの問題点として、中間解析結果で一次評価項目において新規治療薬

の有効性が証明された場合には、プラセボ群にも新薬の使用を許可する

(クロスオーバー)ことが倫理的とされる傾向にあります。

そのため、クロスオーバーが効いているために全生存期間に差が出ていない

のか、もともと全生存期間に差が無いのかが分かりにくくなってしまいます。

アバスチンの試験でもそうした事が語られているようです。


ともあれ、保守的過ぎると言われるかもしれませんが、今後は基本に

立ち返り、それが有望な治療法であればあるほど、全生存期間を

主要なエンドポイントとして臨床試験をすることが望まれます。
by aiharatomohiko | 2010-04-29 23:51 | 学会
<< それでもきっと来るアバスチン祭り サンアントニオ2009 転移乳... >>