サンアントニオ09 遺伝子発現プロファイル |
遺伝子発現プロファイル(GEP)が予後因子として有用であるデータが次々と 出てきています。また、乳癌の予後と相関する遺伝子発現プロファイルは いくつもあるので、どのGEPが優れているのか、どの遺伝子を使うのがいい のか、誰にでも有用なのか、という様な疑問がわいてきます。 “どの遺伝子を使うのがいいのか”という問いには、前回のエントリーを参照 頂いて分かるように、“使っている遺伝子自体にあまり意味はない”ということ がわかりました。 “どのGEPが優れているのか”という問いの答えは、かなり昔に出ています (N Engl J Med 355:560-9; 2006)。これは、OncotypeDx、マンマプリント、 Wound Response signatureを比較したもので、どれも予後予測力に 大差ないことが分かります。 今回のサンアントニオでは、“誰にでも有用なのか”という問いに関する答えが 発表されていました。これが今回の私の一押しの発表です。 #103 の“Limited clinical utility of prognostic gene expression profiles in Grade 3 node negative early stage breast cancer”という演題で、 ポスターは学会のHPで全部見ることが出来ます。 これは、5種類の遺伝子発現プロファイルの予後予測力を、ROC曲線により 組織グレード別に検討した研究です。 対象は、n0で薬物療法を行っていない症例です。 検討した遺伝子発現プロファイルは、GGI ・GENE70(マンマプリント)・ GENE76 ・ONCOTYPE Dx ・Wound Responseの五つです。 その結果、すべての遺伝子発現プロファイルにおいて、予後予測力はNG1で 極めてよく、NG2では落ちるものの有用といえるが、NG3では予後予測力が 低く使い物にならないことがわかります。 カプランマイヤー曲線で見ると、以下のようになりますが、こちらの方が パッと見は分かりやすいでしょうか。 現在、遺伝子発現プロファイルは化学療法を回避するための予後予測 目的に期待されています。 しかしながら、この発表によると、NG3では予後予測力が落ちるため、 低リスクに分類されても化学療法は回避すべきではないことがわかります。 むしろ、より予後の良いNG1・2の中の予後不良症例、すなわち化学療法 適応症例の拾い上げを行うことに利用するのが妥当である事がわかります。 |
by aiharatomohiko
| 2010-02-09 23:24
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