マンマプリントとOncotype |
マンマプリントとOncotypeはがんの遺伝子発現パターンを利用した 臨床検査です。術後再発リスクの判定に用いられ、”低リスク”とか ”高リスク”などという検査結果が帰ってきます。 術後再発リスクが低いと思われる人に抗がん剤を省略する目的で使用 されようとしています。 一種の科学おみくじですね。 そのマンマプリントの日本人でのデータが乳癌学会で発表されました。 内容については後述しますが、モーニングセミナーの講師の先生に私が 疑問に思っていること、マンマプリントとOncotypeの違いについてしつこく 聞いてみた内容をまとめてみました。 特にマンマプリントがFDAに認可されているのに対して、なぜOncotypeが 認可されていないのかが大きな疑問だったので、胸のつかえがおりたような 感じです。講師の先生ありがとうございました。 (注意)ただし、私は素人なので理解が大きく間違っている可能性があります。 要ご確認および乞うご指摘。 以下知ってる人は知ってる話らしいですが、私は知らなかったので目から うろこでした。 ○一般論として、Gene signature(RNA microarray)は、50遺伝子以上 ないとデータが安定しない(精度が落ちる)。 ○マンマプリントは70遺伝子あるので、この点において妥当。 ○臨床データも高リスクと低リスクで再発率にかなりはっきりとした差がある。 ○以上の理由から、マンマプリントは科学的に妥当であり信頼性が高いと みなされ、前向きの試験結果が出ていないにも関らず、FDAによって その使用が2007年に認可されている。 ○一方、Oncotypeは16遺伝子なので少なすぎる(=データの信頼性が低い もしくはばらつきが大きい恐れがあるという理解)。 ○FDAがOncotypeを認可しないのは、そのためかもしれない。 TAILORxの結果が出るまでは認可されない見込みか。 ○よってOncotypeを日常臨床に使用するのは時期尚早であると思われるが、 アメリカでは抗がん剤の使用を減らしたい生命保険会社の意向に よってOncotypeがカバーされ、同じく抗がん剤をできれば使用したく ない医師・患者の同意が得られやすくバンバン使われている(らしい)。 それでは、マンマプリントなら信頼できるのでしょうか? 以下蛇足。 ○マンマプリントはarrayの上位70遺伝子でのデータだが、上位1000までの どの70遺伝子セットをとっても、high risk とlow riskの差はほとんど同じ。 つまり、カプランマイヤーはどのセットでも同じにみえるということ。 乳癌の場合には、予後を予測するような遺伝子セットはいくつもある ○microarrayは再現性が高いというものの、複数回(5回?)アッセイを 行ってその平均値を取っているらしい。RT-PCRの際でも通常アッセイを 複数回する。 ○通常96wellの系を使用しているため、50遺伝子くらいならRT-PCRでも 行うことができる。 ○マンマプリントで低リスクと判定された人は、化学療法のベネフィット がほとんどないと思われる。 |
by aiharatomohiko
| 2009-07-04 23:42
| 学会
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