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乳腺外科医が乳がんの最新情報をブログで紹介しています
by aiharatomohiko
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記事を読んでくださる皆様へ

お知らせです。
このBLOGは備忘録的に書いているのですが、ありがたいことに記事を読んで頂いている方から時折お手紙を頂くことがあります。
治療などのお役に立てることがあるのならば幸いに思います。
ただ、個人的なポリシーで、例外なくお返事は差し控えさせて頂いております。
誠に申し訳なく思っていますが、事情ご賢察のうえ、ご理解を賜れば幸いです。
きちんと拝読しておりますので、お手紙を頂いた皆様にはこの場でお礼を申し上げます。
相原智彦

# by aiharatomohiko | 2024-02-25 22:17 | お知らせ

温存術後の放射線治療省略 その3

RCTの結果も2023年に報告されています。N Engl J Med 2023;388:585-94.

対象;ホルモン受容体陽性、リンパ節転移陰性、T1またはT2(腫瘍の最大径が3cm以下)で、切除断端陰性であった乳房温存手術と術後補助内分泌療法を受けた65歳以上の女性の原発性乳がん。

方法;全乳房照射(40~50Gy)を受ける群と受けない群に無作為割り付け。主要エンドポイントは同側乳房再発。

結果;合計1326人の女性が登録され、658人が全乳房照射群に、668人が無照射群に割り付けられた。追跡期間中央値は9.1年。

10年の同側乳房再発累積発生率は、無照射群で9.5%(95%信頼区間[CI]、6.8~12.3)、放射線治療群で0.9%(95%CI、0.1~1.7)であった(ハザード比、10.4;95%CI、4.1~26.1;P<0.001)。
初回イベントとしての遠隔再発の10年発生率は、無照射群で1.6%(95%信頼区間、0.4~2.8)、放射線治療群で3.0%(95%信頼区間、1.4~4.5)と、放射線治療群より高くなかった。
10年全生存率は両群でほぼ同じで、無照射群で80.8%(95%信頼区間、77.2~84.3)、放射線治療群で80.7%(95%信頼区間、76.9~84.3)。
領域再発率および乳癌特異的生存率も両群間で大きな差はなかった。

考察;参加患者さんは年齢の中央値が70歳であること、HER2 statusが分からないこと、NG3、ER low、2cm超、LV侵襲はわずかに含まれているのみという事に留意する必要があるものの、ホルモン治療単独よりも放射線治療を併用する方が局所再発率は有意に下がるという結果です。放射線治療で局所再発リスクが1/10になるというのは先行研究から考えると治療効果が大きすぎるのかもしれませんが。

ホルモン治療単独で10年10%の局所再発率ならば、20年ならざっくり20%くらいになるので、この対象全例に放射線治療を省略するのは躊躇しますね。

より局所再発リスクの低い対象を探してくことが重要で、先に挙げた研究に加えて今後結果が出てくる他の研究の結果をフォローしていく必要があります。


# by aiharatomohiko | 2024-01-04 00:08 | 論文

温存術後の放射線治療省略 その2

ついでは IDEA試験(J Clin Oncol 00:1-9)です。

デザイン;単アームのコホート研究で、主要評価項目は術後5年における温存乳房再発の割合。

対象;閉経後の50~69歳の女性、センチネルリンパ節生検または腋窩郭清によりpT1、pN0であった片側性原発乳癌で、手術断端は2mm以上、腫瘍はER陽性、PR陽性、HER2陰性、Oncotype DX 21遺伝子再発スコア≦18。他にZubrod performance status 0-2、HBOC遺伝子に病的変異がないなど。

結果;200人の適格患者が登録され、追跡期間が56カ月以上であった186例では5年後の全生存率および乳癌特異的生存率はいずれも100%であった。5年後の無再発生存率は99%(95%信頼区間、96~100%)であった。50~59歳および60~69歳の患者における全追跡期間中の同側乳房内再発の割合は、それぞれ3.3%(2/60)および3.6%(5/140)で、全再発イベントの粗再発率はそれぞれ5.0%(3/60)および3.6%(5/140)であった。

考察;再発の割合は低いといえるが、症例数が少ないためイベント数も少ないことや術後5年しか見ていないのでデータの精度に欠ける面は否めない。参考にはなるものの、臨床への使用に耐えうるデータといえるかはやや微妙でしょうか。


# by aiharatomohiko | 2023-12-23 22:12 | 論文

温存術後の放射線治療省略 その1

温存療法とは乳腺部分切除術に加えて放射線治療を行うことが標準ですが、再発リスクの低いケースで放射線治療を省略できないか、という研究がいくつかなされています。大規模なものは今後報告されますが、最近報告された研究を見てみました。

一つめは日本の研究です(Breast Cancer. 2023 Jan;30(1):131-138.)。WORTH 1および2の、2つの連続した前向きコホート研究の統合解析結果です。症例数は321例とそれなりの規模の研究です。

適格基準は、原発性女性乳癌患者かつ以下の通りです。
(1)触診径3cm以下、(2)腋窩郭清またはセンチネルリンパ節生検で病理学的にリンパ節転移陰性でM0、(3)術前治療を受けていない、(4)手術時50歳以上で閉経後、(5)組織学的に断端から5mm以内に腫瘍細胞がない、(6)原発癌周囲のリンパ管侵襲がない、(7)各施設でエストロゲン受容体陽性と判定、(8)確定手術後8週間以内。

結果です。
主要評価項目はIBTR(温存乳房内再発)の割合で、追跡期間中央値は94ヵ月(4-192ヵ月)でした。術後補助化学療法を受けた患者は3例のみで、5年および10年のIBTR無発症率はそれぞれ97.0%および90.5%でした。手術時の年齢とPgRは、それぞれ独立してIBTR率に影響したため、手術時年齢が65歳以上でPR陽性の136症例に絞った場合には、IBTRを認めない割合が、5年および10年でいずれも98.4%だったと報告されています。

10年で10%の再発はやや多い印象ですが、post-hoc解析により対象を絞ることで、臨床病理学的な因子だけでIBTRの低いケースを選択できる可能性が示唆された臨床へのインパクトがある素晴らしい研究だと思います。昔のコホートなので、核異型度やKi67の値が集められていないようなのが残念ではありますが、各異型度1でKi67が低い症例に限れば、もう少しIBTRの割合が低くなることが期待されます。


# by aiharatomohiko | 2023-12-22 23:42 | 論文

アテゾリズマブ関連情報のフォロー

アテゾリズマブ関連情報が2件ありました。

トリプルネガティブ乳がんに対する術前術後化学療法へのアテゾリズマブの追加。真のエンドポイントの有意な改善効果は報告されず。 
IMpassion031@ESMO BREAST 2023

・EFS;ハザード比(HR)0.76(95%CI:0.47~1.21)。PD-L1陽性(IC 1%以上)ではHR0.56(95%CI:0.26~1.20)。
・DFS;HR0.76(95%CI:0.44~1.30)。PD-L1陽性ではHR0.57(95%CI:0.23~1.43)。
・OS;HR0.56(95%CI:0.30~1.04)。PD-L1陽性では0.71(95%CI:0.26~1.91)。

トリプルネガティブ乳がんに対する術後化学療法へのアテゾリズマブの追加。iDFSを改善できず試験が早期中止。
ALEXANDRA/IMpassion030@SABCS2023

・iDFS;アテゾリズマブ群のHR1.12(95%CI:0.87~1.45、p=0.37)で、事前に規定された無益性の境界を越え、あえなく中止。
・OS;アテゾリズマブ群のHRは1.20(95%CI:0.82~1.75)。

所感は申し上げるまでもないでしょう。
当院でアテゾリズマブは使用しているかって?
術前後では保険にすら通っていませんが、まあ野暮なことは聞かないで下さいませ。


# by aiharatomohiko | 2023-12-08 22:16 | 学会