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乳腺外科医が乳がんの最新情報をブログで紹介しています
by aiharatomohiko
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術後療法でのアベマシクリブ vs S1 追加の考察

POTENT試験は、独立データモニタリング委員会による中間解析で、iDFSについて事前に設定した有効中止の基準に合致したことで、早期に試験が中止されています。早期終了の問題点としてよく知られているのは、ランダムハイ効果によって治療効果が大きめに見積もられることです。もともとの試験は早期終了されているので、多施設観察研究を別に行うという形を取り、追加解析がなされています(SABCS2022)。追加解析は、元々の解析から337人(FAS17%、主に施設との契約終了による)を除いて行われました。主要評価項目はOSとのことです。

観察期間中央値77.5カ月時点で、IDFSイベントを内分泌療法群の166人(21%)、S-1群の135人(17%)に認めました。ハザード比0.8095%信頼区間:0.64-1.01)、5IDFS推定値は、内分泌療法群が81.5%、S-1群が85.5%と4%の改善でした。死亡は、内分泌療法群が58人(7%)、S-1群が51人(6%)、ハザード比0.8995%信頼区間:0.61-1.30)でした。

症例数が減った主な理由が参加施設の減ということなので、層別化因子に施設が入っていればランダム化が損なわれている懸念は少ないかもしれません。ただ、イベント数が少ないことから、わずかなバイアスでも結果に大きな影響を与える懸念はあります。ハザード比の推定値が0.80と正規の解析(当初行われた中間解析)よりも大きくなっていることから、やはりランダムハイ効果によりS1の有効性が大きく見積もられている懸念はぬぐえない印象もあり、解釈が難しいですね。主要評価項目のOSはイベント数が少ないことから、そもそも検定しても差が出ないのではないかと思いますが、解析計画書で治療効果の見積もりがどうなっていたのか気になる所です。

一方のMonarchE試験は、事前に定められた解析計画に基づいて複数回の検定がなされ、今後も十分なイベント数を持ってOSの検定がなされる予定だと思いますので、今後は有意な差が検出される可能性はあります。

その場合には改めて治療方針を検討する必要があるかも知れません。


# by aiharatomohiko | 2023-06-25 21:15 | 医療

術後療法でのアベマシクリブ vs S1

ER陽性HER2陰性乳がんで再発リスクの高い人に対して、術後療法でアベマシクリブあるいはS1により再発リスクを減らせます。いずれを使用するべきでしょうか。


まず、効果において、アベマシクリブとS1はいずれが優れているのでしょうか。両者を直接に比較したランダム化比較試験がないので、厳密にはわかりません。次善の策として、内分泌療法単独と比較したデータでザックリと考察してみましょう。


アベマシクリブ(2年投与)は IDFSのハザード比が0.664(95%信頼区間:0.578-0.762)、観察期間中央値42.0カ月) 4IDFSは、内分泌療法群が79.4%、アベマシクリブ群が85.8%、でした。 OSのハザード比は0.92995%信頼区間:0.748-1.153、内分泌療法群で173、アベマシクリブ群で157)と有意差なし(monarchE試験)。

S11年投与)はiDFSのハザード比0.63((95%信頼区間:0.49-0.81)p0.001、観察期間中央値51カ月、イベント数は内分泌療法群で155S-1群で101)、5iDFSは、内分泌療法群が81.6%、S-1群が86.9%、でした。この試験は主要評価項目が中間解析で有意に良好だったため早期終了しており、OSが改善されるかどうかは不明です(POTENT試験)。

なお、有効中止というのは難しい問題をはらみますが、正式な解析はこの一回のみですので、このデータで考察します。

まとめると、アベマシクリブもS1も再発を30%以上減らすと見込まれるが、OSの改善は明らかでない、有効性においてほぼ同等と結論付けられます。

ついで副作用について考えましょう。アベマシクリブは下痢を含めた消化器毒性、血液毒性、重篤なものでは肺障害が問題になります。S1は消化器毒性、血液毒性、重篤なものでは肝障害、腎障害が問題になります。

治療期間は、アベマシクリブが2年、S11年です。治療費は言うまでもなくアベマシクリブが天文学的に高いです。

それでは、結論です。

アベマシクリブとS1は再発抑制効果がほぼ同等でいずれもOSの改善効果は明らかではありません。個人的な印象では、副作用マネージメントはアベマシクリブの方がS1よりも難しい場合が多い。治療期間はS1が短く、医療費も安い。

ということから、直接比較するまでもなく、個人的にS1に軍配を上げます。なお、治療効果の差がほとんどないと見込まれることから、直接比較には万単位の患者さんの協力と何十億(で済むかな、、、)という巨額の費用をかけたランダム化比較試験が必要になると思われますので、今あるデータで考えるのが現実的かなと思います。


# by aiharatomohiko | 2023-06-25 09:19 | 医療

アベマシクリブとパルボシクリブ

あまりに高価すぎてなかなか使うのも容易ではないCDK4/6阻害薬ですが、アベマシクリブとパルボシクリブの2種類が日本で使用できます。
いずれを使用するべきか、データを単純化して考えてみましょう。

進行再発;真のエンドポイントである全生存期間の統計学的に有意な改善 
アベマシクリブ〇 パルボシクリブ×  (ribociclib 〇)

術後;無再発生存期間の統計学的に有意な改善 
アベマシクリブ〇 パルボシクリブ×  (ribociclib 結果未)

いずれを優先的に使用するべきでしょうか?

副作用に耐えられそうであれば、統計学的に有意に結果が良かったアベマシクリブを優先して候補とする。
副作用でアベマシクリブが難しそうであれば、頻度論的には否定されたパルボシクリブのOS改善効果がベイズ的にはあるかもしれないと楽観的に考えてパルボシクリブを候補とする、あるいはCDK4/6を併用せずにホルモン治療単独で治療をする。
個人的にはこういったところかなと。





# by aiharatomohiko | 2022-04-12 23:17 | 医療

しぼむアテゾリズマブへの期待 その2IMPASSION131

転移性トリプルネガティブ乳がんの一次治療としてパクリタキセルにアテゾリズマブの上乗せ効果を検証するIMPASSION131の結果が報告されています(Ann Oncol. 2021Aug;32(8):994-1004.)。PD-L1発現陽性でのPFS中央値はアテゾリズマブ群で6.0カ月(95CI 5.67.4カ月)、プラセボ群では5.7カ月(95CI 5.47.2カ月)でHR 0.82(95CI0.601.12P0.20)と有意な改善は認めなかった。

また、OSも有意な改善は無かった(というかOS推定値がアテゾリズマブ群で6か月も悪い傾向。HR 1.11, 95% CI 0.76-1.64; median 22.1 months withatezolizumab-paclitaxel versus 28.3 months with placebo-paclitaxel)

nabPTXでは良い傾向にあったが有意差検定はさせてもらえず、PTXでは勝てなかったアテゾリズマブの未来は明るいと言えないかもしれません。

しぼむアテゾリズマブへの期待 その2IMPASSION131_f0123083_23135859.jpg


# by aiharatomohiko | 2022-03-05 23:14 | 論文

乳がん治療にプラチナは出番なしか

トリプルネガティブ乳がんの術前化学療法後に1cm以上の残存腫瘍があった症例を対象として、プラチナ製剤の3週毎4サイクルとカペシタビンの3週毎6サイクルを比較したEA1131試験の結果が発表されました。J Clin Oncol. 2021 Aug 10;39(23):2539-2551.


結果は以下の通りで、プラチナがカペシタビンを上回る可能性がなく、副作用も強いことから、試験が早期に中止になりました。


After median follow-up of 20 months and 120iDFS events (61% of full information) in the 308 (78%) patients with basalsubtype TNBC, the 3-year iDFS for platinum was 42% (95% CI, 30 to 53) versus49% (95% CI, 39 to 59) for capecitabine.

この他に、

TNBCの転移乳がんの一次治療で、カルボプラチンはドセタキセルに対する優越性を示せていない。

TNBCの術前化学療法のpCRの割合で、シスプラチンはパクリタキセルを上回れなかった。

という事から、現時点では乳がん治療でプラチナが有用であると思われるシチュエーションは見当たらないといえそうです。


# by aiharatomohiko | 2021-09-11 22:19 | 論文