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by aiharatomohiko
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サンアントニオ2011 ZO-FAST試験


5年フォローの結果が発表されました。

ホルモン受容体陽性閉経後乳がんでレトロゾールを投与した

症例が対象。n=1,065。

術後すぐにゾレドロン酸を投与するupfront群と骨塩量が低下

してから投与するdelayed群との比較です。

なお、delayed群では27%がゾレドロン酸の投与を受けている。

イベント数
upfront/delayed
DFS    42/62     HR0.66    p=0.0375
OS     26/36     HR0.69    p>0.05

とDFSでは改善が見られていますが、イベント数が少なく確定的と

までは言えないのではないでしょうか。

(p値だけでなくイベント数にも注目して下さい。)

ともあれ、この試験ではゾレドロン酸の再発抑制効果が、

継続して観察されています。
# by aiharatomohiko | 2011-12-12 22:33 | 学会

サンアントニオ2011 アリミデックスとフェスロデックスの併用


閉経後内分泌感受性転移乳がんの一次療法(n=707)として、

アナストロゾール(アリミデックス) vs アナストロゾール+

フルベストラント(フェスロデックス)(500㎎→250㎎)のランダム化

比較試験の結果が報告されました。


対象は術後療法としてタモキシフェンが投与された症例、もしくは

アナストロゾール終了後1年以上経過した症例(n=12のみ)、

もしくはstageIVの症例です。


アナストロゾール群はPD時にフェスロデックスへのクロスオーバーが

強く勧められたとのことです。

無増悪期間(PFS)は、13.5月vs1 5.0月でp=0.007。

全生存期間(OS)は、41.3月vs 47.7月 HR0.81(95%CI 0.65-1.00)

とフェスロデックスの併用が優れている傾向が見られました。

サブセットでは、タモキシフェンの術後療法を行った症例では有効性が低く、

そうでない症例は有効性が高いという結果でした。


この試験の結果は併用が有意に良好でしたが、以前のRCTの結果

(Berg SABCS2009)は全くのネガティブでした。

今回の試験とどうして結果が異なったのかは不明確のため、現状では

併用は積極的には勧められないのではないかと思います。

提灯記事ならば、“フェスロデックスとアリミデックスの併用で、

予後が改善”と書くのでしょうか。
# by aiharatomohiko | 2011-12-11 15:11 | 学会

サンアントニオ2011概況


今年もサンアントニオに来ています。今年は寒いです。

相変わらず会場は人で一杯です。

大きなRCTの結果がいくつも発表され、特にBOLEROIIやCLEOPATRA

といった分子標的治療の臨床試験結果がNew Englandに併せて掲載される

など、充実した内容となっています。

また、術前化学療法の早期治療効果を元に薬剤や投与サイクルを

変えることにより予後改善が得られるという画期的な試験結果や、アバスチン

の4アウト目(byW先生)の試験結果、NSASBC02の結果も報告されました。

盛り沢山な今年のサンアントニオの概況でした。
# by aiharatomohiko | 2011-12-10 06:38 | 学会

アバスチンの乳がんへの適応にみる日米の差


アメリカでは2010年夏に独立委員会の評決により12-1でアバスチンの

転移乳がんへの適応取り下げが勧告され、これを受けて本年6月末にFDAが

2日間に渡る公聴会を開きました。その際に独立委員会の再評決も行われ、

6-0で取り下げを支持するという結果でした。

最終的に11/18に適応承認の取り消しが行われ、その結果が同日にHP

にアップされています。取り消しの理由は、消化管穿孔などの重篤な

副作用がみられる一方で、全生存期間の改善が見られなかったため、

リスクベネフィットを考えて承認すべきでないということのようです。

新しいデータが出たおりには再承認もあり得ると読めました。

首尾一貫した態度であると感じます。

Q&Aには薬価が高いことは考慮しなかった旨も書かれていました。

http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/ucm279485.htm


さて、これに先立つ本年8月1日に日本ではアメリカと逆方向である

アバスチンの乳がんへの適応拡大に向けた審議が行われたようです。

その際の議事録が11/14(アメリカに比べると遅いですね。)

に公開されています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001uiuh.html

内容を読むと、機構が適応拡大に賛成、しかしながらその理由が”本剤

の有効性を再現するような試験をデザインするのは、現状では難しい

のではないか(使用したい人が多いため)”であるのには驚きました。

有効性を再確認するような試験ができないから承認ですか。

この理由であれば、たまたま良い結果が出たような薬剤はその効果が

疑問視されたとしても、追試が難しいという理由で全部承認するしかない

ということになりますね。正気でしょうか。

部会長もこの意見にややなびいているようです。

委員の先生方はとても全うな意見を出されていて、まともな議論が

行われていたことは伺い知れます。

委員の先生方はどちらかというと即時の適応拡大に難色を示されて

いたように読めるのですが、結局は8月25日に継続審議となり、

そこで承認されたようです。

ただ、8月25日の審議結果が未だに公開されていません。これでは、

われわれにはどういった理由で承認されたのか、承認に条件が付いた

のか否かといったことは今もってわかりません。

適応拡大の是非はともかくとして、FDAの即日公開とは比べようもなく

遅く、怠慢といわれても仕方がないのではないでしょうか。

残念ですね。


私の個人的な考えを述べると、アバスチンが有効な対象があるよう

には思えるものの、それがどういった患者さんであるかをわかる術

が現状ないために、FDAの決定の方を支持します。
# by aiharatomohiko | 2011-11-26 23:42 | 医療

琉球乳腺倶楽部での遺伝子発現プロファイルの話 その2


もう一つの話題は、マンマプリントやオンコタイプDXに代表される

予後予測因子としての遺伝子発現プロファイルです。

これに関して私は当初懐疑的な見方をしていました。その理由の

一つは、検査の再現性に疑問があったからです。特にオンコタイプは

パラフィン切片からRT-PCRを行うので、基礎の先生の評判が悪いこと

もあって、この結果って大丈夫かいなという気持ちがぬぐい難かったの

です。しかしながら、いろいろと論文も出てきた中で、相当昔の症例

でもアッセイが高い確率で成功していることが報告されてきたので、

この考え方は改めました。

オンコタイプについていえば、開発の過程でHER2陽性の症例が含まれ

ているのがやや残念なところです。ER陽性HER2陰性だけを対象として

系を開発すれば、うまくいけばオンコタイプよりも正確に予後予測や

化学療法の予測ができるかもしれません。


さて講演では、病理学的因子により遺伝子発現プロファイルの有用性

が左右されること、すなわち、NG3では低リスクと判定されても

再発リスクは高い。むしろNG1・2の高リスクの拾い上げに有用

であること。

オンコタイプでも、核異型度や腫瘍径といった病理学的因子が異なると

リカレンス・スコアが同じでも再発率が異なることをお話してきました。


オンコタイプなどでは細胞増殖因子関連遺伝子の発現が重要ではないか

と考えられていますが、Ki67との比較はどうでしょうか。

2010年のサンアントニオでは、Ki67が低い症例でオンコタイプが

高リスクになるケースはほとんどありませんでしたが、Ki67が高い症例

の約40%がオンコタイプで低リスクになることが発表されていました。

すなわち、Ki67だけではリスクを高く見積もる事になりそうです。

その理由は、Ki67はG1-M期で広く発現を認めるが、細胞周期に入った

細胞全てが分裂するわけではないからなのでしょう。

繰り返しになりますが、Ki67が低い症例はオンコタイプでは約6割が

低リスク、約4割が中リスクになることは、化学療法の適応を考える

上で有用な情報ではないかと思います。


f0123083_2322180.jpg

# by aiharatomohiko | 2011-11-24 23:02 | 日常

琉球乳腺倶楽部での遺伝子発現プロファイルの話

f0123083_222131.jpg



第41回琉球乳腺倶楽部で遺伝子発現プロファイルによるサブタイプ分類と

予後予測について話をしてきました。


概要を紹介します。

サブタイプ分類に用いることのできる遺伝子発現プロファイルは複数

あります。以前ブログに書いたようにある特定の個人が分類される

サブタイプは用いる方法によってかなり異なる(ある方法では

ルミナルAに分類される人が別の方法ではルミナルBやHER2などに

分類される)こと、そしてこれは近々ブログにアップしますが、

特定の方法を用いたとしても検査を行う人によってある特定の個人が

ルミナルAに分類されたりルミナルBやHER2タイプに分類されたり

するということが頻繁に起こります。一番の関心事である、ある特定

の個人をルミナルAかBかにきちんと分類することは、残念ながら

出来ません。


もしサブタイプ分類が”intrinsic”(本来備わっている,固有の,

本質的な,本源的な )なら、複数あるどの遺伝子発現プロファイル

を使っても、ある特定個人のサブタイプは一致するはずですが、実際

はそうではありません。つまり、遺伝子発現プロファイルによるサブ

タイプ分類は主観的な方法であるため、分類されたサブタイプはとても

intrinsicとはいえないのです。



乳がんをサブタイプに分類するのであれば、遺伝子発現プロファイルを

使った分類よりも、現状ならばERやHER2といった治療標的を免疫染色

することによる分類の方が実用的ではないでしょうか。

ただ免疫染色による分類でも、いわゆるルミナルAとBをきれいに分ける

ことは困難です。なぜならば、例えばKi67をマーカーとしてカットオフ値

を設けることにより分類するとしても、そもそも連続したものを恣意的に

分けることになるため、検査方法が標準化すらされていない現状で誰もが

納得するカットオフポイントを設けることはできません。

ルミナルAとBで治療方針を変えるという考えは、概念的には理解できても

個別化医療に応用することは出来なさそうです。

“この患者はルミナルBっぽいですね”というような内容のうすい議論が

これからも続くことになるのはいかがなものでしょうか。

建設的に考えるのであれば、Ki67が相当程度に低い症例と高い症例に

絞って予後や抗がん剤の感受性などを検討することは有用なのかもしれ

ませんが。
# by aiharatomohiko | 2011-11-19 22:00 | 日常

先進医療というファンタジー


世の中には先進医療というカテゴリーがあります。

名前は、”先進“ですから、とんでもなく効果の高い先進的な治療法

が出てきたかのように思えます。患者さんも新しい治療法はないか、

ということは常に気にかけておられるので、診察時にどのようなものか

と聞かれることがあります。


しかしこれは名前倒れなんですね。


このカテゴリーに入る治療法や検査法は、新しく開発されたひよっこ

の段階で、リストを見てみても標準的な治療法や検査法と比べて良いか

悪いか見当が付かないものがほとんどです

(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan02.html)。

つまり将来的に標準治療となるような優れた治療法が含まれている

可能性があるものの、しばらくすると消えているような治療法も多く

含まれていると考えるのが理性的です。


しかしながら、“先進医療”という名前からそういった事を専門家

でない人間が伺い知るのは難しいでしょう。内容を正確に表すと、

”新規実験医療“という名前になりますが、それではカッコが悪い

ということなのでしょうか。


個人的には、こういった名前をつけてよく恥ずかしくないものだと

思います。四文字熟語では、羊頭狗肉。こういった素人を騙すような

ネーミングは止めて頂きたいのですが、効果が確立されていなくても

新しければ”先進“という“ノイエス病”に取り付かれているかのようです。


患者さんには医療の詳しい内容は分かりにくいので、大きな病院で

先進医療が行われていると聞けば、それを頼りにしてしまうのは

仕方がないことです。


ただ、これに振り回されて貴重な時間を浪費させられては、

堪ったものではありません。良いものではなく良く見えるものが売れる

という法則がありますが、標準治療が現時点での最善の治療法である

ということをよく理解して、あやしい先進医療に惑わされない様にしたい

ものです。
# by aiharatomohiko | 2011-10-26 22:29 | 日常

フェソロデックスのポジショニング


もうすぐフェソロデックス(旧姓ファスロデックス)という内分泌治療剤が

発売されるので、論文を読んでみました。(JCO 28:4594-4600;2010)

エストロゲン受容体に結合して分解するという作用機所から、高い

臨床効果を期待されていました。

そもそも開発されていた250mgでは、転移乳がんでぱっとした結果

が得られなかったのですが(アナストロゾールには引き分けで、タモキシ

フェンには負けに近い引き分け)、用量依存性に効果が高くなることが

示唆されたので、500mgと250mgの比較試験が行われました。

対象は閉経後ER陽性の転移もしくは局所進行乳癌で、術後内分泌療法中

もしくは終了後一年以内に再発したケースです。

それ以外の一次療法としてタモキシフェンかアロマターゼ阻害薬の投与

がなされたケースも対象となります。

736名の患者さんが1:1のランダム化で250mgx2本もしくは

250mg1本+プラセボに割り付けられました。

結果は、無増悪期間でハザード比が0.80(95%CI 0.68-0.94)と

500mgが勝ちましたが、その中央値は6.5ヶ月と5.5ヶ月とわずか1ヶ月

の違いしかありませんでした。

この結果だけでは、なにも500mgを使わなくて250mgでもいいんじゃ

ないの?(針が太くてお尻に二本筋肉注射しなければならないため)と

考えてしまいます。

一方、全生存期間では、25.1ヶ月と22.8ヶ月で、ハザード比は0.84

(95%CI 0.69-1.03)でした。統計学的に有意ではないものの、

有望な数字にみえます。ぱっと読んだだけではイベント数がどれくらい

起こっているのか分かりませんでしたが、75%にイベントが起こった

ときにOSの2回目の解析が予定されており、それは2011年だろうと

論文に書いてありました。その結果に期待です。

サンアントニオか来年のASCOにはデータが出るのでしょう。

なお、QOLでは両者に違いはなかったとのことでした。

さて、500mgでSERMやAIにリチャレンジするのか、フェソロデックス。

当院での出番は、リチャレンジの結果が出るまでは、使いにくい剤型を

考えるとMPAの後になりそうです。
# by aiharatomohiko | 2011-10-16 21:12 | 論文

CYP2D6とTAMの話


タモキシフェンの効果とCYP2D6という遺伝子の多型が関連があるかどうか

が話題になって久しいです。日常診療でも患者さんから検査を依頼される

ことがありますが、現時点では関連性がはっきりしないので、当院では検査を

していません。

欧米人と日本人(アジア人)では遺伝子の型がずいぶん違うのですが、

どちらの人種でも関連があるという研究結果と関連が無いという研究結果が

混在しています。昨年のサンアントニオでATACとBIG1-98のサンプルを使った

研究結果が発表されて、いずれも関連なしという結果だったために、やはり

関連が無いもしくは弱いのかなと考えていたのですが、しっかりとした

デザインで前向きに検討する必要があるというのは衆目の一致する

ところです。


東大医科研と四国の乳がんを専門とする医療機関が中心となって行った研究

では関連ありという結果が出ているために、ここを中心として前向き試験を

行おうという機運が高まっています。しばらくの間現実的なデザインを模索

していましたが、大体固まってきたのと先日奥道後でミーティングが開かれた

ので部外者ながら参加させて頂きました。


そこでは大変熱い議論が繰り広げられ、詳細は明らかに出来ませんが、

前向き試験を行う方向での結論が出ました。結果がどうであれ最終的な

結論を導き出せるような臨床試験が組めそうですので、楽しみです。

皆様お世話になりました。



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当日の参加者は、前佛先生、笹先生、杉本先生、安芸先生、

山川先生、大住先生でした。皆様車で何百キロも飛ばして来られた

熱意は素晴らしいものでした。
# by aiharatomohiko | 2011-10-10 09:46 | 日常

AZURE試験の論文発表


ゾメタの再発抑制効果を検討したAZURE試験の結果が論文発表されました。

(September 25, 2011, at NEJM.org)

内容は2010年サンアントニオの結果と同じでした。

ただ、今まで行われた臨床試験の結果からは、ゾメタが有効なサブセットが

存在する可能性が否定できないため、もう一つか二つサブセットを絞った

追試験が行われることを期待したいです。

しかしながら、現実には転移乳癌でゾメタはデノスマブに負けたため、

会社が資金を出す可能性はほとんど無いのではないかとは思いますが。
# by aiharatomohiko | 2011-09-27 12:59 | 論文

乳がん学会のトピックその3-胃がんと乳がんは同じですか。。。


最後になります。術前化学療法の演題を見ていました。

Dという薬が3週ごとに40mg/m2、Tという薬が80mg/m2で

2週間というレジメで、pCRが○○%だったので、標準治療と同じ

くらいの効果ですという演題でした。

この研究自体がすばらしいとかくだらないとかいう事はさておきます。

問題はDの量です。「Dの3週ごと40mg/m2という量は、再発抑制効果

が証明されているのですか?」と質問したところ、「胃がんで効果が証明

されている量なので、これを使いました。」という返事でした。


あ然としてそれ以上質問をする気が失せたのですが、ここで問題(疑問)です。

①そもそも術前術後の化学療法の目的はなんでしょうか。

②胃がんで効果が証明されたというその効果の指標はなんでしょうか。

③その効果が乳がんの再発を防ぐという効果に翻訳できるのでしょうか。

④pCRをエンドポイントとして臨床試験をするのは、適切なのでしょうか。



万一発表された方がこのブログを見る機会があったら、患者さんのためにも

以上のことを良くお考えになって下さい。
# by aiharatomohiko | 2011-09-25 23:14 | 学会

乳がん学会のトピックその2-看護セッションから


当院から発表を行った看護セッションの発表を見ました。

局所進行乳がんの創部ケアの演題では、創部の状況に薬物療法や放射線

治療が影響を及ぼすにも関わらず、ケアの経過ばかりで肝心の治療経過

が抜け落ちているようでした。治療経過の提示なくして、看護の経過を

考える意味はあまり無いのでは?と感じました。


他には、比較的経験の浅い看護師を中心にして患者ケアを多職種で展開

することにより、看護師のスキルアップが見られたという報告がありま

したが、どうすればケアの質を上げることができるのかという視点で

研究する方が良かったのではないかと感じました。


また、患者さんの話をよく聞いたのが良かったという発表がありました。

意義がわかりにくかったので、医療者が話を聞くのと家族が話を聞くのと

どう違うのですかと質問したところ、家族には話がしにくいので医療者が

聞くことが意味があったというような返事が帰ってきた様な記憶があります。

本当に家族に話をしていないのか、そうであれば家族に話が出来るような

環境を整えることの方が重要なのではないかという疑問が湧いてきました。


総じてこういったことをしてみましたという発表が多いのだけれど、

それで結局患者さんにどういったメリットがあったのかという視点のものが

増えれば、看護研究の意義がより大きくなるのではないかと感じました。
# by aiharatomohiko | 2011-09-10 17:45 | 学会

乳がん学会のトピックその1-ラジオ波の実力


台風の中、仙台で乳がん学会がおこなわれました。

特に記憶に残った演題を紹介します。


それは、ラジオ波で乳がんを焼くというRFA法の発表です。

平均追跡期間4-5年の時点でのデータですが、乳房内再発率は2cmまで

の腫瘍で5%程度、2-3cmで10%程度、3-4cmで13-15%程度、

4-5cm(おそらく術前化学療法後か)で35%程度と、ひどい結果に

なっています。追跡漏れの患者さんを入れたら、実際の再発率はこれよりも

高くなっている可能性があります。適格基準をきっちりしている病院では、

再発も少ないというデータも紹介されていました。

RFAをきちんと臨床試験としておこなっている病院と、標準治療ではない

のにもかかわらず実地臨床として行ってしまっている病院があるようです。

時間がすべてを運んでくるといいますが、RFAを新しい進んだ治療法と

信じた患者さんは気の毒です。


学会がきちんとしたステートメントを出すべきではないでしょうか。
# by aiharatomohiko | 2011-09-07 15:46 | 学会

Iniparibの試験結果その2 ASCO2011

現時点で正解と言える解釈は無いでしょう。

ただ、この試験がおそらくFDAの認可をとるために行われた試験であろう

ことを考えると、薬剤の認可という観点からは、事前に設定した仮説を

証明できなかった=ハードルを越えることができなかったことから、

規制当局としてはネガティブであったとしか言い様がないと考えます。

つまりは、この試験単体では、乳がん治療薬として認可を受けることは

難しいのでしょう。認可という観点から言えば、事前のp値の割り振りが

0.01と0.04でなくて0.04と0.01だったら無増悪期間ではポジティブ

じゃないかなどといってみた所で始まらない話なのです。

iniparibはアバスチンと違って重篤な副作用がないようなので、

全生存期間の改善がなくても承認された可能性はあるので、製薬会社から

すれば残念だとは思いますが。


ただ、それとこの薬が乳がんに効果がないということとは同じ意味では

ありません。どのようにすればiniparibの効果が証明できるでしょうか。

この試験結果から無増悪期間が改善される可能性がありそうなので、

もう一本か二本試験を行ってみるという方法はあるでしょう。

それらの試験で有意差を持って有用という結果が出るとかメタ解析を

して有用性を確認するとかすれば良いはずです。

この試験はリクルートが簡単であったような記載がウェブにあったので、

これは困難ではないはずです。

しかしながら、製薬会社はバイオマーカーの探索でお茶を濁そうとして

います。その理由は何故なのかわかりません。


それにしても、結果が素晴らしすぎた第II相試験の結果がNEJMに

掲載され、その効果が第III相で確認できなかったわけです。

複数のがんで数多く行われたアバスチンの試験結果の論文発表で見られた

ように、結果が良すぎて眉唾なものだけがNEJMに掲載されることが

再現されたようで、やな感じですね。

ただ、そういう風にナナメに見ておかなければ、”良いデータ”に足を

すくわれるのかもしれません。


より問題なのは、この試験では標準治療群にiniparibのクロスオーバー

投与を許容しているので、iniparibが真の目的である全生存期間の改善に

貢献するかどうかが全く分からないデザインになっている点です。

クロスオーバー投与をしないと倫理的に問題があるとかないとかいう

議論はあるものの、そもそも真に効果があるかどうか、またその効果は

どれほどのものなのかが分からなくては使うべきかどうかがわかりません。

今後こういった試験デザインを取るべきかどうかを真剣に議論すべき

ではないでしょうか。
# by aiharatomohiko | 2011-09-06 00:14 | 学会

Iniparibの試験結果 ASCO2011


さて、本題に入ります。


本試験は、いわゆるトリプルネガティブの転移乳癌に対して

ゲムシタビン+カルボプラチンとゲムシタビン+カルボプラチン+iniparib

を比較した、一群250例を超える規模のランダム化比較試験です。


プライマリーエンドポイントは、無増悪期間および全生存期間です。

エンドポイントを二つ設定したために、通常5%に設定されるタイプIエラー

を無増悪期間に1%、全生存期間に4%と予め振り分けています。

つまりそれぞれのエンドポイントでp値がそれぞれ1%もしくは

4%を下回った場合に、統計学的に有意であると設定したという事です。


結果は、 無増悪期間の中央値(95% CI)は、 iniparibなしで4.1月(3.1, 4.6)

に対してiniparibありでは5.1月 (4.2, 5.8)、ハザード比 (95% CI)は0.79

(0.65, 0.98)、p-value 0.027でした。

これは予め設定した0.01を下回っていないので、有意とは見なされません。

全生存期間は、iniparibなしで11.1月(9.2, 12.1)、iniparibありでは11.8月

(10.6, 12.9)、ハザード比 0.88 (0.69, 1.12)、p=0.28と、こちらも

有意ではありませんでした。

全生存期間は明らかにネガティブですが、無増悪期間のp=0.027というのは

通常の試験デザインであればポジティブと見なされる値です。

ただ、試験のデザインが上のようだったため、有意でないとされます。


さて、この結果は統計学的な検討どおり、全くのネガティブと受け止めるべき

でしょうか。

それともネガティブでないとしたらどのように捉えれば良いのでしょうか。
# by aiharatomohiko | 2011-08-28 22:08 | 学会

Iniparibのミステリー-ASCO2011-


ランダム化第II相試験で全生存期間の改善が報告されたため、ラッシュ

で第III相試験が行われたIniparibでしたが、販売元のサノフィから

今年1月27日付で主要エンドポイントが達成できなかったとのプレス

リリースがありました。

詳細な結果がASCOで発表されたのですが、本論に入る前に驚いたこと

を一つ。そもそもiniparibはPARP1阻害薬として開発されていたはず

ですが、この発表のイントロで“Iniparib は、TNBC細胞株の細胞周期

におけるG2/M停止を誘導する。二本鎖DNA損傷のγ–H2AX

(ヒストンの一種)フォーカスを誘導する(二本鎖切断を誘導するという

事か?)ものの、生理的な濃度ではPARP 1/2の阻害をしない

(よほど高濃度にしないと阻害作用が無いという意味か)。

Iniparibおよびその代謝物の生理的な標的分子は研究中

(ということは、現時点で不明))


このスライドを見た瞬間にひっくり返りそうになった人は少なくない

のでは。IniparibにPARP1阻害効果がなく、作用機序が不明という

のです。

これじゃあ、標的治療でもなんでもないし、そもそもTNBCに的を

絞ったことの意味が薄くなります。抗腫瘍効果はあるようなので、

BRCA遺伝子の変異や蛋白の発現などと関係なく使えるのかも

しれませんが。。。

さらには、わざわざ標準治療で無いゲムシタビンとカルボプラチン

というレジメに併用した意味も不明になります。


この臨床試験がネガティブとかポジティブとかの前に、この薬剤を

使う前提があっさり否定されていたので、個人的にはとても驚き

ました。現地での反応はどうだったのでしょうか?


日経メディカルを含めいくつかのHPでは、いまだにPARP阻害薬と

書いてあるので、私が読み間違っているのでしょうか?

ご存知の方はコメントを頂ければ幸いです。


ちなみに発表のスライドには以下のように記載されています。

BSI-201(iniparib) 

A novel, investigational, anti-cancer agent in TNBC cell lines1–4

induces cell cycle arrest in the G2/M phase

induces double strand DNA damage γ–H2AX foci but

does not inhibit PARP 1 and 2 at physiologic drug concentrations


potentiates cell-cycle arrest induced by DNA damaging

agents, including platinum and gemcitabine

physiologic targets of iniparib and its metabolites are

under investigation

# by aiharatomohiko | 2011-08-14 11:07 | 学会

”標準治療”について-毎日新聞「ご近所のお医者さん」から-

8/2付けの毎日新聞の「ご近所のお医者さん」というコーナーに”標準治療”

について書いた文章が掲載されたので、最近の記事とかぶりますが、

ブログに転載します。


皆さんは「標準治療」という言葉をご存知でしょうか。まだ、あまり耳慣れ

ない言葉かもしれません。私は乳腺専門医として、専門看護師や薬剤師

とともに、乳がん検診から手術、抗がん剤治療、内分泌治療、緩和医療

まで幅広く乳がん診療に携わっています。

今回は、最善の乳がん治療を選択する際に重要な、「標準治療」について

お伝えしたいと思います。


「標準」治療というと「並」な治療法であり、どこか特別な病院に行くと「上」

の治療法が出てくるのではないか、と考えられがちなのではないでしょうか。

しかしながら、現実は違います。過去にあまたある治療法と戦って勝ち抜い

てきた、いわゆる現役のチャンピオンとして君臨している治療法、それが

「標準治療」なのです。つまり、「標準治療」よりも上はありません。


最近、「先端医療」という耳当たりの良い言葉が取り上げられることが多く、

何か画期的な治療法が出てきたのかと惑わされる方が多いのではないか

と危惧します。

実際には「先端医療」といわれるものの中には、「実験的な医療」と大差

ないものも多いのです。「ひよっこ」段階の治療法と言い換えても良い

でしょう。タイトルマッチを挑んだ結果、「標準治療」に敗れ去り消えていく

ものもありますので、あまり大きな期待をかけすぎるのは考え物です。


また、どこかに誰も知らないようないいお薬がないかと考えてインターネット

をさ迷い歩いた揚句に、効果がない高価な「不」健康食品に引っかかる

ことがあってはいけません。

もし、そんないいお薬があるのならば、製薬会社が厚生労働省の認可

をとった後に販売すれば、全世界で何千億円という売り上げになるでしょう。

それをしないでチマチマ売っているような物は、効果が期待できないと

考えるのが理性的です。


「標準治療」こそが王道であり、信頼のおける担当医と相談しながら治療法

を選択していく事が最善の医療につながるということを、是非知っておいて下さい。
# by aiharatomohiko | 2011-08-06 22:15 | 日常

免疫療法は効果がありますか?


免疫療法についても、健康食品と同じようなことがいえます。

それは、患者さんを免疫療法をした人たちとしていない人たちとに

ランダムに分けて、免疫療法をした人たちの再発が少なかったり

死亡がすくなかったりした、というデータが有ればその免疫療法は

有効でしょうし、データが無ければ有効だと言う根拠が無いと言う

ことです。

効いた効いたという宣伝は多いですが、そもそも効いたというのは

どういうことかと考えなければなりません。

副作用が少ないとか、体に優しいとかの訳のわからない宣伝文句に

引っかからないようにしましょう。
# by aiharatomohiko | 2011-07-30 13:20 | 日常

健康食品は摂っても良いですか?


乳がん患者さんは、健康食品を周りの人から勧められることが多いようです。

健康食品を勧める人は大きく分けて次の二通りです。患者さん本人のことを

気にかけて勧める人と商売をしようと思って勧める人です。

どちらなのかを患者さんが見分けることは難しいようです。

また、健康食品を使用したくない患者さんにとっては、どちらも迷惑

なことに変わりはないようです。


健康食品を、私はお勧めはしません。なぜならば、健康食品の中でもキノコ

の一種には劇症肝炎を起こして死亡した例が報告されているからです。

もう一つの理由として、乳がんの再発抑制や生存期間延長に効果が証明

された健康食品はないという事実もあります。

この場合の証明というのは、患者さんを二群に分けて、片方には健康食品を

使用してもらい、もう片方には健康食品を使用しないでもらう。そうした上

で健康食品を使用した方で再発が少なかったり生存期間が延長したりという

データがあるという事を指します。

そういえば、サメ軟骨や別の健康食品でデータが捏造されていたり、

事例をでっち上げて本にしていたこともありました。

もしある健康食品にがんを治す効果があるのならば、製薬会社が売り出

せば全世界で何千億円の売り上げが上がるのに、なぜそうなっていない

のでしょうか。

なぜちまちまと厚生労働省の認可をとらずに販売しているのでしょうか。


さらには、抗がん剤治療や内分泌治療をしている時に健康食品を摂った

場合、健康食品が原因で例えば肝障害を来たしても、乳がんの治療薬が

原因なのか健康食品が原因なのかが判別できないので、どちらも止め

なければなりません。

効果があるかないかがわからない健康食品のために、治療薬までやめ

なければならないかの可能性も考える必要がありそうです。

そういった不利益がある可能性を考えて、それでもなお使いたいので

あれば無理に止めることは難しいとも思いますが。

どうしても断りにくい筋から勧められている場合には、医者から止められ

ている、と言われたらどうでしょうか、とお話しています。
# by aiharatomohiko | 2011-07-25 22:39 | 日常

これは標準治療でしょうか

標準治療という言葉、一般の方はあまりご存じないかもしれません。

確立された治療法で、現時点で最高の治療法のことです。

私が自分で乳腺科を始める時に、”きちんとした治療法を行います!”

と宣言するつもりで”「標準治療」をお約束します”とHPに書きました。

一般の方ならば、専門医であれば誰でも標準治療ができるんじゃないの?

と考えるかもしれません。

が、世の中本当にそうなっているのでしょうか?

きちんとした教育が出来ない教師がいたり、まともな政治ができない

政治家がいるような状況を考えると、専門医でも標準治療が出来ない人

がいるんじゃないの?と考える方が健全なような気がします。

まあ、そういった医師と違いますよ、という意味で”「標準治療」

をお約束します”と書いた訳ですが、たまたまあるクリニックのHPを

みて愕然としました。そこは手術件数は多いものの標準とはかけ離れた

治療をするのではないかと目されている所でしたが、

”ガイドラインに則った治療をしています”と明記してあったのです。

言ったもん勝ちかいな。。。

これにめげずに頑張ります。


さて、ここから本題。以下は標準治療でしょうか。

①手術待ちが長く、その間何もしないのは気兼ねするので、とりあえず

タモキシフェンなどを処方する

②副作用が出ると気の毒なので、抗がん剤は少量(微量)使う

③手術が終わって退院までに時間があるので、抗がん剤を少量点滴して

から帰ってもらう

④腫瘍径1cm少しの患者さんに、命が危ないから術前化学療法をしないと

大変な事になると恫喝する


恫喝は治療じゃないですね。また、珍しい治療を目にしたら、アップするかも

しれません。
# by aiharatomohiko | 2011-07-15 23:04 | 日常