excitemusic

乳がんの最新情報を紹介しています
by aiharatomohiko
ICELANDia
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
カテゴリ
以前の記事
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


<   2011年 08月 ( 3 )   > この月の画像一覧

Iniparibの試験結果 ASCO2011


さて、本題に入ります。


本試験は、いわゆるトリプルネガティブの転移乳癌に対して

ゲムシタビン+カルボプラチンとゲムシタビン+カルボプラチン+iniparib

を比較した、一群250例を超える規模のランダム化比較試験です。


プライマリーエンドポイントは、無増悪期間および全生存期間です。

エンドポイントを二つ設定したために、通常5%に設定されるタイプIエラー

を無増悪期間に1%、全生存期間に4%と予め振り分けています。

つまりそれぞれのエンドポイントでp値がそれぞれ1%もしくは

4%を下回った場合に、統計学的に有意であると設定したという事です。


結果は、 無増悪期間の中央値(95% CI)は、 iniparibなしで4.1月(3.1, 4.6)

に対してiniparibありでは5.1月 (4.2, 5.8)、ハザード比 (95% CI)は0.79

(0.65, 0.98)、p-value 0.027でした。

これは予め設定した0.01を下回っていないので、有意とは見なされません。

全生存期間は、iniparibなしで11.1月(9.2, 12.1)、iniparibありでは11.8月

(10.6, 12.9)、ハザード比 0.88 (0.69, 1.12)、p=0.28と、こちらも

有意ではありませんでした。

全生存期間は明らかにネガティブですが、無増悪期間のp=0.027というのは

通常の試験デザインであればポジティブと見なされる値です。

ただ、試験のデザインが上のようだったため、有意でないとされます。


さて、この結果は統計学的な検討どおり、全くのネガティブと受け止めるべき

でしょうか。

それともネガティブでないとしたらどのように捉えれば良いのでしょうか。
by aiharatomohiko | 2011-08-28 22:08 | 学会

Iniparibのミステリー-ASCO2011-


ランダム化第II相試験で全生存期間の改善が報告されたため、ラッシュ

で第III相試験が行われたIniparibでしたが、販売元のサノフィから

今年1月27日付で主要エンドポイントが達成できなかったとのプレス

リリースがありました。

詳細な結果がASCOで発表されたのですが、本論に入る前に驚いたこと

を一つ。そもそもiniparibはPARP1阻害薬として開発されていたはず

ですが、この発表のイントロで“Iniparib は、TNBC細胞株の細胞周期

におけるG2/M停止を誘導する。二本鎖DNA損傷のγ–H2AX

(ヒストンの一種)フォーカスを誘導する(二本鎖切断を誘導するという

事か?)ものの、生理的な濃度ではPARP 1/2の阻害をしない

(よほど高濃度にしないと阻害作用が無いという意味か)。

Iniparibおよびその代謝物の生理的な標的分子は研究中

(ということは、現時点で不明))


このスライドを見た瞬間にひっくり返りそうになった人は少なくない

のでは。IniparibにPARP1阻害効果がなく、作用機序が不明という

のです。

これじゃあ、標的治療でもなんでもないし、そもそもTNBCに的を

絞ったことの意味が薄くなります。抗腫瘍効果はあるようなので、

BRCA遺伝子の変異や蛋白の発現などと関係なく使えるのかも

しれませんが。。。

さらには、わざわざ標準治療で無いゲムシタビンとカルボプラチン

というレジメに併用した意味も不明になります。


この臨床試験がネガティブとかポジティブとかの前に、この薬剤を

使う前提があっさり否定されていたので、個人的にはとても驚き

ました。現地での反応はどうだったのでしょうか?


日経メディカルを含めいくつかのHPでは、いまだにPARP阻害薬と

書いてあるので、私が読み間違っているのでしょうか?

ご存知の方はコメントを頂ければ幸いです。


ちなみに発表のスライドには以下のように記載されています。

BSI-201(iniparib) 

A novel, investigational, anti-cancer agent in TNBC cell lines1–4

induces cell cycle arrest in the G2/M phase

induces double strand DNA damage γ–H2AX foci but

does not inhibit PARP 1 and 2 at physiologic drug concentrations


potentiates cell-cycle arrest induced by DNA damaging

agents, including platinum and gemcitabine

physiologic targets of iniparib and its metabolites are

under investigation

by aiharatomohiko | 2011-08-14 11:07 | 学会

”標準治療”について-毎日新聞「ご近所のお医者さん」から-

8/2付けの毎日新聞の「ご近所のお医者さん」というコーナーに”標準治療”

について書いた文章が掲載されたので、最近の記事とかぶりますが、

ブログに転載します。


皆さんは「標準治療」という言葉をご存知でしょうか。まだ、あまり耳慣れ

ない言葉かもしれません。私は乳腺専門医として、専門看護師や薬剤師

とともに、乳がん検診から手術、抗がん剤治療、内分泌治療、緩和医療

まで幅広く乳がん診療に携わっています。

今回は、最善の乳がん治療を選択する際に重要な、「標準治療」について

お伝えしたいと思います。


「標準」治療というと「並」な治療法であり、どこか特別な病院に行くと「上」

の治療法が出てくるのではないか、と考えられがちなのではないでしょうか。

しかしながら、現実は違います。過去にあまたある治療法と戦って勝ち抜い

てきた、いわゆる現役のチャンピオンとして君臨している治療法、それが

「標準治療」なのです。つまり、「標準治療」よりも上はありません。


最近、「先端医療」という耳当たりの良い言葉が取り上げられることが多く、

何か画期的な治療法が出てきたのかと惑わされる方が多いのではないか

と危惧します。

実際には「先端医療」といわれるものの中には、「実験的な医療」と大差

ないものも多いのです。「ひよっこ」段階の治療法と言い換えても良い

でしょう。タイトルマッチを挑んだ結果、「標準治療」に敗れ去り消えていく

ものもありますので、あまり大きな期待をかけすぎるのは考え物です。


また、どこかに誰も知らないようないいお薬がないかと考えてインターネット

をさ迷い歩いた揚句に、効果がない高価な「不」健康食品に引っかかる

ことがあってはいけません。

もし、そんないいお薬があるのならば、製薬会社が厚生労働省の認可

をとった後に販売すれば、全世界で何千億円という売り上げになるでしょう。

それをしないでチマチマ売っているような物は、効果が期待できないと

考えるのが理性的です。


「標準治療」こそが王道であり、信頼のおける担当医と相談しながら治療法

を選択していく事が最善の医療につながるということを、是非知っておいて下さい。
by aiharatomohiko | 2011-08-06 22:15 | 日常