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by aiharatomohiko
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pCRを目的として術前化学療法を行うことは適切か?その3


もう一つ根本的な問題点として、pCR率をどの程度改善すれば、

どれくらい生存率が改善されるのかがわかっていない事も、

pCRをエンドポイントとして臨床試験をする上での大きな障害

なのだと思います。

つまり、“この新規レジメはpCR率が50%なので、優れています。”

といっても、この新規レジメが例えばACよりも生存率のハザード比が

何%良いのか、皆目見当がつかないわけです。

(誰か知っている人がいれば、メール下さい。)

B27の論文のdiscussionには、“Extrapolating from the B-18 survival

curves, doubling of the pCR rate from 13% to 26% could be

predicted to increase the number of surviving patients by

approximately 2%.“という文が根拠の提示なしにのっていますが、

これが本当であれば、5%の改善を示すには、30%くらいのpCR率の

上乗せが必要になりそうです(だいたい)。

もしこれが本当なら、ハーセプチンクラスの薬剤が必要ですね。


つまり、pCRは代用エンドポイントとして不十分であり、

pCRをエンドポイントとして、新しい有効なレジメを見つけるために

臨床試験をするのは臨床的な有用性が低い、

という結論になります。


反対に、たいしてpCR率が改善されないのであれば、そのレジメは

生存率をほとんど改善しないので捨てるべきだ、という風には

使えるかもしれませんが。

ただ、pCR率が標準レジメと同じでも生存率を

改善するような新規レジメがある可能性も否定できません。

そう考えると、ますますpCRをエンドポイントとして臨床試験を

することに意義を見出すのは難しく思えます。


もちろん、迅速に有用な新規レジメを見つけることができるに

越したことはありません。

しかしながら、現時点では、臨床的に意味のあるレジメを開発するためには、

適切な対象を設定して、新規レジメがどの程度無再発生存率や

全生存率を改善するかをランダム化試験で検討するという、

従来からの手法が最善といえるのではないでしょうか。

これに、効果予測因子を探索する系を乗っけることができれば、

なお良いですが。

従来からの方法でも症例数を増やしてパワーを上げる事で、

結果が出るまでの期間を短くすることはできます。

これはこれで倫理的な問題点が全く無いとはいえないのですが、

その点については、また。
by aiharatomohiko | 2008-11-19 23:45 | 医療

pCRを目的として術前化学療法を行うことは適切か?その2


新規レジメを開発する際に、pCR率をエンドポイント(主要評価項目)

としてよく臨床試験が行われます(いました?)。

私もそういった臨床試験に参加していた時期はあります。

しかしながら、pCRをエンドポイントとして臨床試験を行うことは、

本当に意義があることなのでしょうか?

NSABP B27試験の結果から考えてみたいと思います。


この試験は、術前化学療法として、ACとAC-DTXを比較した試験です。

(ややこしいので、もう1アームのAC-手術―DTXについては

ここでは触れません。)

pCR率は、AC単独の13%からACにDTXを追加することにより

26%となりました。相対値で100%、絶対値でも13%という著しい

改善です。

それに対して無再発生存率はわずかに相対値で10%、絶対値では3%

という改善にとどまりました。

さらには、全生存率は相対値で3%、絶対値では0%の改善です。

この試験においては、pCR率が改善するほどには、生存率が改善しなかった

ということが言えます。

pCRにこだわる意味があまり無いことを示した臨床試験の結果だったと

思います。
by aiharatomohiko | 2008-11-16 23:48 | 医療