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by aiharatomohiko
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<   2008年 10月 ( 5 )   > この月の画像一覧

pCRを目的として術前化学療法を行うことは適切か?その1


術前に化学療法を行うことによる予後の改善はみられなかったのですが、

病理学的完全寛解(pCR)が予後予測因子、また生体内抗がん剤感受性

試験として非常に興味深い現象であることがわかり、臨床面のみならず

研究面でも注目されています。

その様な中で、pCRが患者さんにとってどのような臨床的意義を持つのか、

考えてみました。


まず、pCRになった場合には、ならなかった場合と比較して、どのくらい

予後が良いのかを確認してみました。

B18試験の結果からは、乳房のがんがpCRになった場合、5年無再発

生存率は85.7%でした。10年無再発生存率はもう少し下がることを考えると、

術前化学療法でpCRになった場合でも、患者さんに“pCRになったので、

乳がんが治りますよ。“と言えるほどのインパクトのある数字とはいえない

のがわかります。

えっ?pCRになったので治るって説明されている?うーん。。。。

85%治ります、といわれても高いのか低いのか、何ともいえないでしょうね。


一方、pCRにならなかった場合の5年無再発生存率は76.9%。

差があると言っても絶対値では10%切る位ですので、pCRにならなかった

と言って悲観するほどでもありません。

pCRの予後予測因子としてのパワーは、過大評価されていると

個人的には考えます。

そのため、pCRが得られるかどうかを観察することのみを目的として、

術前化学療法を行う意義は小さく、患者さんにとってメリットは無い

と考えます。


それでは、pCRを目的として臨床試験を行うことは、意義があること

なんでしょうか?
by aiharatomohiko | 2008-10-29 20:53 | 医療

術前化学療法は患者さんの役に立っているのか?番外


今日研究会に行ってきました。思いがけず術前化学療法の話題になって

いましたが、気になったのは、”術前化学療法だから、pCRをねらって

うんぬん”という様な言葉が聞かれたことです。

現状pCRになろうがなるまいが、だからなんなんっていう意味しかないはず

なのですが、今回は次回以降の前フリとします。
by aiharatomohiko | 2008-10-18 22:52 | 医療

術前化学療法は患者さんの役に立っているのか?その4


術前化学療法の問題点として、術前組織診の限られた標本でしか

原発巣の病理学的な検討を行えないこと、もともとのリンパ節転移の

状況が正確には把握できないこと、腫瘍が縮小し非触知となった場合には

乳腺部分切除の際に切除範囲を決定しにくいこと、などが挙げられます。


特に、腋窩リンパ節転移の状況(=転移再発のリスク判断)が分からずに、

レジメを決めなければならないのが、第一の問題と考えます。

一時は術前化学療法といえば、ステージに関わらずアンスラサイクリン

+タキサンを使用したり、標準治療とかけ離れたレジメが使用されることが

ありました。私も当時はそれが妥当と思っていましたので、以前はその様な

臨床試験に参加したことがあります。

しかし、術後に行う化学療法を術前に行っても生存率は同じ、という所から

始まった治療なのに、術後治療として使用しないようなレジメが術前化学療法

に使用されることは本来ありえないはず、と現在では考えるに至りました。

具体的に言えば、腋窩リンパ節転移が無い場合には、タキサンの追加効果

が絶対値で見ると低いため術後療法では頻用しないのに、術前化学療法だと

腋窩リンパ節転移の状況に関係なく使用されるのはなぜか?

過剰治療なのではないか、ということです。


この点をよく理解している施設では、いち早くセンチネルリンパ節生検を行って

から治療方針を決定するようになりました。

腋窩リンパ節転移がある場合には、アンスラサイクリン+タキサンを術前に

行っても良いという判断がこれでできる事になります。

手間を惜しまなければ、大変スマートなやり方だと思います。


もう一つは、乳房切除後の放射線治療の適応についてです。

乳房切除した場合でも、リンパ節転移が4個以上の場合には術後放射線

治療を行うことが標準となっています。

しかし、術前化学療法により手術時に腋窩リンパ節転移の個数が減少する

可能性があるので、もともとの転移個数がわからなくなり、適切に放射線

治療の適応を決定することが困難になるのではないかという懸念も、

問題点の一つであると考えます。
by aiharatomohiko | 2008-10-15 23:20 | 医療

術前化学療法は患者さんの役に立っているのか?その3


結論としては、患者さんに対する術前化学療法の実質的なメリットは、

術前化学療法を行うことにより、乳房温存率が上昇するということ、

これだけなのではないでしょうか。


ということは、当初より乳房温存療法が可能であるような場合には、

術前化学療法が術後化学療法に比べて優れている点はほとんどないの

ではないでしょうか。もちろん、劣っているともいえませんが。

術前化学療法で3cmの腫瘍が2cmになった場合には、より切除範囲が

小さくなり、質の高い温存手術ができるという考え方はあります。

ただ、質の高い温存手術と言うのは、切除範囲もさることながら腫瘍の

できる部位に左右されるところが大きいので、3cm前後の腫瘍に積極的に

術前化学療法を勧めるのが良いかどうかは難しいところです。


また、術前化学療法を行っても、温存手術が可能にならないような場合も、

あまり良い適応では無いと考えます。例えば、乳頭乳輪直下に腫瘍が広く

およぶ場合です。また、石灰化が広範囲に広がっているタイプの乳がんは、

乳管内進展部分が化学療法で消えないことが懸念されます。

余談になりますが、先日乳癌学会でお会いした先生によれば、

HER2陽性乳がんに対してHerceptinとFE75C→Taxaneを併用した

場合には、石灰化のある範囲もがん細胞が消えている場合が結構ある

との事でした。


ただ、この場合も石灰化のある範囲は手術で切除されるというお話で

あったので、やはり広がりがあまりに大きい場合には美容的な事を

考えると難しいのかもしれません。


それでは、術前化学療法の問題点とは何でしょうか。
by aiharatomohiko | 2008-10-14 23:33 | 医療

術前化学療法は患者さんの役に立っているのか?その2


重要な知見とは、病理学的完全寛解(pCR:本試験では乳房の浸潤がん

部分が消えることで、非浸潤がんの残存を含む。また、この試験では

腋窩リンパ節の転移状況は勘案されない。)が13%にみられ、浸潤がんが

残存した症例よりも予後が良いこと(5年無再発生存率:85.7%, vs 76.9%)、

術前化学療法により腋窩リンパ節転移が相対値で28%減少すること

(術前化学療法41%vs 術後化学療法57%)、乳房温存率が改善される

(術前67% vs 術後60%、5cm以上の乳がんに限れば22% vs 8%)

ことです。


つまり、化学療法は術前に行っても術後に行っても生存率はかわらないが、

術前化学療法で浸潤がんが消えた場合には、消えなかった場合よりも

予後が良い事がわかりました。

これをもって患者さんに対する術前化学療法のメリットという医師もいる

けれども、“浸潤がんが消えたので、5年無再発生存率が85.7%です。

良かったですね。”といわれても、15%再発の危険性があるわけで、

完全に治ったといえるほどの数値ではないため、ビミョーですね。

本試験では5年以降にも再発が見られますし。

病理学的完全寛解になった場合に予後が良くなることを強調しすぎると、

むしろ再発した場合にショックが大きくなるだけ、メンタルヘルスにとって

マイナスなのではないかと考えます。なので、個人的にはこの点をあまり

強調して患者さんにお伝えしないようにしています。

一方、MD アンダーソンのデータでは、腋窩リンパ節転移陽性の患者さん

を対象とした術前化学療法の臨床試験で、術前化学療法でリンパ節転移

が消えれば、5年以降の再発はほとんど無いと言う事が示されていますので、

腋窩リンパ節転移の病理学的完全寛解を目安にすれば、5年無事経過した

患者さんに今後の予後が良好であると説明することができそうな気がします。

他の試験で同様なデータがあれば、教えて下さい。


腋窩リンパ節転移の28%が消えることは、もし術前化学療法後に正確に

センチネルリンパ節生検ができるのであれば、腋窩郭清を省略できるので

患者さんのメリットになります。しかしながら、腋窩リンパ節転移があって

術前化学療法を行った場合に、どの程度センチネルリンパ節生検が正確

なのかはまだまだ分かっていないと思います。

どのみち腋窩郭清を行うのであれば、これはメリットとはいえないです。


それじゃあ、術前化学療法の患者さんに対するメリットって、なんなの

でしょうか。
by aiharatomohiko | 2008-10-04 22:10 | 医療