SABCS2013 ER(ESR1)の遺伝子変異 |
S3-06 ERの遺伝子変異について 乳がん原発巣におけるER遺伝子の変異は0.4%と2012年のTCGAで報告されている。この研究では、249腫瘍におけるERの遺伝子変異を検討したが、その内ER陽性の37症例の原発巣と転移巣での遺伝子変異の比較を行った。ESR1遺伝子の変異は原発巣ではわずか2%だったが、早期の転移巣では12%に、晩期の転移巣では20%にも上った。TP53、PIK3CA、PTENなど18の遺伝子変異も同時に調べられたが、これらはERの遺伝子変異と異なり原発巣と転移巣の間で遺伝子変異の割合に著明な違いを認めなかった。ERの変異はLBDのhelix12に集積していた。これらのER変異は以下の検討からfunctional mutationと結論付けられた。まず、内因性のER依存性に発現する遺伝子の転写がE2の非存在下でもE2存在下と同程度になされていた。変異ERは、E2の除去、タモキシフェンやフルベストラントに対し比較的耐性であった。また、変異ERはフルベストラントによるERの分解に抵抗性であり、E2非存在下でもE2存在下と同様にco-activatorとの結合が見られ、タモキシフェンを加えても変化がなかった。 短評:ERの遺伝子変異はかなり以前に報告されていたが、その意義は不明であった。2012年のTCGAの報告では原発巣の変異はほぼゼロであったが、2013年にこの発表を含む一連の研究により転移巣の約15~20%で変異が見られることが報告された。以上の事から、ERの遺伝子変異は転移を来たした後内分泌治療を行っている間に獲得される事、これが内分泌治療抵抗性の一因となっていることが示された。ER遺伝子変異が内分泌治療中に発生するのか、そもそも原発巣にごくわずかにあったクローンが選択されるのかは明らかでない。また、変異ER依存性に細胞が増殖しているとも考えられるため、下流のシグナルを抑えることにより抗腫瘍効果が得られることが期待される。 |
by aiharatomohiko
| 2013-12-23 10:11
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