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by aiharatomohiko
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サブタイプ分類の現実


物事はその定義がはっきりしてこそ、議論する価値があります。

反対に、定義がはっきりしていないことを議論することは、

時間の浪費以外の何者でもありません。

今はやりのサブタイプ別に患者さんを個別化して治療方針を

考えることが、まさに後者に当てはまります。

個別化医療は、どこまでできるかはさて置いて、それ自体は重要な

概念であることは言うまでもありません。

しかしながら、サブタイプの分類法が確立ないしは統一されていない

のにも関わらず、サブタイプ別に治療方針をどうするか、

たとえばルミナルAとBで治療方針をどう変えるか、という議論を

することに、根本的な問題があることが分かります。


サブタイプ分類法には、遺伝子発現プロファイルや免疫染色法が

あります。遺伝子発現プロファイルという手法に限って考えても、

異なる方法が何種類か存在します。

これらは、果たして同じものを見ているといえるのでしょうか?


この問題を検討した論文が、Britta Weigeltらの、Breast cancer

molecular profiling with single sample predictors:

a retrospective analysis. Lancet Oncol 2010; 11: 339–49です。



この論文は、異なる3つのデータベースにおける個別の乳がん

患者さんが、3種類の異なる遺伝子発現プロファイルによって、

どのサブタイプに分類されるかを検討したものです。

使用したマイクロアレイは、Sorlie、Hu、Parkerの手法です。


予後とサブタイプの相関という観点では、いずれのマイクロアレイを

いずれのデータセットを用いて検討しても、luminalAが最も予後が

良好で、それ以外は予後が劣るという傾向が観察されており、

マスで見ると乳がんをサブタイプに分類することには一定の意義がある

ように思えます。


しかしながら、個別化医療=個々の患者さんがどのサブタイプに分類

されるか、という観点では、図表をみれば一目瞭然のように、

basal type以外は、liminalA、luminalBは言うまでも無く、HER2

タイプですら用いるマイクロアレイによって個々の患者さんの分類が

一致しないことが分かります。


つまり、個別の患者さんがどのサブタイプに分類されるのかが使用する

マイクロアレイによって異なるため、どの方法を用いたのかという前提

を省いてサブタイプ分類による個別化医療を議論することには意味が無い

ということが明確に示されたわけです。

f0123083_2350613.jpg



いずれのマイクロアレイを用いても個々の乳がん患者さんにおいて

basal typeの判定がほぼ一致していることは、興味深いことです。


もちろん、basalもさらに何種類かに分類することができるかも

しれません。しかし、basal typeという分類に再現性が見られることは、

このサブタイプに関しては特別な治療方針・治療法を議論・開発する

ことに、臨床的な意味がある可能性を示唆しています。

実際、このサブタイプをターゲットとして、PARP阻害薬の開発が

進んでいますし。


その一方で、繰り返しになりますがbasal type以外のサブタイプの

腫瘍の性質や治療方針を議論することは、分類の方法論が統一されない

限りにおいては、雲をつかむような話に思えます。
by aiharatomohiko | 2010-10-15 23:45 | 論文
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