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乳がんの最新情報を紹介しています
by aiharatomohiko
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N-SAS BC03が論文になりました


サンアントニオで結果の発表はしていたのですが、やっとN-SAS

BC03が論文になりました。Breast Cancer Res Treat. 2010 Jun;121(2):379-87.

研究の概要を以下に書きます。


海外で行われた複数の臨床試験の結果から、閉経後乳がんの術後療法

として、それまでの標準治療であったタモキシフェン単独投与と比較

してタモキシフェンからアロマターゼ阻害薬への切り換えが、

無病生存期間と無再発生存期間の両方またはいずれか一方を改善する

ことが報告されてきました。


安全性については、アロマターゼ阻害薬による治療は、タモキシフェン

に比べて子宮体がんを含む子宮内膜イベントや静脈血栓症の発現頻度が

少ない一方、関節痛や骨粗鬆症・骨折の発現が多いとされています。

欧米人と日本人では薬物代謝酵素の遺伝子多型が異なるため、その有効性

と副作用が異なる可能性が指摘されています。

しかしながら、我が国を含むアジア人において同種の大規模比較試験が

実施されたことはなく、日本人乳がん患者に対するアロマターゼ阻害薬

の効果と安全性について検討するために唯一行われていたのが、

本研究です。


 手術後再発予防の治療として、1-4年間タモキシフェンが投与

されたホルモン感受性閉経後乳がん患者を対象とし、

そのままタモキシフェンを継続する群とアロマターゼ阻害薬

(アナストロゾール)に切り換えて術後5年まで治療する群に

ランダムに割り付けされました。

2002年11月から2005年12月までの間に706名の国内の乳がん患者

さんの協力が得られ、71医療施設から登録がなされました。

うち割付治療が開始された696名を解析対象としました。


追跡期間42ヶ月(中央値)の解析結果で、無病生存期間(主要評価

項目)のハザード比は0.69(95%CI 0.42-1.14; p=0.14)、

無再発生存期間(副次的評価項目)のハザード比は0.54

(95%CI 0.29-1.02; p=0.06)と、アナストロゾールに切り換えた群が

再発を30%ほど減らすことが示唆され、日本人においてもアロマターゼ

阻害薬の有用性が確認されました。 


安全性については、欧米人と同様にホットフラッシュ(ほてり)

および膣分泌物の発現頻度はタモキシフェン群で、関節痛の頻度は

アナストロゾール群で統計学的に有意に高くみられました。

その一方欧米人での結果と異なり、アロマターゼ阻害薬の重篤な

副作用である骨折と、タモキシフェンの重篤な副作用である血栓症は、

日本人ではどちらの群でも同等と考えられました。

その理由は、おそらく日本人でもともと骨折や血栓症のベースライン

リスクが低いためであると考えられます。

欧米のデータのみを参考にして“タモキシフェンは血栓症のリスクが

上がるから、危険だ!”式の議論をするのではなく、日本人のデータも

きちんととることが重要である事がわかります。

一方、アロマターゼ阻害薬で心配される骨への影響が日本人では低い

可能性が示唆されました。これは鹿児島の相良病院からも同様な結果の

発表があるのですが、BC04の研究からアロマターゼ阻害薬の服用は、

タモキシフェンと比較して骨代謝や骨密度の面からは不利である事が

わかっているので(論文投稿中)、過度な安心は危険かもしれません。


最後になりましたが、この場をお借りして研究にご協力頂いた乳がん

患者の皆様と医療施設の皆様に御礼申し上げます。
by aiharatomohiko | 2010-09-20 22:07 | 論文
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